前世で親友に裏切られたTS少女が今世で幸せを掴む話   作:名無しのTS好き

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第五話 旅立ちの日は、意外と寂しかった

 そんなわけで、あれ以来。

 俺とユウは、いつも共に行動をするようになった。

 

 それは、食事は勿論、外出も、寝る際も、ひと時も離れることがないくらいで。

 

 初めは、リューカも仲が良いなとニコニコしていたのだが、しばらく経つと流石に何かがおかしいと気づいたようで、数日に一回は俺達に悩み事があったりしないかと聞いてくる。

 

 けれど、別に何かが()()()わけではないのだ。

 俺達は、まるで運命に導かれるように、いつの間にか一生に過ごすようになったとしか言いようがない。

 

 そんな感じなのだから、リューカもこれと言ってスキンシップを控えろと言うわけにもいかず。

 結局、俺らが離れる時だなんて滅多にないとてつもなく珍しいものになって……。

 

 

 

「ユウ! 準備は終わったか!?」

 

「ちょっと待って! まだ心の準備が出来てないし、お別れが言えてない人も沢山いるんだって!」

 

「でも仕方がないだろ、今日出るって決めちまったんだから! ……まあでも、挨拶が終わってないって言うならまだいいが」

 

「ヒカリ、本当にありがとう……もう少しだけ待ってて!」

 

 

 

 俺もユウも、大体十四とか十五とか。

 そんくらいの、世界の中ではギリギリ大人の仲間入りが出来るっていう年齢になっていた。

 

 あの日の後、俺達は町の中では結構な有名人になった。

 

 元からユウは結構町の人間から好かれていたからあまりこれと言った変化はなかったのだが、それ以上に当時来たばっかりだった()も好かれるようになって。

 

 しばらくの間はやれ町のこれがどうとか、やれ森にちょっとした弱い魔物が出たとか俺たちは引っ張りだこだ。

 

 俺はいくらなんでも子供に頼りすぎだろ、とは思ったけれどユウが楽しそうにしていたから、別に苦ではない。

 むしろ、人にこんな打算もなく頼られるってのが初めてで、いつの間にか俺も人を助けることが楽しいと思えるくらいになっていた。

 

 そして今日は、いつかしようと決めていた、この町を旅立つ日だ。

 

 

 

「リューカ、今まで本当に世話になった」

 

「いいんだよ。あの日から、出会って二日三日だとは考えられないくらいにベタベタになったのはビックリしたねぇ」

 

「まあ、それはちょっと否定も何も出来ねぇな」

 

「でも、あの日からユウは今まで以上に毎日が楽しそうで、あたしはヒカリが来てくれて結果的には良かったと思うよ」

 

「……本当に、ありがとう」

 

「なんだい、急に。らしいといえばらしいけれど、()()()ヒカリらしくはないじゃない」

 

 

 

 思えば、リューカにもこの宿にも俺はとても世話になった。

 

 ユウに拾われた時点で、もうこのから宿に世話になることは確定していたとはいえ、俺はここに来なかったら前みたいな人生をまた繰り返していたかもしれない。

 

 そんな、それなりに危うかったであろう俺を、なんとか()()に馴染めるようにしてくれた彼女には感謝しかない。

 

 ただ、まあ、見ればわかる通り、言葉遣いと粗暴な振る舞いはいまだに改善できていないが。

 少なくとも、気もしれない全く知らない人間の前では、見た目通りの少女を演じれるくらいには成長出来ている。

 

 本当に、何度ありがとうと言えばいいのか分からないくらいに恩がある。

 

 いつか、何かを返したいとは思っているが、リューカは気持ちだけで十分と言いそうだ。

 ……ああ、本当に彼女に与えてもらったことはどうやって返せばいいんだろうな。

 

 

 

「よし、もう行けるよ、ヒカリ!」

 

「おう、ちょっとだけ待っててな」

 

 

 

 そう思っていると、つきものが落ちたかのような晴れた顔をしてユウが戻ってきた。

 まあ、あいつのほうがこの町にいた時間は長いわけだし、俺以上にいろんな人間に世話になったんだろう。

 

 良かったな、ちゃんと出発前におそらくあっただろう言いたいことを言えて。

 あそこで、ユウが渋るのを無視していたらどうなっていたことやら。

 

 それじゃ、俺もリューカに挨拶をして、この町から旅立つとしよう。

 

 ユウは、昨日の夜何回も何回もリューカに感謝の気持ちを伝えていたからか、一番辛いだろうのに俺のことを優先してくれる。

 ……仕方がねぇなぁ、お前だって昔より成長したとはいえまだまだ子供だろ?

