side傷原流水
「こちらブラッドロータス。現在異常なし。」
文化祭当日。
8時30分過ぎ。
開始30分前。
何も無いことを祈りながら雄英高校の警備にあたる。……ミスコンに出るから……その準備もあってか途中でほかの先生と交代する。
「…………少しだけ嫌な気がする。」
なんというか……モヤモヤする。こういう時はろくなことが起きないんだ。
prrr……
電話……オールマイト…?なんだろう。
「はい。傷原です。どうしました?」
『やあ傷原君!ちょっと気になることがあってね。緑谷少年が帰ってこないんだ。』
「緑谷くん?どこ行ったんですか?」
『ロープを買うと言ってね。7時くらいに出たまま、まだ帰ってこないんだ。もしかしたら厄介事を引き受けてるかも……ってね。』
「……探します。何してるんですかあの子は。オールマイト。貴方の教育の問題ですよ。」
『ハハハッ!耳が痛いよ。』
「それでは失礼します。」
ピッ
「ハウンドドッグ先生。スナイプ先生。エクトプラズム先生。そういうことなので探します。少し持ち場を離れます。」
『了解。』『グルルル……。』『了解ダ。』
面倒くさい……。
……多分ルート通りだとこの道通るはず……こっちのが近いしね?
「…………。」
どこにもいない……。
BOING!BOING!
この音…………。
「もしや……?」
こっちから聞こえた!
「ハウンドドック先生。エクトプラズム先生。私が今から言うポイントに来てください。もしかしたらちょっと厄介な相手が居ます!」
『グルル!了解ァ!』『了解!』
来るなと言ったのに!ジェントル!ラブラバ!!
9時……聞こえないが文化祭が始まった。
そして……
「私は1度……警告はしました。」
「……厄介だね。君は本当に。」
「…………ブラッドロータス……。」
見つけた。ジェントル……ラブラバ……そして……倒れてる緑谷くん。
「何をしてるの緑谷くん。」
「傷原……先生……いやっ……これはっ!」
「何をしているのか答えなさい。緑谷出久。貴方の発言次第で文化祭を中断します。」
「そっそれは!!!」
この子の事は一旦置いておいて……。
「まずはあなたたちですね。」
「うぐぉっ!?」「きゃっ!?」
2人を血で拘束。
「クロユリじゃないとはいえ……あなたたちのパワーじゃ壊せません。意識してないと思いましたか?」
「うぐぐぐ……。」
「ジェントル……。」
「とりあえず警察に突き出します。緑谷くん……貴方への処分はあとからきめm……」
「傷原先生!ごめんなさい!!」
ブチッ
血の拘束が……ちぎれ……え?何を……緑谷君?
「ジェントル!ラブラバ!僕は貴方達のことを見くびらない!僕が止める!!これ以上先に行かせない!壊理ちゃんのためにもっ!貴方達の為にも!!!」
「……君は……君という人は……。」
緑谷君がジェントルに突っ込む。
「まっ……待ちなさい!!緑谷出久ッ!!!」
「傷原先生!この人はきっと僕が止めないと行けないんです!!」
「はぁ!?」
なにそれ……意味が……
「君は……底抜けの善人だな……わかったよ。」
BOING!!
「うわっ!?」
緑谷君が上に跳ねる。そのまま木に叩き込まれる。
「ブラッドロータス。私を拘束し直してくれ。あの少年が君の拘束を破った……ということは秘密にしてな。」
ジェントルが両手を差し出して私に歩み寄る。
「ジェントル……嫌っ!ジェントルが行くなら私も行くわっ!」
「ラブラバ……。」
「…………どちらも拘束し直します。どちらも犯罪者に変わりないので。」
「……頼む。」
「…………ブラッドロータス。ごめんなさい。貴方が警告してくれたのに。」
「……どうせ来ると思いましたよ。…………緑谷出久が居たおかげで……秘密裏に処理することは無くなりましたけどね。この状況で私と対面して命があるだけありがたいと思ってください。」
「…………うむ。」
「……はい。」
「ワカッタ。後ハコチラデ処理シヨウ。」
「お願いします。」
9時20分。
ジェントルとラブラバの受け渡しが終了。緑谷くんはエクトプラズム先生の分身が1人ついて行って買い物を終わらせた。
「…………。」
「ぐるる……何かあったか?」
「…………いや。貴方方には何も。……少し話したい相手がいるので……5分ほど席を外します。」
私はスマホを取り出す。
「ワカッタ。コチラハ任セテオケ。」
少し距離を取って連絡をする。
「オールマイト。傷原です。」
『緑谷少年は!?』
「うるさ……見つけましたよ。今エクトプラズム先生の分身と一緒に買い物に行ってます。そろそろ帰る頃かと。」
『なんだと!?良かった!』
嬉しそうだが……話さねばならない。
「オールマイト。緑谷君の事なんですが。」
『ん?何かあったかい?』
「あの子は。1歩間違えば大惨事を引き起こしかねませんでした。……厳重注意をお願いします。」
『……なんだと?なんのk……』
「私はこれで。本人の口から聞いてください。」
『…………わかった。』
「失礼します。」
ピッ
「フーッ……。」
落ち着け。怒りを抑え込め。冷静にパトロールしろ。
緑谷出久はきっとジェントルから何かを喋られたんだろう。ジェントルの過去に……同情したのだろう。その上で止めようとしたのだろう。自らの手で。事情を知っている自らの手で。
……だからといって。…………。これも学生の過ちですか……?オールマイト。次世代の平和の象徴は…………本当に彼でいいんですか?
