前世で親友に裏切られたTS少女が今世で幸せを掴む話   作:名無しのTS好き

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第四話 初めて嬉しいって思えたんだ

「す、凄いよ! あんな大きい魔物を武器も持たずに倒しちゃうなんて!」

 

「そ、そうだな……。えっと、ユウは、俺が怖くないのか?」

 

「ううん、全然! むしろ、僕が助けようとしたのに逆に助けられちゃって情けないくらいだよ……」

 

 

 

 よく分からねえけれど、なんかユウには好評なみたいだ。

 

 その、普通に考えてまだ年齢が二桁にも言ってない少女が魔物を殴り殺すっていうのは恐ろしいと感じると思うんだが……。

 

 やっぱり、英雄になるって奴だからどこか()()とはズレているところがあるのかもな。

 

 俺の知る限り、()()って呼ばれるようになる奴は一癖も二癖もある奴らばかりだし。

 

 ……ただ、この格好のまま町に戻るのはまずいだろうなぁ。

 

 ユウはこんなに目を輝かせているんだからとりあえず放っておくが、いくらあの町の人間が優しいと言っても、流石に血に塗れた少女を見たらドン引きするはず。

 

 さて、そんじゃこれからどうしようか。

 いつもなら、服が血で汚れるようなことをする時は着替えを用意してたんだが。

 

 今は、着替えようにも綺麗な服がねぇんだよ。

 それに、真っ白なワンピースってこともあって、たとえ今から洗っても血は落ちねぇだろう。

 

 うーん、こりゃ結構まずいわ。

 

 

 

「大丈夫?」

 

「まあ、大丈夫ではあるんだが、服に血がついたせいで戻ろうにも戻れねぇなあって」

 

「僕、綺麗にする魔法使えるよ」

 

「……それ、マジ?」

 

 

 

 そんな時、ユウが思わぬ方向から助け舟を出してくれる。

 昨日、水の魔法を使っているのは見たが、まさかそんなものまで使えるとは。

 

 英雄の素質だけじゃなくて、旅をする時にも役に立つんじゃねぇのそれ。

 

 いや、でも考え方を変えれば旅をするのがさほど苦じゃないから、色々なところに人を助けに行けるってわけで。

 やっぱり結局は英雄の素質に行き着いてしまうのか。

 難儀なもんだ。

 

 ユウからするとちゃんと自分の意思で動いているんだろうが、俺からしたらその行動理念は結構異常だと感じている。

 

 あいつの、自己を犠牲にしてまでも人を助けようとする姿は、まだ十にも満たない少年がするようなもんじゃないだろう。

 

 もしかしたら、神はそれをも見越してこの町をそんな一見異質な子供も温かく迎え入れるこの町にユウを飛ばしたのかもしれない。

 

 ……実際、どんな意図があったんだろうな。

 どちらにせよ、俺はこれからユウと長い付き合いになるんだろうけど。

 

 

 

「じゃあいくよ、【服よ、元の姿に戻れ】」

 

「……お、おお!? すげぇな、最初に着た時よりも綺麗になってる気がするぞ。じゃあ、そろそろ帰るか」

 

「良かった! 一応、帰る前に神様に語りかけていこう!」

 

「ん? 神様に俺らから語りかけることが出来るのか?」

 

「うん! たまに返事をしてくれることもあるんだよ」

 

 

 

 そんなわけで、ユウに服を綺麗にしてもらった。

 ユウの魔法は服だけに効果を限定したものっぽいが、心なしか体の方も疲れとか、そんなものも一気に吹き飛んだ気がする。

 

 こりゃいいな。

 俺は一度も行ったことねえが、王都とかに行ったら無限に金が取れそうだ。

 

 そして、もう帰ろうかと声をかけると、ユウは全く予想にもしていなかった方を言い出す。

 

 神サマに……語りかけることが出来る?

 はは、まさに英雄じゃねえか。

 

 こいつは、どこまでも神サマに愛されているんだ。

 前世でどれだけの善行を積んだらここまで愛されるんだよ。

 

 

 

「ユウ、お前すげえよ」

 

「……? あり、がとう?」

 

「いや、マジですげぇからもっと誇っていいと思うわ」

 

 

 

 俺の言葉に、ポカンとするような表情を見せるユウ。

 まあ、分かんねぇよな、だってお前にとって神って存在はここに来た時からずっとそばにいるんだから。

 

 けれどな、()()は神はそんなに近くにいる存在じゃねえんだ。

 この町にもどうせある教会に行ったら、その瞬間に囲まれるような力なんだよ。

 

 でもこのまま成長していったら否が応でも感じることになるだろうさ。

 もしかしたら、逆に気味悪がられたりすることだってあり得るんだよな。

 

 そんな、俺の思いを知ってか知らずか、ユウはあの魔物(デカブツ)

のせいで言えなかったことをまた聞いてくる。

 

 

「あ、そうだ。結局あの魔物のせいで名前聞けてなかったや」

 

「ああ、そういや名乗ろうとした瞬間に来たんだったな」

 

 

 

 あの時は、そのまま元の名前を名乗ろうとしていた。

 だが、少し、少しだけ気が変わった。

 

 そんなわけで、今の俺が考えたばかりの名前を名乗らせてもらおう。

 元の名前は元が闇だとかなんだとか暗い名前だったからな。

 

 安直に、明るい名前で行くよ。

 

 

 

「俺のことは、ヒカリって呼んでくれ」

 

「ヒカリ……? わかった、ヒカリね!」

 

