side傷原流水
「リ・デストロが負けた…………?」
「しかもヒーローに?」
「………………ええ。」
伝えなくてはならない。敵連合に協力した可能性があること。ヒーローに負けたこと。敵連合は雲隠れしたこと。…………ほかの幹部の消息が分からないこと。
「馬鹿な……異能解放軍が……。」
「…………。」
「キュリオス様ッ!…………理想様ッ!」
「「…………。」」
二人で目をそらすことしか出来ない。キュリオスは戦ったのだからまだしも……
「どうしてッ!力を貸してくれなかったんですかッ!!」
「我々を助けるよりッ!リ・デストロを!助けて……欲しかった!!彼がまだ生きているなら我らはっ…………まだ戦えるのに!」
私に対する激昂。
「……私は四ツ橋社長の意思に従ったまでです。」
真っ直ぐ伝える。
「そんなはずが無いだろう!!解放者なのだぞッ!!!」
「いえ。四ツ橋社長の言葉通りの行動です。」
曲げてはいけない。
「ふざけるんじゃないッ!そんなこと言うわけがッ!」
「…………私は異能解放軍ではないです。仕事柄何人も敵を殺してきたこともあります。……ですが、友の約束を守るくらいの人情はあります。」
私は託された。この人達の命を繋げ……と。
「…………っ……キュリオスさ…………ま……」
「事実よ。リ・デストロは、私たちが大切だから……流水ちゃんにみなを助けて欲しいってお願いしてたの。……助けれたのは3人だけどね。」
「…………そんな……。」
「我々の理想が……全てが……。」
2人とも項垂れている。
それだけ怒れるなら……怪我は思ったより浅そうですね。
気月さんとは違い、2人の傷は割と浅め。火傷と打撲痕。荼毘と……誰だろ。戦いが想像を絶するものだったと理解できる。
…………どれだけ準備して……どれだけ技を磨いたのか分からないが……きっと彼らにも勝算もあったのだろう。…………四ツ橋社長はこの人達には弱さを見せなかっただけで……勝利を感じさせてくれたんだろう。
「「…………。」」
2人とも……何を考えてるか分からないけど……。
「とりあえず3人には……ここで一旦療養してもらいます。家賃も3ヶ月は私が払います。」
「えっ!?……そんな……流水ちゃんに悪いわよ……。」
「いいです。3人3ヶ月なんてたかが知れてるので。それよりも……そのあとの生活をどうするか考えておいてください。仕事を探すのか。四ツ橋力也の幻想を追うのか。この部屋……3人分取ってるので3部屋ですが、ここを出るのも居座るのも自由です。」
鍵を3つ出す。
「この部屋と両隣の部屋の鍵です。……もちろん私はスペアの鍵を持ってます。定期的にあなたたちの傷の様子を見に来ます。食材と日用品の3ヶ月分ですが……1週間毎に補給に来ます。どの部屋に誰が住むかは決めておいてください。食材、日用品は部屋に入って右手のタンスに入れておきます。既に1週間分は入ってるので後で確認してください。」
prrrrr…
電話だ。……私のだな。
「……そういうことなのでお願いしますね。」
「……わかったわ。任せてちょうだい。」
「「…………。」」
…………どうなるんでしょうか。
「では。一旦失礼しますね。」
私は鍵を置いて部屋を後にする。
通話履歴を見る。
『不在着信 ベストジーニスト』
…………はぁ。なんて言えば良いんでしょうか。
……雨……降ってきましたね。……めんどくさい。
「はい。別件で手が離せなくて。……まさかそんな事になってるなんて。」
帰り道。コンビニで買った傘をさしながら歩く。マンションの位置は少し遠いが……全然通える距離だ。
『なるほど。変に詮索して済まない。……敵連合どころか……まさかリ・デストロが居たとは。予想外の戦闘だったが…………なんとかなって良かった。』
「エッジショットのおかげですね。」
『ああ。全くだ。エッジショットやシンリンカムイがいなければ私はきっとヨレヨレデニムになってしまう。』
「ヨレヨ……なんですかそれ?」
『気にしないでくれ。』
時々よくわかんないこと言うんですよね。ベストジーニスト。
「白灘睦月はどうですか?」
『我らが突入した頃にはもういなかった。今現状だと、リ・デストロが敵連合を逃がしたと見ている。』
「…………。」
……やっぱり。
『どこで知り合ったのか……どこで協力関係を結んだのか。分からない……人影すらほぼなかった。怪我人多数。死傷者多数。行方不明者多数。それも市全体で…………だ。』
それだけ大きな戦い…………もはや戦争ですね。
「……私も合流出来れば良かったですが……。」
『それはそうだが……君もできることをやっていたのだろう。深くは追求しない。公安にも言える仕事と言えない仕事があるだろうしな。』
「……ありがとうございます。しっかり怪我を治してください。」
『ああ。わかった。』
ピッ…………
隠し事。……絶対にバレてはいけない隠し事。
はぁ……もう最悪。
引き受けなかったら良かった。
…………前に人影……誰?
