ポケットから召喚!私のモンスター!! 作:森茶民 解夏禾 フドロジェクト 山岸
「おはようございます……」
いつものように、誰に言うでも無くそう呟いて、まだ
体を完全に起こす事によって、やっとこさ見えてくる本棚に隠れていた壁時計を見てみれば、いつも通り6時を指し示していた。
「ふぅ……」
目を数秒ほど瞑ってまた
「人形?……フィギュアか?」
壁に面して置かれた勉強机のその上に、見慣れない光沢を放つ紫色の
しかも、瞬きしてる。既に何度も……
あれには見覚えが有る。本屋の店主から貰った札束の中に似た絵柄のが有った筈だ。
滑らか過ぎるその表情に不穏な香りを感じずにはいられない……。よもや、夢ではあるまいか?
そうは言ってもどうしようも無いから、その軟体動物じみた体付きから推測し、これからどう動くべきかと反芻している内に何か夢みたいな推移をしてはくれないかと妄想してみる。
「ピピピピピピ!」
馬鹿げた事を考えていれば、全く想定外に背後のスマートフォンからアラームが鳴り、謎の生物と同じ様に自身も肩を跳ねさせる事となってしまった。
埒が明かないな?
億劫に思いつつも、普段と同じ様に服を纏いながらベッドから降りて、とりあえず部屋の外に出ようとその珍妙な生物を警戒しながら壁を背に扉へとソロソロと近付くが、その間も常に目と目が合い続けている……。
こういう時こそ平常心だ……!
その一挙手一投足を見逃さない為に手探りで扉の取っ手に手を伸ばせば、紫の軟体動物はプクプク鳴きながらコチラに飛び掛かって来たのだ!
まさかその軟体動物じみた体付きで跳ねるとは思っておらず、思わず振り払おうと腕を薙ぎ扇げば、その軟体を瞬間的に腕へと包み込むように絡ませて、眼前へと迫り登って来る!
反射的に体を退かせれば、体幹を崩して尻餅を搗いてしまい、反射で行った受け身によって、勢いそのまま扉へと蹴りを穿って轟音とともに開通させてしまった。
「やべぇ……」
扉の修繕方法、怪我の有無、足の引き抜き方、家族への説明、痛み、眼前の謎生物の謎、ていうか、こいつ湿ってね?あっよく見るとシャツに染みが……
様々な事が一気に脳内を駆け巡って、とりあえず目の前の事から対処しようと思考を切り替える。
……で、どうすんの?
その場でほんのりユラユラするくらいで特に何かするでも無く、眼前でプクプク鳴いているばかりな謎の紫軟体。心なしか、眼球らしき部位を細めてニコニコしている様にも見えて対処に迷う。
「大丈夫!?お兄ちゃん?」
音を聞き付けてか、妹のチアキちゃんが扉を開けて問いかけて来る。
しかし、その
どうしたの?それ?
またも脳内が疑問で満たされた。
「───臨時、放送局です。現在、複数の野生動物の出没に伴い、非常に危険な状況となっています。外出は絶対に避け、自宅や、建物内で、安全を確保してください。また、────」
遠くの方から、ガリガリとした質の悪い音声が小さく、また流れる。
もう何度目の文言だろうか?
付近の行政無線が轟音とともに途絶えてから、ついに2日が経った。周囲からは、時折何らかの炸裂音や擦過音に鳴き声、それらに紛れてて小さく響く行政無線の放送音が聞こえるばかり。
食料が、もうすぐ底をついてしまう。
ワンルームの中、テレビの殆どは砂嵐を垂れ流し、もはや唯一の他人とのコミュニケーションツールとなった小さな板には、
しかし、このリンゴを掠め盗り身に
……いや、心許なくないか?
この詳細不明のリンゴトカゲは、先の紹介のようにリンゴ程の大きさしかない。そして、外を現在進行系で荒廃させている怪物共は、多かれ少なかれ人の腰以上の大きさを持っている。
心許ないよ、これ
しかし食料事情は如何ともしがたい急務であるから、隠密行動を心掛け頑張る事とした。
「ギィ……」と扉を押せば、小さく音が鳴る。きちんと油を挿していれば鳴らなかった音。後回しにした過去の私が恨めしい……。
意を決して、玄関の鉄扉をグッと開いてみれば、外はなんてことない青空が広がっていて、ただその一点だけを切り取れば、まるで、世界はこれっぽっちも変わってやいないんじゃないかと錯覚してしまいそうになる。
でも、周囲からは鈍重な足音や擦過音、形容し難い鳴き声や叫び声が、どうしたって耳腔を掠めていく。
ああ!今、明らかに嘴が長過ぎる鳥が、遠くの空を!!
頭の中に「やっぱり引き籠もっていようよ」という声がわんわんと響き渡る。
しかし、ジリ貧なのだ。ごはんが無い。
「ふぅ…」
パッと見、車道には何も居ない。足早に道の角まで行き、チラリと覗いてみれば、そこには、一目見ただけ判る異常が広がっていた。
左右を囲うコンクリート塀やアスファルトの道路には、まるで彫刻刀で木板を彫ったかの様な残痕が5、6と有り、奥の丁字路に至っては塀が粉々に崩れ、アスファルトの道路も捲れ上がり陥没していた。
咄嗟にもう反対側を覗けば、そこは行政無線が鳴り響く前と同じ様子が広がっている。安心した私は、そちらの方向の突き当たりまで進み、同じ様に角を覗いてみる。
そこには、一見すると、大きな岩石の連なりで出来た小山が有った。
しかし、違う。その小山の頂きには、まるで船の帆の様な三角が立ち、根元には“工”の字に出っ張った特徴的な岩石が有り、その下の平たい岩が、開いたり、閉じたり、まるで呼吸しているかの様に動いていた。
その岩石の連なりを目で追ってみれば、分かった。
──蛇だ。蛇が、
その人家と同じ程の大きさを持つ岩蛇が、アスファルトが捲れ土が露出し、塀も崩れた道の真ん中で蜷局を巻いて眠っていた。
そっちにコンビニが有るのに……!
