side傷原流水
「クソ会社、散々がなってから…解放せよ、解放せよ、異能解放、万歳!!」
ズバババッ
鎮圧。
「エンデヴァーさん好きな食べ物とかあります?そこの水炊きすげぇ美味いんですよ。鳥の味がしっかり出てて。重いですかね?腹減ってます?」
「ああ!ダメよシュバルツ!」
スィーッ
救出。
「焼き鳥もいいですよ。ヨリトミのレバーはクセになる。」
「ホークスやん!」
「普通に歩いとうとか珍しか!」
人気。
「どもー」
「ばあちゃん上まで持つよ。」
「ありがとねー。」
介助。
「ホークス2位おめでとう!」
「見たぞ!昨日の!謙虚にいかんと敵増やすだけぞ!」
「敵て。」
「ホークス!ホークス!」
「イエーイ。」
写真撮影。
「あの、息子が大ファンでサインを……。」
「まァ、オシャレなバッグ!いいの?書いて?」
「もちろん!」
「名前は?」
「亮典!」
「サインまで……人気のトップヒーローは大変ですねぇ。」
「…………ふん。」
「エンデヴァーだ。」
「顔コワかー。」
「貫禄というか……圧が強かね……。」
「横の子誰?」
「迷子かな?」
「可愛い〜。エンデヴァー好きなのかな?」
私……傷原流水は今、エンデヴァーと一緒のホークスの地元に来ている。
エンデヴァーの横居たらすっげぇ形相でホークスに睨まれた……。そんなにエンデヴァー好きかね。そんなに私嫌いかね。……だから来たくなかったんですよねぇ。
昨日。
『……え?私がホークスとエンデヴァーと一緒に福岡で脳無の調査ですか?』
『ええ。目撃例が福岡が増えているの。言ってくれるかしら。』
夜遅くに公安委員長からの電話。まぁ出ない訳には行かない。
『……私はいいですけど……ホークスくんが嫌がるでしょ。』
『飲み込ませるわ。貴方の実力を考えてのお願いよ。それに……もし何かあった時が……。』
『……エンデヴァーにってことですよね。ビルボードチャート更新してすぐ負けた。死んだとかなったら世間の目は酷いですから。戦力は多い方がいい……と。』
『はい。お願いします。』
『…………わかりました。何時ですか?』
『時間は……』
というふうに今日は急遽福岡。
福岡と来たらもつ鍋。……どこかのタイミングで食べたいな。美味しいんでしょ?
「おまえサイン貰ってこいって!」
「嫌やし!」
「好きっち言っとったやん。」
「好きやだけど、違うやろ!」
……エンデヴァーのファンの子だ。前に出てくるの珍しい……。
え?行くんですか?
「うわ来とう!こっち来とう!」
「えっウソっ!?ヤバイヤバイ新コスかっけぇ!」
「遠慮などしなくていい。」
エンデヴァーが手を差し出す。
「……違う!」
「違うのか!」
「エンデヴァーはファンサとかせん!媚びん姿勢がカッコイイったい!」
「ガチ勢やったんか……。」
「変わってしもうた!!変わってしもうたよ、あーた!!」
めんどくさっ!偏見ですけどエンデヴァーってあんなファン多そう。
「ハハハハ!そりゃ言われますって。キャラじゃないですもん。あ、もう食べないなら貰ってもいいです?」
「いやしいな。勝手に食え!」
焼き鳥屋。
美味しいですねここ。高級そう。
「欲しいと思ったらどうにも我慢できない性分で…体育祭の後もね、息子さん指名してたんスよ俺。No.2の息子って肩書きがもうほしいじゃないですか。」
ホークスくんからは露骨に無視されてるんでもういいですけど、仕事外のコミュニケーション取らないのは社会人としてどうなんですかね。
「でもまァ、今となっちゃツクヨミが来てくれて良かった。ショートくん仮免落ちてブランドに傷いっちゃいましたからね。」
「雄英出身でもないのに詳しいな。」
「見聞が広いんです。」
「何言ってんですか。仮免試験は公安が関わってるのにアンタが知らないわけないでしょ。」
小声でぼそっと言う。
「チッ!」
「すごい顔。それファンの前でしてみてくださいよ。めっちゃ面白。写真撮ろ。写真。」
私はスマホを構える。
ちなみに私の席はホークスくんの横。横は嫌だろうと思ってエンデヴァーの横の座ろうと思ったらすごい顔された。そっちの方が嫌なんですね。
「いい加減にしろ!こんな話をしに九州まで来たんじゃない!そろそろ本題を話せ。」
「噂の件、ですか?」
「改人脳無。敵連合が持つ悪趣味な操り人形。」