side渡我被身子
「……雨ですか?」
今日の訓練中。最後の1本ってところにオールマイトが割り込んできた。
「ああ。早めに帰った方がいい。何があるか分からないからね。体を冷やしてはいけない。」
「ハァ……ハァ……わかりました…………。」
「フーーーーッ……わぁったよオールマイト。」
2人は良いですけど……
「でも私流水さん待たないと……。」
「うーん……一旦寮で待っておくかい?私から相澤くんには一報入れておくよ。」
「…………そうしときます。」
まだ小雨。寮にお邪魔して待たせてもらうことに。変えの服とか持ってないので……そのままですけど。
「渡我が寮にいるの珍しいね!トランプとかする?」
「ボドゲあるよボドゲ!」
「渡我ちゃん勉強教えて〜。」
相変わらずの騒々しさ。……だいぶ慣れましたけどね?
「ちょっと!一斉に来ないでください!私一応流水さん待ってるだけなので!」
「いいじゃーん時間潰そうよ!」
「その前に三奈ちゃんはお部屋を片付けたら?」
「あとからする〜。」
時間潰す……片付け……そうだ。
「ちょっと一回席離れてもいいですか?」
「ん?いいよ〜。」
「ありがとうございます。」
私はみんなから距離を取って電話。
相手はパパだ。
prrr……
ピッ
『おや?被身子から連絡なんて珍しいね。』
「はい。少しお願いがありまして。」
『お願い……?いいよ。聞ける範囲で聞こうか。』
「ありがとうございます。…………流水さんのママさんのお墓に行きたいです。」
『…………ママの墓……に。』
「はい。すぐじゃなくていいので……そろそろ流水さんのママさんに挨拶しておきたいなって。」
流水さんが以前言っていた、パパの気持ちの整理の時間が〜みたいな話があったのを思い出しました。私もそろそろお墓参りしておかないといけないですしね?
『…………。』
長い沈黙。気持ちの整理がまだ着いてないんでしょうか。
「難しいですか?……流水さんも行きたがってましたよ?」
『…………違うんだ。』
「……え?何がですか?」
side傷原流水
雨。私は目の前にいる人に釘付けになった。
私みたいに白くて長い髪。季節に合わない白いワンピース。彼女は雨の中だというのにも関わらず、個性で作ったのであろう……水の人形と踊っていた。
顔は見えないが……異常だ。
近付いてみるとその人は濡れていない。本当に楽しそうに踊っている。
顔が見える。
……私に似てる?
「…………遅かったわね?傷原流水ちゃん?」
side渡我被身子
「違うってなんですか?」
『…………。今から言うことは流水には内緒だ。……頼む。』
「内緒……?なんで……。」
『実は……傷原操水(きずはらあやみ)さん……流水の生みの親なんだが……彼女の死体は……見つからなかったんだ。』
「………………え?」