ポケットから召喚!私のモンスター!!   作:森茶民 解夏禾 フドロジェクト 山岸

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不思議なカード

 

 

 

「ヒトカゲ……?」

 

 本屋のバイトで、商品棚を整理している時に見付けた何かのキャラクターが描かれたカード。

 その赤い表紙には、二本足で立っている橙色の蜥蜴が火の玉を吐いている可愛らしい絵が描かれていて、そのカードの上下に〈HP〉だとか〈弱点〉だとかの数字が刻まれており、何かしらのカードゲームである事を伺わせた。

 落し物かと店長を呼べば、最近よく置かれるようになった物らしく、「自著本を勝手に置いてく亜種みたいなもんだよ、きっとね」と笑って言い、「どうせ死蔵する事に成っちゃうんだし、タツアキ君にあげるよ、その方がきっと、作った人も本望だろうし」と続けて、そうして実際に死蔵されていたらしい同じ様な絵柄の何枚かのカードを貰ってしまった……

 

 

「あの!すみません」

 

 そんな三日前の出来事を、目の前の光景により思い出す。

 目の前には、遠慮がちな様子のスーツ姿の女性がレジを挟んで立っていて、「忘れ物なんじゃないかなって……」と呟きながら差し出された指先を見れば、あの時と同じような絵柄で、水を掻き分けるような態勢の青い鴨みたいな河童みたいなキャラクターが描かれた〈ゴルダック〉と名打たれているカードが摘まれていた。

 

「あ……ぁありがとうございます」

 

 例の本屋から10駅以上離れたコンビニなのに……と少し不気味に思いながらも受け取り、カウンター下の落し小物(こもの)保管箱へ入れようとチラリと見遣れば、思わず固まってしまった。そこには、もう既に同じ様な絵柄のカードが、箱の底が見えないくらい乱雑に積み重なって入れられていたからだ。

 

「タツアキ先輩……?って、あ〜それ、量ヤバいですよね。いつの間にか精算機の所とかカバン置きの所とか、陳列棚の所とかに結構な頻度で置かれてて、何がしたいのかサッパリ分からんし、なんか気味悪いんですよね……」

 

 突然固まった僕を気に掛けてか、さっきまで棚の整理をしていたピンク髪の後輩、苺椛(マイロ)さんは、手に持っていたもう一枚を「絵は可愛いのになぁ」とぼやきながら、ヒョイとポニーテールを揺らしながら僕の至近に近付いた。

 彼女は、さっきと同じ様なカードを落し物箱に入れると、そのまま僕の横顔を見上げて、小さく微笑んだ。

 

「タツアキ先輩は、どんな理由で置かれてると思いますか?」

 

 マイロさんは、そのままの間合いでコチラに微笑(はにか)みながらそう問い掛けて来たから、「自著本の亜種とかなのかも」と店主の受け売りをして、業務に戻った。

 

 結局、退勤時刻の入夜頃までに落とし主は現れず、箱の6分の1程まで積み重なるくらい発見できてしまった。

 

 いくらなんでも変過ぎる……

 

 

 

 

 

「なんなんだろうなぁ……これ」

 

 家に帰ってからも検索してみたけれど、「ヒトカゲ」も「ゴルダック」もその他のカードの特徴的な名前も、どうにもこの絵柄や説明に合致した物が全然見つからなかった。

 やっぱり店長の言うようにアマチュアの作品なのかな。

 

「でも、なんだかなぁ……なんか、違和感って言うか、既視感って言うか………なんなんだろうなあ、これ」

 

 そうこうウンウン頭を捻くって痛めていれば、「コンコンコン」と自室の扉がノックされて「お兄ちゃん、ゴハン出来たって」そんな、くぐもっても尚可憐な我らが妹の声音が響いて来た。

 

 「ありがとう。チアキちゃん」

 

 扉を(ひら)きながらそう言えば、怜悧な宝石みたいに光る(まなこ)をやんわり緩めて、小さくコクリと頷いた千照(チアキ)ちゃんは、金に光っても見える銀髪を翻して先頭を歩き出した。

 僕はそれに付き従うようにまた歩き出して、今日の晩御飯は何かと問い掛ければ、「カボチャとカリフラワーのグラタンみたいだよ」と返して来る。

 そんな他愛も無い会話を連ねていれば、先の疑問も痛みも上の空と成り、漂って来たクリーミーな香りによって、完全に立ち消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

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巷を騒がせるとあるカードの謎

 

 

 今、世界にとある不可解な異変が起きてる事をご存知だろうか?

 

 コイツは何を言ってやがるんだ?と思うだろうが、まず、この写真を見て欲しい。

 

 

〼(ミミロップだとか、ガラガラだとか、ヤトウモリだとかと書かれた何某かのキャラクターが描かれた幾枚かの札束の画像)

 

 

 おそらく、見覚えが有る読者が大勢いると思う。

 

 どうにも最近、このカードを頻繁(ひんぱん)に見かけるようになったものだから、この大インターネット時代の現代にこんな古典的な売り出し方を──しかもカードゲームらしき物で──しようなんてどんな人がやっているのだろうか?と出歯亀精神が疼いて調査を開始してみたのだ。

 

 まず手始めにとインターネットで調べてみれば、出るわ出るわと!

 

 どうやら、この紙札は世界各地に現れているらしく、『Twetele』や『Faceshot』等のSNSで「落し物」「不審物」だとかで検索すれば、全世界的にチラホラと投稿が見られ、場合によっては、言語が違うだけで絵は全く同じカードが投稿されている事も有る始末。

 勿論こんなご時世なのだから、AIだとか写真加工だとかの可能性もまだ捨て切れないが……

 もしそうだとしても、全世界同時に同じような流行というのは、この時代を象徴する大きな出来事となるであろうから、今後の動向もつぶさに注視していきたい。

 

 

蛇沼(じゃぬま) 兎峰(うみね)

 

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「っと。ふぅ……よし、書けたぁ……」

 

 もう一度スマホを開いて「落し物」「不審物」「変なカード」などと、幾つかのメディア名と絡めて検索してみるが、まだコレについての記事が出ている様子は無い。

 

「ヨシ!たぶん一番乗り!これで()の一番に掲載せれてくれれば、ウハウハへの道がもう5歩ほど進むのは間違いなし!」

 

 傍らに置いておいた〈コダック〉と名打たれたカードをファイルに収めてから、凝り固まった肩を解すように腕を天井へと伸ばせば、小気味良い音が鳴り心地良い。そのまま椅子から崩れ落ちる様にカーペットの上に置かれたクッションへと顔を(うず)め、固まった脚を伸ばすかのようにフラフラさせながらテレビを付けてみれば、『最近話題の!』という巷で最近話題の事を紹介するニュースのコーナーが映し出された。

 見出しには〈新発見!?巨大生物!〉と表示されており、灰色の(たてがみ)を持つぶち模様の羊や黄土色の中型犬ほどの鼠の写真が写されていて、コメンテーターは「地球に存在する動物などは約90%が未発見、あるいは未分類である可能性があるという話もありますから……」などと喋っていた。

 

 新種の生物……少し調べてみれば、市街地にも出てるらしいし、さっき上げたカードの記事と何か良い感じに相乗して、インプレッションが増えてくれれば良いんだけど……

 

 そうぼやきつつ、目を瞑った。

 

 

 

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