「……砂肝うま……鶏皮パリパリでうま。」
「…………神野で格納されていた数十体をオール・フォー・ワンもろとも捕らえ、それ以降連合に動きはあれど脳無の出現は確認されていない。あれで全部だった、まだあるけどオールフォさんしか場所知らないのどちらかって見方みたいです。」
「貴様、俺にチームアップを頼んだからには何らかしら確証は得ているんだろうな?」
「得てないです。ガチ噂です。」
「会計だ!俺は帰る!!」
「帰るんですか?私も帰りたいです。」
「あんたは帰っていいですよ。エンデヴァーさん、待って下さいよ。聞いて下さい。脳無の目撃談はここだけじゃないんですよ。知らないでしょ?全国でそういう噂が立ってるんです。取り立てて記事にする程でもないけれど……奥様方の井戸端会議で、或いは小中生の下校の会話の中で。」
「どういうことだ?」
「出張に出た時地元の人から聞いたのが最初です。その時は警察とも協力して…混乱を避ける為にコッソリ捜査したんですが何も出ず……で、ちょっと気になったんで個人的に全国飛び回って調査してみたんです。」
本当にホークスくんのこういうところ強いですよねぇ〜。機動力がほかのヒーローとは段違いです。私も被身子ちゃんいなかったら飛び回ってたんですけど……被身子ちゃんほっぽってどっか行け無くなっちゃいました。
「違いはあれど似たような噂話が全く関係ない地域で湧いてました。結果的にはどれも噂でしかなかったんですが、抽象的な見解になっちゃうんですけど、雄英・保須・神野を経て、改人という敵以上に不気味な存在を皆知っているわけじゃないスか。どっかのアホウが不安を煽る目的でホラ吹いて、それが今全国に伝播してるんじゃないかな……さっきの敵、“異能解放万歳”叫んでたでしょ?あれも似たような事で今大昔の犯罪者の自伝が再出版されてけっこー売れてるんですよ。」
……リ・デストロが出版してるやつですね。私も読んだんですけどまぁリ・デストロ節がしっかり効いてて読み応えはありました。……感化はしないですけど。
「恐らく感化されちゃったんでしょうね。社会が不安定な時ほどそういうの売れるってか、はこびるって言うじゃないですか。」
「もったいつけるな!結局何がしたいんだ貴様は!結論を言え。」
「焼き鳥うっま。もっと頼も。」
「あんたのは自腹でお願いしますね?いくつ食うかわかんないんで。…………No.1のあなたに頼れるリーダーになってほしい!立ち込める噂話をあなたが検証して、“安心してくれ”と!胸を張ってあなたが伝えてほしい!俺は特に何もしない!昨日も同じような事言いましたけど、要はNo.1のプロデュースですよねー。俺は楽したいんですよ、本当!適当にダラダラパトロールして、今日も何もなかったとくだを巻いて床に就く!これ最高の生活!」
「…………。」
「ヒーローが暇を持て余す世の中にしたいんです。」
これが私とホークスくんが仲違いしてる理由のひとつ。思想の違い。ホークスくんは事件を無くして暇を持て余す社会にしたい。私は事件なんて無くならないから出来る限り事件の芽を潰して、救える人を救いたい。根底からぜーんぜん違うんですよね。だから意見が合わない。だから好きになれない。普通の人なら同年代で同職場でこんなかっこいい人居たら好きになっちゃうんでしょうか。……考えられない。
「エンデヴァーさん……。」
なんだあの黒いの……飛んできてる……?
「エンデヴァー!ホークス!窓ッ!」
「「!!」」
「お客様、お飲み物……。」
「下がって!お姉さん!」
バリン!!
脳無……窓突き破って入ってきた!
……なんか雰囲気が違う?
「ドレ一番強イ?」
喋った……嫌な感じですね。
「ホークス!避難誘導を!ブラッドロータスは周りの警戒に移れ。何かあったら接敵して構わん。」
「了解。」
「了解!エンデヴァーさんは!?」
「噂ではなかったか、なんとも間の良い奴だ。まァいい、どのみちそのつもりで来た!」
エンデヴァーが脳無の顔面目掛けて拳を突き抜ける。
「嚇灼熱拳……ジェットバーン!」
クリーンヒット。……まぁどうせ死んでないんでしょ?
普通の敵だったら死んでますよ。めんどくさ……。
「来い!俺を見せてやる。」
……さて。私は他になにか居ないか探しますかね……。