それよりも……被身子ちゃんとのダンスまでに……この顔をいつもの笑顔に戻せるかしら。
side渡我被身子
「「「ウワアアアアアアアアアアッ!!!!!」」」
大盛況。
みんな頑張った!……まぁ私は青山君吊るしてただけだけですけど。
裏方だけど走り回って大変。……でも私にとって本番はこれから。
「ごめんなさい皆!私もう時間なので行ってきます!」
「おう!行ってきな!ヤオモモ!お願いね!」
「はい!しっかりと渡我さん達の活躍を映像に残して見せますわ!」
カメラでっか…………撮影用の大きなマイク……存在するんですね。
「大袈裟ですね?それでは行ってきます!」
出し物とミスコンがちょうどいい感じに時間が被ってしまったので急ぐ。
「渡我被身子入ります!」
そのまま控え室に入る。
流水さんがもういる。
「遅れましたか!?」
「被身子ちゃん。時間バッチリ。早く着替えちゃお?」
「はい!」
今回仮面をつけるという話になったので写真はOKにした。全面禁止とか難しいからね。
「衣装は……これですか……綺麗。」
流水さんのは黒と赤のツートーン。黒いバラを首元から肩のかけてに多数にあしらった綺麗なドレス。黒いベールと黒いマスクがドレスと一体感を醸し出す。
私のは白と赤のツートーン。赤い大きな薔薇が胸元にひとつ。背中が大きく空いた上、赤いパゴダスリーブも綺麗。白いベールと白いマスク。どちらも美しい。
「うん。本気出してくれたみたいだから……いっぱい楽しもうね?」
「今からコレを着て流水さんと踊れるなんて……披露宴みたいですね♪」
「じゃあこれは披露宴へのデモンストレーションだね。」
二人でドレスを着て、ベールとマスクをつける。
「被身子ちゃん……本当に似合ってる。すごく綺麗。」
「流水さんもすっごくかっこいいです。」
「ふふっ。じゃあ行こうか?」
「はい。いっぱいリードしてくださいね?」
「私にだけ沢山笑顔見せて?」
「強欲さん♪お返し……期待しますね?」
「任せて。」
『それではオープニングセレモニー!保健室のアイドル傷原先生と!1-A渡我被身子さんの社交ダンスです!』
「「「わああああああっ!!」」」
「え!?まじで社交ダンスすんの?」
「かっこいい!」
「……。」
少しの緊張。まずは向かい合って……え?
「「「キャアアアアアアア!!」」」
流水さんが私に跪いて小さい箱をこちらに向ける。
これって……私の指輪……!
「……もう……とんだサプライズですね?」
流水さんは私の左手の薬指にリングを嵌める。
黄色い歓声がもっと大きくなる。
よく見ると流水さんの左手にも指輪がある。……もう……用意周到ですね。
音楽が始まる。
ステップは頭に叩き込んだ。身体に馴染ませた。
でも本番というだけで足がふわふわしてる。笑顔が作れているか怪しい。
私は踊れてますか?
流水さんのダンスパートナーとして恥ずかしくないですか?
不安が募る。
ポンポン
流水さんから肩を……というか肩甲骨を軽く叩かれる。
やば……何か間違え……て……
流水さんと目が合う。
口パクだけど……私にはわかった。
た の し ん で ?
…………周りの目を気にして忘れてました。
私は……今!
流水さんと踊ってるんだ!
作り笑いが解ける。自然な笑顔が漏れる。流水さんと踊れてる!下手くそでも!拙くても!流水さんの視線と笑みを独り占めできる!みんなの前で!見せつけるように!
もう周りの目は分からない。声も聞こえない。
聞こえるのは私と流水さんの息遣いだけ。
身体がさっきよりもよく動く気がした。楽しい!嬉しい!愛おしい!!
見て!私を!!見て!!私の流水さんを!!愛を!心を!全部!!
流水さんとまた視線が合う。
まるで……私だけを見てと言うような。少しだけ物欲しそうな目。
もう……本当にかぁいい……かっこいい。
私の……私だけの……
「「「「ワアアアアアアアアア!!!!」」」」
2人お辞儀をしてそのままステージを去る。
ミスコンに出る皆にも喜んでもらえたみたい。
「2人ともかっこよかった!幸せそうだったよ!私も頑張るから見てね?」
「はい!波動先輩も頑張ってください。」
「渡我!あんなの見せられたらこっちも負けられないよ。」
「拳藤ちゃん!どっちが盛り上がるから勝負ですね?」
みんなと別れて楽屋に戻る。
着替えを終わらせて二人で一息。
椅子をピタリとくっつけて寄り添う。
今この瞬間。言葉なんて必要なかった。