side渡我被身子
「…………。」
「流水さん?」
流水さんとの登校中。流水さんは難しい顔をしていた。
……というかここ1週間くらいずっと難しい顔をしている。悩んでる……じゃなくて心と葛藤してるような……何かの覚悟だと思う。緑谷くんの訓練は滞りなく……というかいつも以上に負荷を上げてるので大丈夫……。仕事に私情を挟まない人なのでそこは気にしてないが……日常生活にまで影響が出てるとなると……心配です。
「あ……被身子ちゃん。なんだっけ。」
「……最近大丈夫ですか?……何かあれば言ってください。」
「ん……ありがと。」
流水さんは仕事のことは私には言わない。私も聞かない。……言えないことも多くあると思うから。……でも
「じゃあ……私は今日やることあるから。また迎えに来るね。」
「……。」
校門前、流水さんがその場を離れようとする。
「え……?被身子ちゃん?」
私は流水さんの手を取っていた。
「……流水さん。私はあなたの外の仕事の日は何も聞きませんでした。言いませんでした。……でも今回は何か違います。」
「…………。」
「何かありましたか?喋ってください。楽になれませんか……?」
「…………ごめん。」
そうだと思っていた。きっと……私に関係させたくないんだと思う。私が知ったら……大切なものが崩れるとか……壊れるとか。何か不都合があるんだと思う。…………だったら。
「…………流水さん。」
引き寄せて……ハグ。
人の目なんて気にしてられるか。私の愛する人が苦しんでるんだ。私のヒーローが悩んでるんだ。……私のヒーロー。私だけのヒーロー。救えるのは……私だけでありたい。あなたのヒーローが……私だけだと言わせたい。
「被身子……ちゃん?」
「流水さん。私口があまり上手くないです。こういう時。なんて言ったらいいかわかんないです。……でも流水さんにそんな苦しい顔して欲しくないです。」
「……ごめん。」
「私はあなたの味方です。あなたが何をしていても。何があっても。……犯罪を犯していたとしても。背負える咎は……私も背負います。……ふふっ。……だって私渡我被身子なので。」
「………………ふふふっ。ジョークのつもり?」
「サーのところで学んだものです。」
「……。」
流水さんも私に抱きついてくる。力はいつもより強い。
「被身子ちゃん。」
「……はい。」
「帰ったら……今日は……被身子ちゃんの好きにして。」
白昼堂々……要望されたのは初めて。……そこまで辛いことなんですね。
「…………いいんですか?」
「うん。……そんな気分。」
「………………わかりました。絶対に生きて帰ってくること。いいですね?」
「……うん。約束する。」
「……待ってますよ。」
どちらともなくハグを解く。
「行ってきます。被身子ちゃん。」
「行ってきます。流水さん。」
最後まで流水さんの顔はしっかり見えなかったけど……
きっと笑顔になってくれてることを信じて。私はうるさく叫んでる同級生女子への返答に悩むのでした。
side傷原流水
「……少し遅れちゃったな。」
何故か電車もバスも交通機関が止まってた。……泥花市へは徒歩。息のある人は回収したい。
だが……ほぼほぼトランペットとキュリオスの駒になってるから……あんまり人は居ないね。
BOBOBOBOBMM!!!
爆発音!?……ってことはキュリオスはあっちか。急行。エスコルチアは標準装備。最速で現着。
嫌な予感がする。キュリオスの個性は地雷。触れたものを爆弾に変えれる。でも。だとしてもあの爆発量は何?まるでなにかに……圧縮されたみたいな。
「キュリオス……!」
キュリオスが傷だらけで倒れている。
駆け寄る。周りに人影は無い。地雷のキュリオスの周りに人がいない?……そんなわけは……。……黒い炭?なんだこれは……。
キュリオスはまだ息がある……が……これ以上の怪我は……。
「おや?……まだ仲間がいたのか。」
後ろ!?いつの間に……
「この声……白灘睦月ッ!!」
無傷の白いスーツに身を包む男……白灘睦月。白ちゃんの弟。
「?俺の名前を知ってるのか。……どこかで会ったか?…………いや。異能解放軍だかなんだか知らんが……そんな奴に名前を教えた事は無い。」
ベストジーニストらが動向を探っているのだが全くしっぽを出さない男。……だがここに居るのが唯一の証拠だ。
「白灘睦月。敵連合に肩入れしていたのは……事実のようですね。」
「……?お前はさっきからおかしな事を言う。敵連合に肩入れしているのは当然だろう。俺は敵連合の一員だからな。」
「…………であれば。ここで拘束するのは必然ですね。」
「やってみろ。異能解放軍のモブが。」
私は血を伸ばす。簡易的な拘束手段。
白灘睦月が手をこちらに向けると……
BOBOBOMM!!