「ああ、これからそれなりの付き合いになるだろうからな、改めてよろしく」

 

「うん! ……あ、そういえば神様がヒカリのことを知ってそうな感じだったけれど、本当に神様と会ったことないの?」

 

「ああ、本当に話したこともないし、会ったこともねぇんだ。……一回、どこにいるかも分からない神サマに向かって願ったことはあるけどな」

 

「それなら、僕と同じだね! 僕も神様にお願いしたら、ここにこれたんだ!」

 

 

 

 そう言って、ユウは笑顔を俺に向けてくる。

 その笑顔は本当に眩しくて、見ているこっちもなんだか嬉しい。

 

 今なら、神サマが俺をここに来させた理由が分かるような気がする。

 

 俺は、多分。

 こいつ(ユウ)の隣にいて一緒に()()になるためにここに呼ばれたんだ。

 

 もしかしたら訪れるかもしれないユウが周りから避けられるようなことがあった時にも、そばに誰かはいるように、と。

 

 ま、理由がそうじゃなくても俺はユウについていくつもりだけどな。

 だって、ユウくらいじゃないと俺の()()な部分を受け止めてくれないだろ?

 

 俺は、決してユウから離れないさ。

 それが、たとえ神サマに決められた俺の運命なんだとしても、俺は信じ合える最高の仲間がいるだけで十分。

 

 

 

 なぁ、神サマ。

 俺をこの町に飛ばしてくれて、ユウと出会わせてくれてありがとう。

 

 人の思惑に乗らざるを得ないのは少しだけ癪だが、あんたのおかげで俺は、これから幸せに暮らせるだろう。

 

 まあ、生きていくうちに、何かは起こるはず。

 そうだとしても、しばらくは俺を裏切った親友(アイツ)のことなんかも考えずに楽しく過ごせそうだ。

 

 

 

「よし、じゃあユウ帰ろうぜ!」

 

「うん! ちょっと長くなっちゃったからリューカおばさんに心配されてるはず、急がないと!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 僕の名前は、ユウ。

 神様から、ある使()()を言い渡されているんだ。

 

 その使命っていうのが、自分の出来る限りたくさんの人を助けて()()になるってこと。

 

 本当は、昔いたらしい魔王を倒したりする方がいいらしんだけど、今の僕じゃそんなんは無理。

 だから、まずは近くにいる困っている人達から助けることにした。

 

 水を汲みにいくのを手伝ったり、市場で買い過ぎちゃって運ぶのが大変だって人を手伝ったり。

 

 全部、本当に喜んでもらえて、すっごく嬉しかったんだ。

 ……でも、それじゃあ僕は()()になれない。

 

 ちょっと焦ってたんだ。

 誰かを僕の命を投げ出してでも助けて、()()にならなくっちゃって。

 

 それで、今日ヒカリのことを助けようとしたんだけど、逆に僕が助けられちゃった……。

 

 だから、ヒカリは僕にとっての()()

 僕じゃ倒せなかった魔物を拳だけで倒した、僕なんかより凄い女の子。

 

 魔物を倒している時のヒカリ、楽しそうだったなぁ。

 今までに見たことのないほどの凄い光景で、目を逸らしたくもなったけれど、それ以上彼女は綺麗だった。

 

 神様も、ヒカリのことは知っていたみたい。

 きっと、僕はこれからヒカリと色んな人を助けに行くことになるんだろう。

 

 僕だけじゃちょっと不安だったけれど、ヒカリとならどこまでも行ける気がするし、どんな敵にも立ち向かえる気がする!

 

 

 

「それにしても、ユウの魔法は凄いな。ちょっと怪我してた拳も治ってるんだよ」

 

「いやいや! 僕よりヒカリの方が凄かったよ! 僕は魔法が使えるっていうのに何も出来なかったし……」

 

「それを言ったら、ユウが俺を守ろうとしてくれたから俺も力が湧いてきたしやっぱりユウの方がすげえって」

 

 

 

 今日は、絶対にヒカリに助けられたはずのに、それでもヒカリは僕を持ち上げてくる。

 嬉しいけれど……ちょっとだけ、モヤモヤもする。

 

 ヒカリは、凄い力を持っているじゃん、しかも、可愛いし、綺麗だし、それでいて格好いいじゃん。

 

 ……そうだ! リューカおばさんのところに戻ったら、ヒカリが凄い女の子だってことを今日分かったことだけでもたくさん伝えよう!

 

 でも、町の人に言うのは……なんかダメな気がする。

 本当はもっと沢山の人にヒカリを知って欲しいけれど、ヒカリが怖がられるのは嫌だ。

 

 そうなると、言うのはやっぱりリューカおばさんだけになっちゃうのか。

 でも、リューカおばさんに言ったら、皆がヒカリを怖がらないくらいにヒカリの凄さを広めてくれるような気もする。

 

 町の人にもヒカリが凄いってことが伝わってくれるといいなぁ。

 

 

 

「お、リューカの宿が見えてきたな」

 

「そうそう、意外と森までは遠くないんだよね。だからこそ心配させちゃってるかも」

 

 

 

 あ、リューカおばさんの姿が見えてきた。

 あの顔は……ちょっと怒ってるかもしれない。

 

 やっぱり、帰ってくるのが遅すぎちゃった?

 リューカおばさん、いつもは優しいけれど、怒ると怖いんだよ……。

 

 でも、ヒカリと一緒なら、少しだけその怖さも薄れるかもしれないや。




ふふふ、お互いに、いい感じに執着してきたね。

この調子だと、数年後にはどんな関係になっているんだろう?

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