side渡我被身子
「SMASH!!」
「甘い。」
ズパァン!
「んぐッ!?」
「先ずは1発。」
流水さんの腹パンが決まる。相変わらず綺麗ですね。
「ゴバッ…………」
「お、1ゲロ。幸先いいねぇ。」
「ちょちょっと!傷原くん!?やりすぎは良くないよ!!」
「うるせぇオールマイト。」
「うるさいですオールマイト。」
「2人とも余裕だね!?」
運動場を貸し切って流水さんと緑谷君の組み手。
ゲロなんてこれから日常茶飯事になりますし……今更注意しても遅いですよオールマイト。
「…ッ………!」
「吐ききったら次ね。まだやれるでしょ?……それともあなたの覚悟は言葉だけだったの?」
「……っ……違います!頑張りますっ!!」
緑谷くんが立ち上がる。
正直今の緑谷くんがエスコルチアの流水さんに一撃与えれるの想像できないです。対人戦闘能力が足りてません。
「緑谷少年!無茶はダメだ!!」
「オールマイト。……見守るって話だっただろ。」
「し……しかし!」
「流水さんは人体のギリギリを知ってるので大丈夫ですよ。」
「…………ダメだ!やりすぎだ!!」
オールマイトが1歩踏み出す。止めようとしたけど……
「オールマイト!……僕やります!かっちゃんに追いつきたいから!!」
「緑谷少年……。」
「へっ。……言ってくれるじゃねぇか!出久!」
たしかに爆豪くんの動きはめちゃくちゃ良かったです。さすが流水さん。
「じゃあ死ぬ気でかかってこないとね?常に考えて。戦場は常にバッドコンディションが付きまとう。バッドコンディションに慣れておく。付き合い方を学ぶ。これだけでも貴方の継戦能力が上がるわ。」
「はい!」
「本気の死闘は今のあなたのコンディションから更に下がる。頭に入れておいて。今のコンディションでもマシなんだと身体に叩き込んであげる。」
「はい!!」
「青春ですねぇ。」
「どこがだい!?これから血みどろゲロまみれの青春が送られようとしているのに!!」
「いいじゃねぇかオールマイト。ハラセンの訓練はゲロ吐いてからが第1歩だ。」
「それはどうかなぁ!?」
「何度もゲロ吐いて。地面に這いつくばって。あんなに小せぇハラセン見上げてからじゃないと……わかんねぇ場所がある。」
「…………爆豪少年。」
「ふーん。爆豪くんもだいぶ分かってきましたね。流水さんメソッドが。」
「んだそれ。…………まぁ。言いたいことは分かる。」
流水さんメソッド(仮名)とは。性格がねじ曲がった人、心になにか抱えてる人、悪い方向に進みそうな人を物理的に正す流水さんの腹パン教育法です!実際私も何度も腹パンされてるので腹筋バキバキです。……実際身体が出来上がってから些細なことじゃ悩まなくなりました。自分の信念を貫くのが大事です。
ドパァン!
「ゴバァッ!!」
「おー……空中でゲロ。芸術点高いですね。」
「足が宙に浮いてる証拠だ。バランス取れねぇ場所に自分から行くのは悪手だ。」
「流水さんがそんな隙見逃すわけないですからね。」
「……君たち冷静だね。私はヒヤヒヤしてるよ。」
「だって……そろそろ流水さんのギアが上がりますよ?」
「……え?」
「まぁ厳密に言うと緑谷君が動けなくなるんですけど。」
「あ?……どういうことだ?」
ズパァン!
ドパァン!
「ぐっ……くそっ!?」
目に見えて動きが悪くなってる緑谷君。……思ったより早かったですね。
「緑谷少年……?動きが鈍く……!?身体がなにかあったのか!?」
「違いますよオールマイト。流水さんの攻撃貰いすぎなんです。」
「貰いすぎ……?やはり体調が優れないのでは……!」
「黙って聞けやオールマイト!……んで?説明しろや。」
あれ?爆豪くんは経験済みのはずですけど……まぁいいか。
「流水さんは相手の弱点、隙をどんどん見破ってそこに的確に致命傷を与えてきます。実際何度もボディを開けられて腹パン叩き込まれてますよね?」
「……あぁ。緑谷少年が心配になる。」
「はい。なので流水さんの攻撃を貰いすぎちゃうと、身体が反射的に強ばってしまうんです。……的確に言うと恐怖してしまいます。死ぬかもしれない一撃を何度も何度も与えてくる訳ですから……心は無事でも身体が負けちゃいます。対応しようといろんな策を講じるんですけど、身体が負けちゃってるからどれも通じないように感じちゃいます。」
「……んであの時…………そういうことかよ。」
「身体が……負ける。」
爆豪くんはピンと来たようですね。
「なので、流水さんの攻撃に対して身体が強ばってしまいます。……つまるところ全ての攻撃がワンテンポ遅れるんですよね。流水さん程の速度で戦闘を行うのに、ワンテンポ遅れる=詰みなんですよ。なので……。」
ドパン!バキィッ!……ドゴッ!