爆発!?爆豪くんみたいな個性……?
「っつぁー……いてぇ……クソッ……こいつも弾切れかよ。」
白灘睦月の体から光の粒子が漏れた。その粒子は大きくなって黒い炭になってる地面に落ちる……ただ……まるで人のようなシルエットが……
「…………それは……!」
「あ?そこにいる青肌の雑魚の駒だよ。爆発するなら弾として使えるじゃねぇか。結構使い勝手いいぜ?」
「…………なるほど。身体にしまえる個性……ですか。」
じゃあその炭は……人間ってことですか。
「察しがいいな。そうだよ。俺の個性は触れたものを身体の中のセーフティにしまうことが出来る。取り出すことも自由だ。入れた奴らの行動制限は俺次第だ。」
敵連合の足取りがつかめなかったのも!全部こいつの身体の中に住んでいたのならば説明がつく!
キュリオスが地雷化した人間をしまう事で、半強制的に相手の戦力を奪って自分の攻撃力にした……ということか。頭が回る。
「……対応しきれないものではないですね。」
「……ふん。だが来るのが少し遅れたみたいだな。……マキアが来る。」
ズゴゴゴゴ……
地震!?マキア!?
地面が割れて、大男が顔を出す。その余波で周りの建物が崩れる。
「!?くっ!」
ガラガラガラ……
「マキア。俺だ。死柄木のところまで乗せていってくれ。」
「……アンコシャスか……わかった。」
「…………流石に死んだか。」
ドスドスドス……
音が小さくなる。大きな瓦礫を退かす。
「死ぬわけないでしょ。こんなんで。」
ここからどうするか…………私一人であれを止める?……できるわけが……。
「…………流……水……ちゃん?」
「キュリオス!目が覚めましたか!?」
「……ダ……メ…………行っちゃダメ。…………リ・デストロの命令……だから……。」
「……え?なんで!」
「…………。」
「キュリオス!!なんで!」
返事は無い。息はあるから気絶しただけ。
…………もしやリ・デストロは……この戦いで……!!
「あんな化け物が行ったら!尚更まずい!!」
『それでは……君への罰は……。私が居なくなったあとの解放軍を君に任せたい。』
『だからこそ……私は敵連合と戦わなくてはならない。君を傷付けた。それでいて解放軍を脅かす悪魔を。』
『誰でもいい。1人でもいい。何かあった時は救ってあげてくれ。……私からの願いだ。』
足が止まる。
きっと……リ・デストロはこの戦いで異能解放軍が終わることを危惧している。敵連合に負けることなのか……リ・デストロが死ぬ事なのか。
どちらにせよ自分の意思を残しておきたいのだ。後世に。キュリオスが私を止めようとしたのも……きっとその思惑があっての事。
行きたい。助けに行きたい。……でも……約束が……!
「ぐ…………ぐうううううっ……」
『私は……君にね。魅了されてしまったんだ。』
『私たちが分かり合えるとは思わない……が、私の心が君の戦いを見て美しいと思ってしまったんだ。私は君とは戦えない。』
『……あの場にいたキュリオスもきっとそうだったに違いないがね?』
「…………フーッ。」
躊躇を捨てろ傷原流水。
分かりましたリ・デストロ。貴方の意思を継いだ女性を助けます。それがあなたの意思ならば。…………ですがこのまま楽に終われるとは思わないでください。
ピピピッ……
prrrr……
『こちらベストジーニスト。済まないブラッドロータス。白灘を見失って……』
「泥花市です。ベストジーニスト。」
『……何?』
「泥花市に白灘睦月の姿を確認しました。私は別件で手が離せません。」
『……なぜそこにいたのかはあとから聞く。情報はありがたく受け取らせてもらう。』
「お願いします。なるべく戦力を多めに連れていった方がいいかもしれません。」
『……わかった。』
私はキュリオスを連れ、その場を後にした。
「……異能解放軍の邪魔はしないといいましたが……敵連合の邪魔はしますよ?リ・デストロ。」
私は経過を見るだけだ。
キュリオスは私が救います。