実績【隠の創始者】   作:さくらいJAN

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縁壱視点です。


3話

 

 

その日、うたの出産に備えて様子を見て貰おうと

産婆を呼ぶ為に出かけていた。

道中に戦で負傷した息子の死に目に遭うべく、

心臓が悪いのも押して山を越えようとする老人をおぶって

息子の元に送り届けた。

私は産婆を呼ぶのを明日に回し、

日が暮れながらも家路を急いだ。

 

 

途中、血の匂いがした。

 

 

産まれて初めて血の気が引いた。

勘違いだと思いたい。

早鳴る心臓を抑え込み駆ける。

 

目を凝らし、家の方角を“視た”。

すると遠くにうたの姿が見えた。

 

生きている。

怪我もない。

 

良かった。

しかし彼女の足元に血まみれの男がいた。

うたは包帯を持っている。

 

状況は分からないが助けなくては。

私はそう判断し、速度を緩めず彼女の元まで駆けた。

 

 

 

 

 

倒れていた男を家まで運び、傷口を洗浄して止血した。

 

うたが言うには、

倒れていた男は昼頃に訪ねてきて、鬼殺隊の一朗太を名乗ったようだ。

曰く、鬼を見なかったか?と。

 

見てないと告げると去ったようだが、

夜になると金属がぶつかるような音がしたらしく、

不安に思い様子を見ると一朗太と化け物が戦っていたらしい。

 

一朗太は大怪我を負いつつも化け物に勝利し、

化け物の方は首を斬られた後、体が塵となって消えたらしい。

 

 

つまり塵となって消えた化け物は鬼だということなのだろう。

鬼……か。

 

当然、そういう存在は知っている。

神や龍と同じで見たことはないが。

 

しかしうたが見たというのなら実在するのだろう。

錯乱していたと仮定しても、崩れて消えたと言う鬼の遺体は確かに存在しないし、

一朗太の傷跡はうたの言っている怪物の特徴と合っている。

 

 

そして鬼は人を喰うという。

もしこの男が現れなければうたとお腹の子供が……。

 

 

そこまで思考を進めて、鳥肌が立つのを感じた。

私は考えが甘かった。

 

鬼に限らず、この世は安全ではない。

兄上に褒めてもらった剣技を使うこともなく、

愛する者を守れないところだった。

 

一朗太には感謝しかない。

 

そして今後のことについても考えなくてはならない。

鬼という存在を知ったのだ。

傍に置いていつでも守れるようにしておきたい。

 

ただ、それは現実的ではない。

家族で食べていくためには田畑を耕し、銭も稼がねばならない。

 

どうしたものかと悩んでいると、一朗太が目を覚ました。

 

傷の手当の礼もそこそこに、

鬼を狩る集団、鬼殺隊に入らないかと勧誘された。

ひょっとしたら、この無駄に強い力も透き通る視界も人間相手ではなく、

鬼を狩る為に授かったのかもしれない。

 

しかし即答はできなかった。

うたの出産は近いし、私だけの判断で決めていいことではないからだ。

 

幸い蓄えはある。

子が産まれ首が座るまでは食えるだろう。

産婆を呼ぶ際には昼間のみ移動し、

私が産婆を背負うことで移動時間を短縮することもできる。

 

その後、住居を変えて常に守れる場所へ引っ越すか、

鬼殺隊に加入するかを考えよう。

 

 

私は一朗太に考えさせてほしいと告げた。

そうすると、鬼を倒すには日光か特別な鉄で作られた

日輪刀で首を切らなければいけないと教わった。

 

助かる。

もし遭遇したら何も知らずに戦うところだった。

 

そして鬼殺隊の拠点の場所も教えてもらった。

何から何まで申し訳ない。

 

 

心情としては家族を助けてくれた鬼殺隊に協力したい。

頑張ってうたを説得しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子が生まれた。

私が守るべきものだ。

うたと共に。

 

そして、家族を失う恐ろしさを想像した。

 

私には力が有る。

これを人同士の争いで振るうつもりはないが、

人を喰う鬼を狩る為に振るうというのならば、

悲しむ人を減らすことが出来るというのならば、

そんなに素晴らしいことはない。

そう思った。

 

 

 

 

私はうたと子供を連れて鬼殺隊に加入した。

 

 

 

 

 

 

 




主人公の名は一朗太にしました。
名字はないです。
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