side傷原流水
「え?また戦って欲しい?」
「ああ。頼む。」
お風呂ご飯を食べて、雄英の中庭……ベンチで被身子ちゃんの太もも枕を堪能してたら、爆豪くんが話しかけてきた。
被身子ちゃんがすごく嫌そうな顔したけど、爆豪くんの要件を聞いたら興味が少し失せたようで、私の頭を撫でてくれてる。
「……理由を聞いても?」
「インターンでジーンズ先輩から学んだことを試したい。ハラセンに通用するなら本物だろ。」
「……いいよ。何時にしようか。」
「今日か明日の放課後。」
「場所は?」
「USJの暴風大雨ゾーン。」
「……そこでいいの?」
「渡我から聞いた。土砂や雨の方が出力が出るって。だからそっちの方がいい。本気のハラセンと戦いてぇ。」
「……わかった。先生には?」
「13号、イレイザーヘッド、リカバリーガールに許可とった。」
「……いい子だね。感謝した?」
「ああ。」
「ならよし。じゃあ……。」
「私は今日でもいいですよ?予定無いですよね?」
「うん。ありがと。……今日にしよっか。」
「……わかった。よろしくお願いします。」
爆豪くんが頭を下げる。
……えらく素直だ。何かあったのかな?
「…………何かあった?」
頭を下げたままの爆豪くんが答える。
「……オールマイトから出久が文化祭の時何したか聞いた。」
「「!」」
被身子ちゃんに目線をズラすと
「私は何があったか知りませんし聞いてません。」
ん〜……直接聞いちゃったか。
「切島と委員長で出久に確認とったらアンタの邪魔したって言った。」
なんで切島くんと飯田くん?
「!?本当ですか!?爆豪くん!!」
「被身子ちゃん。ステイ。私はもう許してるから。」
「…………。」
「俺も怒りそうになった。だから止めてくれる切島と委員長に同伴を頼んだ。……めちゃくちゃ腹が立ったが……ぶつけなかった。少しだけモヤモヤしてるんだと思う。少しでも身体全力で動かしてこの気持ちを払拭したい。……あと俺の今足りないものを言語化したい。付き合ってください。」
「……確かに今日の授業全部座学ですもんね。」
「……なるほど。成長したね。わかった全力でやろう。」
「ありがとうございます。」
爆豪くんが頭を上げる。
「時間は放課後…………18時でいいかな?それまでにコスチュームと準備をしっかりしておくこと。13号先生とイレイザーヘッドには……」
「俺が一緒に来てもらうことになってる。俺が頼んだのにハラセンにそこまでしてもらう訳にはいかねぇ。」
「うーんgood。いいね爆豪くん。じゃあ放課後ね。」
「はい。よろしくお願いします。」
爆豪くんが去ろうとする。
「……爆豪くん。甘いもの好き?」
「あ?……別に。」
「あげる。」
私はポッケからいちごミルクのパックを爆豪くんに投げる。
「……これ。」
「少しでも頭に糖分回しておきな。私は強いよ。」
「……もう無様な負け方はしねぇよ。ゼッテェ勝つ気でやる。」
「ひゅぅ。いいね。今からヒリついてきた。」
「ふん。」
爆豪くんが中庭を後にする。
「…………流水さん。私とも久しぶりに手合わせしてくださいよ〜。」
すねた口調。……確かに最近手合わせしてないね。
「貴方定期的に相澤先生と手合わせしてるでしょ。……いいけど。いつがいい?」
「また今度で。今日は研究会です。」
「……被身子ちゃん私の癖読んでくるからなぁ。」
「好きな人の全部が知りたいので。」
「ふふっ。じゃあ負けないようにしっかりしないとね?」
「強くなったところ見せますね?」
「受け止めたげるから全力でね?」
「かっこいいです。流水さん。」
頭を撫でる手が少しだけ優しくなった気がする。愛されてる。嬉しい限りだね。
ザーーーーッ……
大雨。USJの暴風大雨ゾーンの特徴。風と雨で体力を奪い続ける。短時間での思考、行動、そして救助が本当に重要な場所。
「いい天気だね。爆豪くん。」
「……はい。これでいいです。」
私たちは向かい合う。……爆豪くんは準備万端だ。
今回もギャラリーが来ている。
A組も……B組も。みんな傘さしてるけどね。
「……じゃあとっとと始めちゃおっか。まず……勝ち負け決めよっか。」
「……もう決めてます。」
「負けを認めるまでなんてヤダよ?」
「わかってます。行動不能になるまで。これでどうですか。」
「気絶。拘束を含むって話ね?……私めちゃくちゃ有利じゃない?」
「理不尽を乗り越えてこそヒーローです。」
「なるほど。」
「負けんなよ!爆豪!」
「応援してるぞ!爆豪!!」
「いけんぞ爆豪!!雪辱晴らせ!!」
ふふっ。青春だね。
「流水さん!頑張って〜!」
ありがとう被身子ちゃん。
私は何も言わずに地に落ちた雨をかき集め、エスコルチアを発動させる。
集めた水は……鎧ではなく私を大きく纏い……まるで大きな人形のような風貌に変える。
「…………。」
「え!?先生ぽよぽよのぷにぷにになっちゃったけど!?」
「なにあれ……可愛い〜。」
「あれ動けるの?」
「はい。エスコルチア・ヴルツェルフォイレ……これが私が汚水で成れるエスコルチアの1つ目の形態。ドイツ語で根腐れって意味だね。私のエスコルチアの……粘性を最大まであげた形態。」
「……粘性……拘束用の形態ってことか……おもしれぇ。」
「うんうん。じゃあ……始めようね。」
言うが早いか、私は腕を振り下ろす。
水の腕が遠心力で伸びて爆豪くんを襲う。
「チッ!」
横への爆発で推進力を上げて回避。
水の腕が地面に叩きつけられ、ビチャっと広がり、地面にくっつく。
お……爆破を戦闘中の回避に織り交ぜてる。爆破をある程度自由に使用できるように、掌の強化を続けてたのかな?
