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「これ以上は、たとえ貴方でも無理です!もう十分じゃないですか!これ以上貴方が傷つく必要はないんです!」
ああ、これは夢か。
私の意識はふんわり浮かび、私と彼女を見下ろしていた。
随分と懐かしい景色だ。
たった数キロ先の地平線、そこには"過去に倒したはずの怪物の群れ"が続々と日本に向かって行進していた。
その数はもはや数えきれず、海は黒に覆い尽くされていた。
「そんなに傷ついても、感謝はなく!かけられる言葉は罵倒だけじゃないですか!もう、もう良いでしょう……」
私の裾にしがみつく彼女は大粒の涙を流し、必死に私を引き留めようとしてくれている。
「もう、逃げましょうよ。ね?私と貴方なら何処へでも、この世界からだって逃げ出せます。あんな怪物や愚かな奴らのいない、何もない世界に……」
「それはダメだよ」
「どうして!?」
「あの子たちが戦うことになる」
「っ!」
彼女の力が少し緩む。
本当は彼女だってそんな事はわかってるんだ。
「君が私を心配してくれてるのはとても嬉しいし、それを無碍にしてしまっているのは本当に悪いと思ってる。でも、私がここで戦うのを辞めると残ってるのはあの子達しかいない」
「それはそうですけれど……」
「あの子たちはまだ子供だろ?ならこんな事には関わらなくて良いのさ」
そうだ、こんな事私みたいに力のある大人に任せれば良いんだ。
あの子たちが傷つく必要はない。
「でも、でも……」
「ありがとう」
そう言って泣きじゃくる彼女の肩をだく。
ぽんぽんと頭を撫で、頬にキスを落とす。
「それじゃあ、行ってくるよ」
「待って!」
「変身」
そう言った私は怪物たちの前にゆっくりと歩みを進めた。
その体が少しずつ変化するとともに、進む歩調がだんだんと早くなる。
最高速に乗った頃には全て変化し終え、私の体は光を吸い込む闇に染まっていた。
「さあ、あの世にお帰り願おうか」
その言葉とともに怪物の群れと激突した。
この後はひたすらに暴れ、暴れ、暴れた。
殴って、殴られて、蹴って、蹴られて、噛んで、噛まれて、ひたすらに暴れた。
31回日が変わった頃にやっと決着した。
約100万の怪物を屠った。
そして空腹と疲労を隠しながら日本に帰還した時、たくさんの人達に歓迎してもらった。
今まで私に罵声を浴びせていた人達も、無関心だった人達も、皆温かく迎えてくれた。
世界中の人々が私を英雄だと讃えてくれた。
しかし、そのどこにも彼女の姿はなかった。
これ以降、私は1度も彼女に会えていない。
あらゆる伝手を使い、世界中を探しても彼女は見つからなかった。
叶うならばもう一度彼女に会いたい、そして謝りたい。
そんな後悔を嘲笑うかのように、私の意識は覚醒へと向かう。
たとえ彼女が見つからないとしても、帰って来ないとしても、彼女の居場所を守り続けよう。
ああ、今日も頑張ろう。