「ぐふっ……がはっ……ぐぇっ……ごええぇぇえ……」
「躱せていた攻撃も、防げていた攻撃も、全部クリーンヒットするようになってあんな感じになっちゃいます。」
「…………職場体験の時の俺だな。」
「あの時の爆豪くんはまだ反撃できてたので、相当心強いですよ。自信もってください。」
「君たちは……傷原くんが怖くないのか。」
「「怖くないです。」ねぇよ。」
「!!」
「私はあの攻撃1発1発に愛を感じてます。まだ学べることがある。強くなれる。何度も何度もフィードバックできます。流水さんとの戦闘は本当にためになります。……実際なってますしね。まだ勝てないですけど……いずれ絶対に勝ちます。」
「アレが無かったら俺はもっと荒んでた。全部に責任感じてたかもしれねぇ。……俺はハラセンに感謝してる。多分あのタイミングで俺を叩き直すのが最良だった。今ではそう思う。……改善しきれてるかと言われたらわかんねぇが。」
実際に救われた私と、実際に叩き直してもらった爆豪くんの素直な感想。オールマイトは少し悩んだ後、何かを決意したみたいだ。
「……君たち……。わかった。緑谷少年!私もできる限りサポートをする!全力で学ばせて貰うんだ!」
「オールマイト!……はい!」
「オールマイト!精神面は貴方ですよ!私は身体を正すことしかできませんので。」
「わかってる!任せるんだ!」
「……やりゃできるじゃねぇか。」
「爆豪くん。次緑谷君の相手貴方ですよ?」
そうなのだ。流水さんが言ってた手伝ってもらうというのは……緑谷君の相手をする人になってもらうことらしい。流水さんだけだと癖になる……っぽいので色んな人と戦うことが大事だと……。
「あ?渡我はしねぇのかよ。」
「やってあげたいのも山々なんですけど、壊理ちゃんのことで今日少しやることがあるんですよね。」
「……そうかよ。じゃあ出久の相手俺には任せろ。」
「お願いしますね。……おぉゲロ。」
「もう出るもん出切ったんじゃねぇか?」
「…………やっぱり流石に心配になるな。」
男に二言は無いんですよ。オールマイト。
「もう終わり?」
「まっ…………まだです!!もう1本お願いします!」
「根性だけは買うわ。」
バキィッ!
「ぐはっ!?」
「……え?感想ですか?」
一旦終了。流水さんと私が壊理ちゃんの所に行く事になってるので、後の場はオールマイトに任せる。
「ええ。言語化が得意なんでしょ?聞いてみようかと思ってね。」
「……傷原先生の出来ることの幅を見せつけられた気がします。戦闘経験、対人経験の足りなさを一方的の押し付けられました。」
緑谷くんは水を1口。喉乾いてるでしょう。お腹の中出し切りましたもんね。
「出久。ハラセンすげぇだろ。俺はハラセンにお前よりも前からシバいて貰ってる。この差はデケェぞ。」
なんで爆豪くんが自慢気なんですか。
「うん。本当にすごい。僕の思考外からどんどん手が出てくる。手札の数が違いすぎる。」
……む?
「それはちょっと違いますよ?緑谷君。」
「え?……渡我……さん?」
「流水さんは手札が多いんじゃないんです。流水さんの場合デッキです。流水さんは相手の動き……手札を見ながら自分のデッキを引いて、手札を整えながら戦います。いらない手札はデッキの下に。要る手札はキープ。使った手札も山札の下。だから常に手札が多いように見えるんです。確かに動きのレパートリーは膨大ですけど……。それ以上に通用しなくても出来ることの中に入ってるからいつでも取り出せる。いつでも使えるのが流水さんです。」
「……被身子ちゃん。ちょっとだけ照れるや。」
照れてる流水さん。かぁいい。
「手札じゃなくてデッキ……手札を整えながら……なるほど!すごくしっくり来た!凄いね渡我さん!」
「そりゃフィアンセですから。」
「惚気かよ。」
そんなこんなで一旦こちらは中断。私達は壊理ちゃんの元に急ぐ。爆豪くん、オールマイト。後はよろしく頼みますね。