side傷原流水
「筋力は何度も筋繊維を壊して直してのループで強くする。個性に耐え切る身体。それを作るのはあなた以外の誰でもないわ。ハイ、休憩終わり。爆豪くん。もう1セット行けるわね?」
ヂューーーーーッ
「ぷはっ……誰にもの言ってんだァ!?あんたと組手する数倍楽だぞ!」
「ハァ……ハァ……かっちゃんとの差を感じる……。ハァ……僕ももっと強くならないと!」
「個性なしの私に勝てるようになってから言ってください。」
「ぐっ……ごめん。」
「みんな!飲み物もタオルもまだあるぞ。足りなくなったら言ってくれ!」
あれから数日。何度も試行錯誤と基礎能力向上に務めた。朝のランニング、筋トレに始まって午後の組手。私だけじゃなくて爆豪くんと被身子ちゃんにもやってもらってるけどいい刺激になってるみたいだ。
「!……緑谷!少し個性緩めたね!?」
「くっ……ハイッ!すみません!!」
「あぁ!?出久ゥ!俺のことナメてんのかぁ!?」
BOMBOMBOM!!
「ぐっ……くっ……ごめんかっちゃん!!」
「てめぇ後ろがガラ空きだ!!」
BOBOBOMM!!
「うわぁっ!?!?」
緑谷くんが吹き飛ばされる。
「爆豪くん1本。これで10対5で爆豪くんの勝ちね。」
「ハァ……ハァ……クソッ……少しやりづらくなって来やがったな。」
爆豪くんが緑谷くんを起こしに行く。
「くそっ……まだ反射と対応が足りない……ハァ……ハァ……もう少し距離をとって……ダメだ。それじゃ機動力の違いが……。」ブツブツブツブツ……
「出久。とっとと休憩しろ。ハァ……ハァ……次は渡我の相手だろ。」
「ハァ……ハァ……ごめん。」
「緑谷少年。身体は痛まないか。違和感は?」
オールマイトが水を渡す。
「ハァ……ハァ……ごくごく…………ハァッ……大丈夫です!ただ……明らかに前より成長出来てます!」
「ならいい。最後の10本勝負だぞ。そろそろ白星取ってやるんだ!」
「わかりました!」
「その前に反省会。まずは…………」
私が行ったことは主の2つ。
1つは私以外の戦闘スタイル……高機動高火力で頭が回る上、継戦能力に長けた爆豪くんと、個性はほぼ無いに等しいものの、対人において厄介な武器攻撃と捕縛布による拘束、人の視界を外す等独特な戦い方を得意とする被身子ちゃん。それをどちらもある程度できる私の3人による10本勝負のローテーション。緑谷くんには常にワンフォーオール25%を維持するように伝えている。
他のふたりには過度に傷つけなければ何してもいいと伝えてる。出来ること全部する。お互いに。一応被身子ちゃんの武器は刃にガードを付けて、切れないようにしてる。
力の維持と、対策の上から捻り潰される莫大な経験値で緑谷くんを徹底的に追い込むのが目的。初めてまだ数日しかたってないが、25%の維持が割と容易になったように見える。
そろそろワンフォーオールの出力をあげてもいいかも。
もう1つは今している反省会。
「緑谷くんはやっぱり咄嗟の目潰しに弱すぎる。」
「……そうですよね。どうするかまだ対策が……。」
「対策してみろ。その上から目潰ししてやる。」
「爆豪くんの目潰しは本当に視界全部潰されますからね。そのうえで閃光弾(スタングレネード)も警戒しないといけませんから……。」
「……よくできた崩しだな。」
「オールマイト級のパワーだったりハラセンみてぇにそもそも当たんねぇ奴以外だったら全然機能する。」
「くっ……やっぱり速度とパワーか……。」
「ワンフォーオールの出力を少しづつあげていきましょう。」
「緑谷少年はあまり無茶をしないようにな。何かあればすぐに言うんだぞ。」
「はい!」