 

 俺は、僕は大丈夫みたいな表情をしているユウを引っ張って、一緒にリューカの元に行く。

 

 

 

「ほら、ユウ。お前もまだまだ言いたいことがあるんだろう?」

 

「相変わらず、ヒカリは優しいなぁ……」

 

「……そうさね、とりあえず、私から言えることは決して死なないようにして、元気でやっててくれっていうのと、辛くなったらいつでもここに帰って来ていいからっていうのだけだよ」

 

「ッ! ありがとう……リューカさん、いやリューカおばさん」

 

「ユウはそりゃ大きくなったし周りからも大人って見られることが多くなってきたけれど、あたしから見たらまだまだ子供だよ。勿論、ヒカリも。……だから絶対に元気でいるんだよ」

 

 

 

 そうして、俺らは。

 実質生まれ故郷であり、かつ自分達が育った、とても温かくて優しい人々がいる町を離れたのだった。

 

 寂しくないといえば、勿論嘘になる。

 だが、それと同時にこれからどんな冒険が出来るんだっていうワクワクも……いや、やっぱり寂しさの方が大きいわ。

 

 ……クソ、沢山の時間を過ごした場所から離れるって、こんなに辛いことなのかよ。

 俺にとって、前生きてた場所は離れてせいせいするくらいの場所だったっていうのによ……。

 

 ……隣を見れば、ユウが泣いていた。

 けれど、そんなユウ以上に、俺の目からは涙が溢れ出して止まりそうにもない。

 

 今なら、まだ町には戻れるだろう。

 けれど、それと同時にそうやって後ろを振り返ってしまったら、もう神サマからの使命は果たせないだろう、ということも分かる。

 

 ああ、こんなに、こんなに辛いもんなんだな。

 俺は、そして多分ユウも、住んでいた場所の温かさをいまで以上に痛感するのだった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、とりあえず今日はこの辺で一旦休むか」

 

「……うん、ちょっと疲れてきたし、ちょうど僕も休みたいと思ってた」

 

 

 

 俺達はそれなりに歩いて、とある大きな木にたどり着いた。

 その木は、流石に神サマがいるという木ほどではなかったものの、やはり大きくて、どうしてもあの町のことを思い出してしまう。

 

 だから、そのまま無視して進むということがし辛く、結局一旦ここで休むことにする。

 

 昨日は、あんなにこれから待ち受けているだろう()()に目を輝かせていたユウも、流石に今日はテンションが低い。

 何か気が利いた言葉をかけてやりたいのだが、残念なことに俺にそんな才能はないし、俺だって大分気分が良いという訳ではない。

 

 神サマからして、これは一つの試練なんだろうか。

 それとも、これは試練ですらなくて、()()になった者達は俺達のような思いをすることはなかったのだろうか。

 

 そんな、いつもなら考えたこともないことを考え始めてしまう。

 が、そんなことを考えたって仕方がないことは分かっている。

 

 そうやって、また俺達はため息を一つ吐く。

 

 ……そんな時だった。

 

 

 

「誰か! 助けて!」

 

 

 

 道から少し外れた、森の中から、女性の声が響いたのは。

 

 それからの俺らの行動は早かった。

 戦闘に必要のないものは全て木において、それぞれの獲物を手に持って声の方向へ駆け出す。

 

 すると、そこでは。

 俺たちが昔戦った、熊を元にした魔物が、武器を持った男を襲っていた。

 

 隣で、必死に魔法で援護しようとしている人間がさっきの声の主か。

 それにしても、ヤバイな、男は大分押され気味な上に、体中にあの魔物によるものだと分かる引っ掻き傷がいくつもついている。

 

 

 

「ッ! ユウは、人を魔物から引き剥がせ! 魔物は俺がやる!」

 

「いや、この距離なら、僕の魔法で魔物を仕留めた方が早い!」

 

 

 

 あの時と同じく、俺は魔物に対して殴りかかりに行こうとする。

 しかし、その時にはユウは町の腕の良い人に作ってもらったらしい杖を振り上げていて、次の瞬間には魔物の首はスッパリと切れていた。

 

 ……すげえな、あの時のユウは見ているだけだったが、今のユウは俺なんかより全然頼もしい。

 俺が出るまでもない、ユウの独壇場だった。

 

 

 

「大丈夫ですか!? えっと……【怪我よ、治れ】」

 

「……俺は、俺は助かったのか……?」

 

 

 

 そのまま、ユウはいくつも怪我を負っている男性に治癒魔法をかけた。

 あの時は知らなかったことだが、大怪我をも治せるような治癒魔法の使い手は相当限られているらしく、今ユウが助けた男女は目を見開いて驚いている。

 

 そして、今自分を助けたのが、まだギリギリ成人をしたかしていなかという少年(ユウ)だということにも気づき、驚きの表情を更に大きくする。

 

 

 

「君は……まだ、俺達より全然年下だっていうのに、凄い力を持ってあるんだな……本当に助かった、ありがとう……」

 

「いえいえ。間に合って良かったです」

 

「彼を助けてくださって……ありがとうございます」

 

 

 

 そうして、しばらく驚きの表情を隠せなかった彼らは、ユウに心からの礼を言う。

 それに対してユウは当たり前だ、みたいな表情をしているが、ちゃんと助けられて良かったという、そんな安堵の気持ちも窺える。

 

 だが、少なくとも。

 その目からは故郷を離れた不安はもうなく、幼い頃の少しだけ頼りなかったユウの姿は、もうどこにもなかった。




勿論、故郷を離れることだって()()の一つだよ。

過去に、引き返しちゃって()()になれなかった子は何人も見てきた。

けれど、それも彼彼女なりの選択だから、それを咎めるだなんてことはしないさ。

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