流石にその横を通る勇気は出ない。
引き返そうと後ろを向けば、思わず声が出そうになった。そこには、リンゴトカゲが小首を傾げて佇んでいたのだ。
「き、君、付いて来てたんだ」
かなり音に気を付けて動いていたつもりだったのに、リンゴトカゲが後ろをつけていた事に全く気が付かなかった……。
怪物たちの隠密能力に戦慄していれば、リンゴトカゲは道の角を私と同じ様に覗いて、私を見ては道の角を見てと繰り返し、そのままコロリコロリと転がって、岩蛇の居る道の真ん中に躍り出て、リンゴからはみ出た尻尾で、コチラを見つめながら地面をペチペチと叩き始めた。
「な、何を……!」
咄嗟に声が出掛けて慌てて抑える。しかし、岩蛇は工の字の隙間から眼が現し、体を起こして首を擡げ、先細る尻尾は地面を引き摺り、ガリガリとした振動と音を伝えて来る。
リンゴトカゲはそれ見つめ、同じように首を擡げさせる。その時、不思議な感覚が生じた。胸中や頭から、そのリンゴトカゲと「手を繋いでいる」かのような感覚が走り、ギュッと握り締められたと思えば、リンゴトカゲは岩蛇へと向かって黄色い何かを物凄い早さで吐き掛けた!
黄色い何か──粘液に見える──を浴びせられた岩蛇は、地響きを思わせる、物が擦り合わされた様な唸り声をあげ、身を捩った。その隙に、また繋がりが握られ、岩蛇は粘液を浴びせかけられる。それにより、やっと岩蛇はリンゴトカゲを睨み付けて蜷局がほどけた。それに構わず、また握られる感覚とともにリンゴトカゲが粘液を吐き掛ける。
──こうも続けば流石に察する。私から、何かを得ている……?
そう戦慄していれば、粘液を掛けられた岩蛇は、先程とは打って変わって微動だにせずに佇んでおり、粘液を振り落とすとその岩石の数珠となった尾を撓らせ高く持ち上げた。ヤバイ!と思い咄嗟に背を向けると同時にまた握られる感覚が走り、3歩4歩と駆け出してからはたと気が付く。
叩き付けられた音がしない?あの大きさで……?
恐る恐る後ろを振り返れば、リンゴトカゲが道の真ん中でコチラを見ているだけで、その他に何も無い。
混乱しつつも好奇心に浮かされ、岩蛇が居た道角を覗いてみれば、何も居なかった。体を引き摺った後や、建物が新たに壊れたようにも見えない……。
不気味に思いつつ覗いていれば、リンゴトカゲが岩蛇が蜷局を巻いていた場所へと転がって行き、そこから、何か板状の物を咥えて、鼻息を荒げて此方へ差し出してきた。
見れば、それは名刺程の大きさのカードであり、先程の岩蛇──“イワーク”と名打たれている──の絵が描かれており、その絵の下には、「かたくなる_60ダメージ以下の攻撃を無効化する」「いわおとし_40ダメージ」と書かれていた。
「さっきの……?」
はたと気が付く。最近記事に纏めた紙束……?
よく見てみようと、カードを受け取った瞬間、リンゴトカゲが攻撃する時と同じような、何か繋がりのような感覚が浮かび上がってくる。しかし、その繋がりは、リンゴトカゲのようなゆったりとした繋がりではなくて、どこかガッシリとした、強く握手されるかのような感覚で、突然そんな感覚が体に迸る物だから、思わず“イワーク”というカードを手放してしまった。
「まさか……」
あなたもカードなの……?
今も尚小首を傾げているリンゴトカゲを見ながらそう思う。
約2週間前から全世界的に見られ始めた不思議なカード。今思えば、これこそが「新種の巨大生物」発生の大元なのだろう。
こんなとんでもないカードを配った存在……そんなものが居るのかは分からないけど、今これを記事に出来れば、復興後、もしかしたら苦労が少なくなるかもしれない……。
こんな小さい子でも、あんなに大きなのを倒せたのだから。
とりあえず、これで区切りです。
思い付いたので書きましたが、やはりTCGを元にしているので、何かコンボとか、そういうのを描写したいですよね。
しかし、今のところ私はTCGに詳しく無いので、単純に「モンスターボール」というガジェットを必要としないお手軽ミックスでしか無いという感じです。
やるにしても、現実世界をよりダークな感じにして、何かポケモンの特性や生態と合わせたミステリ系の何かになりそうです。
一応、何でカードが来たのか?とか、大まかな流れは考え付いているのですが、先に提示した「ミステリー」これも私は書いた試しが無いのは勿論、媒体としても全然読んだ事が無いという現状です。
つまりどういう事かと言うと、もし次話に期待してくださるのならば、少なくとも5年は待って欲しいという事です。