side渡我被身子
「……ん。」
「おはようございます。流水さん。」
昼過ぎ。2時間くらいの睡眠で流水さんは目を覚ました。
「……おはよ。」
「流水さん。熱測りますね?」
「…………ん。」
昨日の夜より……話してくれるようになった。……なにかあったのかな。
熱はだいぶ熱が落ちた。まだ少し熱いですけど。
流水さんは何かを見つめている。……私たちの婚約指輪。寝室に置いてるんです。
「……何かありましたか?」
「…………幸せだね。」
「…………え?」
「うん…………幸せ。……ずっと…………幸せだったんだね。……私。」
「……流水さん?」
流水さんは婚約指輪を見つめたまま語り出す。
「分かんなくなっちゃったんだ……自分の感情が。…………私が……空っぽだって思っちゃった。」
「そんなことないです!」
流水さんの手を両手で包む。
「え……?」
流水さんと目が合う。
「流水さんは……空っぽなんかじゃないです。……貴方の愛は……優しさは私が1番感じてました!嘘じゃないです!!」
「被身子……ちゃん……でも!」
「私が……流水さんに会えなかったら…………今の私じゃなかったかもしれません。」
「!…………。」
「流水さん。胸を張ってください。あなたは私を救ったんです。愛してくれたんです!それはきっと……流水さんの心が本当に空っぽだったら出来ないです。……貴方の心に……名前がつけれてないだけです。」
私の今の精一杯の言葉。愛を囁くより何倍も難しい。それでも……私は流水さんを救いたい。
「名前が…………つけられてないだけ。」
「はい。流水さん。あなたは……本当に優しい人。それだけじゃない。強くて美しい人。」
流水さんを抱きしめる。
「私の流水さん。……私は…………あなただけの私です。何してもいいんです。何思ってもいいんです。少しづつ……少しづつ私と勉強しましょう?間違っても……いいんです。貴方の……信じられることはなんですか?」
「信じられること……?……私の……私の被身子ちゃん。」
流水さんが抱きしめてくる。
「…………私だけの被身子ちゃん。……いいの?……我儘……なんだよ?」
「はい。貴方の渡我被身子です。もっと……もっと欲してください。私を。貴方の…………心に素直になって?」
「……素直…………まだ少し怖いや。」
「……。」
流水さんを強く抱きしめる。
こんなに弱ってる流水さん……誰が。……誰がやったんでしょうか。
「被身子ちゃん。ちょっと苦しいよ?」
「流水さん。昨日の夜……何があったんですか?」
「…………何も無かったって言っても信じてくれないんだよね……?」
「はい。私は流水さんの1番の理解者ですから。」
絶対に誤魔化させません。
「……被身子ちゃん…………あのね?……私ママに会ったの。死んじゃったのにね?」
「ママさんに……?」
昨日……パパが遺体が無くなったって言ってた人。事故で亡くなったはずだって……聞いてます。……会った?
「敵連合の関係者だった。…………すごく……嫌な気持ちになったの。」
生みの親が敵対している敵連合だった。…………相当苦しいでしょうね。流水さんは特に。
「その人から言われたの。私の子なんだから同じくらい薄情な子なんだって。……あなたのその気持ちは……薄っぺらいって。……妙に信憑性があって。……信じちゃって。」
「流水さん……そんなこと……」
「ううん。……私心がおかしくなっちゃってたのかも。だからね?……被身子ちゃんに謝らなきゃって。……今までの私の言葉が薄っぺらいものだったら……騙してたことになるって。それだけは……本当に嫌だった。」
あの謝罪はそういう……。
「…………。」
「でも謝ってる時に……被身子ちゃんと離れることの方が嫌になっちゃって。……もうめちゃくちゃだよね。私でも何言ってるかわかんなかったもの。」
「……そうですか。そんなことが……。」
「……うん。……ごめんね。」
私の肩濡れてる。……流水さんが泣いてる。
流水さんの頭を撫でる。
きっと今私すごい顔をしてる。
流水さんの心を踏みにじった人を。流水さんの気持ちを痛めつけたその人を。私は……
