救世後の英雄譚   作:ないあるら

5 / 6
超超短い上に小説風です
一応読まなくても大丈夫です


うたかたせぶんいやーずあごー

「これ以上は、たとえ貴方でも無理です!もう十分じゃないですか!これ以上貴方が傷つく必要はないんです!」

 

 ああ、これは夢か。

 私の意識はふんわり浮かび、私と彼女を見下ろしていた。

 

 随分と懐かしい景色だ。

 

 たった数キロ先の地平線、そこには"過去に倒したはずの怪物の群れ"が続々と日本に向かって行進していた。

 その数はもはや数えきれず、海は黒に覆い尽くされていた。

 

「そんなに傷ついても、感謝はなく!かけられる言葉は罵倒だけじゃないですか!もう、もう良いでしょう……」

 

 私の裾にしがみつく彼女は大粒の涙を流し、必死に私を引き留めようとしてくれている。

 

「もう、逃げましょうよ。ね?私と貴方なら何処へでも、この世界からだって逃げ出せます。あんな怪物や愚かな奴らのいない、何もない世界に……」

「それはダメだよ」

「どうして!?」

「あの子たちが戦うことになる」

「っ!」

 

 彼女の力が少し緩む。

 本当は彼女だってそんな事はわかってるんだ。

 

「君が私を心配してくれてるのはとても嬉しいし、それを無碍にしてしまっているのは本当に悪いと思ってる。でも、私がここで戦うのを辞めると残ってるのはあの子達しかいない」

「それはそうですけれど……」

「あの子たちはまだ子供だろ?ならこんな事には関わらなくて良いのさ」

 

 そうだ、こんな事私みたいに力のある大人に任せれば良いんだ。

 あの子たちが傷つく必要はない。

 

「でも、でも……」

「ありがとう」

 

 そう言って泣きじゃくる彼女の肩をだく。

 ぽんぽんと頭を撫で、頬にキスを落とす。

 

「それじゃあ、行ってくるよ」

「待って!」

 

「変身」

 

 そう言った私は怪物たちの前にゆっくりと歩みを進めた。

 その体が少しずつ変化するとともに、進む歩調がだんだんと早くなる。

 最高速に乗った頃には全て変化し終え、私の体は光を吸い込む闇に染まっていた。

 

「さあ、あの世にお帰り願おうか」

 

 その言葉とともに怪物の群れと激突した。

 

 この後はひたすらに暴れ、暴れ、暴れた。

 殴って、殴られて、蹴って、蹴られて、噛んで、噛まれて、ひたすらに暴れた。

 31回日が変わった頃にやっと決着した。

 約100万の怪物を屠った。

 

 そして空腹と疲労を隠しながら日本に帰還した時、たくさんの人達に歓迎してもらった。

 今まで私に罵声を浴びせていた人達も、無関心だった人達も、皆温かく迎えてくれた。

 世界中の人々が私を英雄だと讃えてくれた。

 

 しかし、そのどこにも彼女の姿はなかった。

 

 これ以降、私は1度も彼女に会えていない。

 あらゆる伝手を使い、世界中を探しても彼女は見つからなかった。

 

 叶うならばもう一度彼女に会いたい、そして謝りたい。

 

 そんな後悔を嘲笑うかのように、私の意識は覚醒へと向かう。

 

 たとえ彼女が見つからないとしても、帰って来ないとしても、彼女の居場所を守り続けよう。

 ああ、今日も頑張ろう。

 

 

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