「これは?クレマチス・ヴルツェルフォイレ。」
くっついた腕から無数の針。
「オラァ!!!」
爆豪くんは爆破で宙に浮きながら攻撃を回避しきる。
判断能力も充分。自分の能力の高さに身体が追いついてきたね。
「すげぇ爆豪!いけるぜ!!」
「あれ初見で躱せるんだ……。」
「本当にすげぇヤツだな爆豪。こえぇけど。」
「うーん……動体視力◎。よく見てるね。」
「ジーンズ先輩のところで無理やり叩き込まれたからなぁ!」
私は腕を元に戻す。
「今度はこっちの番だ!!柔けぇならぶっ壊せるだろ!!」
BOM!BOM!!
爆豪くんが空を飛び近づいてくる。
早い。前よりも。筋力と……爆破のパワーも上がってる。努力の後が目に見える。
「ふふふっ。」
「何笑ってんだァ!オラァ!!」
BOMBOM!!
私のエスコルチアはブルブルしているだけだ。
「おぉ〜……体感してわかるね。強くなったけどまだまだ。こんなんじゃ突破できないよ?」
私は全身から無数の針を伸ばす。
「俺には……こいつがあんだよ!!」
爆豪くんが篭手をこちらに向け、引き金を引く。
BOOOOOM!!!
針が消し飛ばされる。
「!……私のクレマチスが……。」
そのまま爆豪くんが煙の中から出てくる。
「貫通力上げりゃどうだ!徹甲弾(A・Pショット)ォ!!」
「!!」
BOM!!!
「なっ……」
「いやぁ……それだけは勘弁。衝撃には強いけど貫通力高いと普通に貫通されちゃうんだよね。」
「あれ……傷原先生……」
「あの格好でも……」
「「「早く動けるのかよ!!?」」」
私は今爆豪くんの後ろ。
「当たり前じゃない?だって元はエスコルチアだもの。」
容赦なく針を伸ばす。
「そうだろうと思ったよ!」
爆豪くんは地面に爆破。そのまま飛び上がり、針を躱す。そのまま空中回転。……これはッ!この距離で!?
「榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)ォ!!!!」
BOOOOOOMM!!!!!
爆音。
爆豪くん……
「やったぜ爆豪!クリーンヒット!!」
本当に……
「……まだだ。」
本当に強くなった。
「……手応えはあった。」
そうだね。でもね?
「……倒れねぇよな。これじゃ……。回転が足りねぇ。」
エスコルチア・ヴルツェルフォイレが1/3くらい吹き飛ばされた。当然無傷ではない。
……あなたには資格がある。
「…………爆豪勝己。本当に強くなったね。あなたに経緯を評して……普段見せない私のエスコルチアのもう一個を見せようね。」
「エスコルチアの……もう一個?」
「うんそうだよ。……基本的には殺しにしか使わないんだけど……力加減が難しいのよ。コレ。」
「…………。」
私はニィと笑ってみせる。
「あなたになら使える。」
私はエスコルチア・ヴルツェルフォイレを圧縮。限界以上に硬度を上げて圧縮。あれだけあったぷにぷにボディはみるみるうちに細く、それでいて強固になる。それは別の形になり……エスコルチアの鎧とはまた違う……黒く、それでいて機械的なフォルムへ変貌を遂げる。
「……なんだそれ……。」
「エスコルチア・トロッケン。」
「エスコルチア…………トロッケン……だと?」
「うんそうだよ。乾燥した〜とか言う意味。粘度をあげたエスコルチアを引き伸ばしながら圧縮、硬度を最大限まで上げて、伸縮性と剛性を最大限まであげた形態。私の身体の負担を度外視した殺人形態。」
「…………望むところだ。」
「これからだね。爆豪くん。」
楽しいね。爆豪くん。
これ相手にどこまでできるの?
私に教えて?