こういう風に少しづつ悪かった点を潰していく。何度も何度も頭を揃えて相談、足りない事の指摘。そしてそれを出来る限りアウトプットしていく。これの積み重ね。オールマイトに出来ないこと。他人の理解と言語化。曖昧な伝え方はしない。
もちろん爆豪くんや被身子ちゃんにもしっかり指摘していく。それが手伝ってもらってるお礼でもある。
「爆豪くん。最後の方少し雑だったね。もう少し個性の制御考えようか。」
「よく見てんなぁ!?……わぁったよ!俺だって今色々試してんだ!」
「いいことだね。被身子ちゃんの番に相談に乗ってあげよう。」
「うす。」
「じゃあ始めますよ〜。緑谷君。」
「どこからでもお願いしますッ!」
「……なるほど。それ以上の火力となるとリスクが怖いわね。でもそういうのはもしかしたらエンデヴァーの方が上手いかも。冬のインターン行ってみれば?」
「あ?エンデヴァーが?……受け入れてくれるかどうかわかんねぇぞ?」
「私から声掛けましょうか?」
「ぎゃっ!?」
おぉ……薙刀の柄で脛をぶん殴って足止め……痛そぉ〜……。
「うわっ!」
その隙に捕縛布で足縛って……
「はいっ!」
ぶん投げて地面に叩きつけて……
「ぐえっ!」
「これで終わりです。」
武器首に当ててチェックメイト。綺麗だねぇ。
「……渡我……あれで個性なしって信じらんねぇ。」
「まぁ……昔は私。今は相澤先生と体術バトルしてるからねぇ。経験値が違うよ。」
「……ゼッテェ追いつく。」
「いい事じゃん。はーい被身子ちゃん10本目。これで10対4だね!」
「ふぅ…………ありがとうございました。増強型の人間と戦ってる時が1番楽しいです。」
「くっ……相変わらず何処から攻撃が飛んでくるか分からない……。」
「……緑谷君は目線が分かり易すぎます。もっと色んなところ見るといいですよ。」
「ありがとう……渡我さん。」
「出久。渡我。水とタオルだ。一回休め。」
爆豪くんが2人に水とタオルを持っていく。気遣い出来るいい子のなったねぇ……。
「傷原くん。君は渡我少女をどうしたいんだ。暗殺者にしたいのか?」
オールマイトからの質問。
「どうなんでしょうか。彼女なりに色んなところから色んな技術咀嚼して自分のスタイル作ってるので、多分あれが性に合ってるんだと思いますよ。」
「……じゃあ天性の才能を開花させたんだな。対人訓練で。」
「……だと嬉しいですね。生徒の選択肢が増えるのはいいことです。」
「…………君という人は。先生として負けてられないな!」
「……先ずは授業をしっかりやりましょうね。」
「うぐ…………痛いところを突く。」
「オイ反省会するんだろ!」
「今行く。」
「緑谷少年!今のは視線誘導に釣られすぎだな!そして……」
この反省会で今日は終わり。
この積み重ねがきっと緑谷出久の糧になると思う。
「師匠!今日もありがとうございました!」
「…………その師匠呼びどうにかならない?」
「いえ!オールマイトで言う僕にとってのグラントリノなので!」
……褒められてる気はする。
「…………まぁいいけどさ。お疲れ様。しっかりクールダウンと食事睡眠。体のメンテナンスをしっかりすること。」
「はい!」
「爆豪くんもまたね。」
「おう。」
いつの間にか私は緑谷くんの師匠に。……弟子か……弟子かぁ……。
被身子ちゃんがズイッと視界に入ってくる。
「私が1番弟子ですよね?」
「そうだよ?」
「んへへ……。」
「帰ってお風呂入ろ。汗やばいわ。全身ダラダラ。」
「汗?………………お風呂行きましょう。」
何……?雰囲気が……
「どうしたの?」
「なんでも?」
その日の夜。私の電話に通知が来た。気付いたのは次の日の朝だけど。
『戦争の日が決まった。時期は……』