「流水さん。私……流水さんの事を全く知らないその人を絶対に許せないです。」
「でも……私のママだよ?」
「それがなんですか。20年振りなんですよね?……今の流水さんを知ってる私の方が偉いです。」
「……ふふっ…………なにそれ。」
笑った。笑ってくれた。
「私……強くなります。もっと。もっと。流水さんが悩まなくても良いくらいに。」
「…………被身子ちゃん。うん。私のために……ありがとう。」
「はい。流水さんのためです。流水さんが好きだからです。愛してるからです。……流水さん以上の人なんて居ません。」
「あぁ……私って本当に…………もう……怖くないや。」
「流水さん?」
流水さんがハグを解く。私も解いた。
流水さんの顔がまっすぐ私を見つめる。目が真っ赤じゃないですか。
「被身子ちゃん。ありがとう。私間違ってた。……不安だったの。私の愛が相手に伝わってるか……分からなかったの。相手の一方通行だって思っちゃったの。何も返せてないって……何も無い私に返せるわけないって……決めつけてた。」
「……はい。」
「でも私……夢を見たの。嫌な夢。……でも誰かに助けられた気がしたんだよね。…………暖かい。それでいて……優しい。…………多分誰かって無くて。私に関わってくれてる人みんなから……私の腕を引っ張ってくれてる気がした。…………1人じゃなかったって。私……ちゃんと返せてるんだって思えた。被身子ちゃんのおかげだよ?」
「……馬鹿ですね……流水さん。あなたが1人なわけ無いじゃないですか。どんなに遠くに行っても私がくっついてきますよ?……あの指輪は……そういう契約です。絶対に逃がしません。」
2人で指輪を見つめる。
「私……被身子ちゃんのこと信じれなかったんだよ?」
「はい。私が流水さんの事信じてるので大丈夫です。」
「最初は……被身子ちゃんを助けるために打算的に付き合ったんだよ?」
「今は違いますよね?」
「……自分の気持ち。全然分かんないのに?」
「私は分かります。流水さんからどれだけ注がれたと思ってるんですか?」
「私もっともっと……被身子ちゃんに求めちゃうかも。嫌なことも……やりたくない事も。」
「ばっちこいです。私の事やわな女だと思ってます?」
「最後だよ……?もう本当に止められない。言葉にしちゃうから。身体が自覚しちゃうから。心が……理解しちゃうから。嫌だったら言って欲しい。」
流水さんに強く手を握られる。
「頑固ですね?言いたいことあるなら……私の目を見て言ってください。」
流水さんが私をまっすぐ見つめる。
「…………被身子ちゃん。好き。」
「……はい。」
「……愛してる。」
「はい。」
「離したくない。……離せない。この気持ちが恋だって心の奥から言える。信じれる。私……被身子ちゃんが心から好き。被身子ちゃんの為じゃない。……私が好き。私の我儘。」
流水さんに抱きしめられる。
「離さないでください。どんな辛い道でも。どんなに厳しい環境でも。一緒に居ます。一緒に……ずっと。」
私も抱きしめ返す。きっと流水さんはこれを求めてるから。
「……ありがとう被身子ちゃん。……あなたが居たから……今の私があるんだよ?」
「ふふふっ。お互い様ですね?」
「……そうだね。似たもの同士だ。」
「お揃いですか?……もっと嬉しいです。」
「お揃い……ふふっ。そうかも。」
どれくらい抱き合ったでしょうか……流水さんがぽつんと一言。
「……被身子ちゃん。お風呂行きたい。」
「昨日から入ってませんもんね。」
お風呂沸かさないと……
「身体洗って欲しいな。」
「〜〜!いいですよ!今すぐ行きましょう!お風呂沸かしてきます!」
流水さんからの我儘!嬉しい!恥ずかしそうに顔赤らめてるのもポイント高いです!!
「うん。待ってる。……いや。」
「……どうかしました?」
「一緒に行こ?……被身子ちゃんから離れたくない。」
「〜〜〜!!!」
流水さんのわがままが可愛すぎます!
リミッターが外れたというか……なんと言いますか!
「行きましょう!流水さん。」
「ん。」
流水さんが両手を広げてくる。
「……え?」
「だっこ。」
今日私はもうダメかもしれません。