side傷原流水
「んむ……。」
「流水さ〜ん?……そろそろ時間ですよ?」
「んぇ……はーい。」
今日は冬休み……だがインターンの初日。被身子ちゃんに抱きついていたがずっとそういう訳にもいかないんだよね。……少し残念。
「……じゃ、行こうか。」
「はい。頑張ります。」
グラントリノの家……事務所に。
「今日から被身子ちゃんをよろしくお願いします。これ……つまらないものですが。」
「うむ。俺が言ったことだからな。このまま無下にするわけにゃいかん。」
グラントリノに持ってきたお菓子を渡す。
「こいつはなんだ?」
「たい焼きがお好きと聞いたので。僭越ながら作ってきました。」
「作っ…………凄いなお前は。」
「よく言われます。」
グラントリノの事務所。生活感溢れるが……家も兼任してるのかな。
「そんで……お前がブラッドロータスの弟子か。」
「はっはい!ブラッドヘリアンサスです!」
「ほぉ……合格だ。」
「「…………合格?」」
二人で頭を傾げる。
「かかかっ。ヒーロー名を胸張って言えないヒーローに未来はねぇ。相応面で……お前さんは合格だ。」
なるほど。そういうことなら合格だね。
「!……ありがとうございます!」
「いい弟子だな。ブラッドロータス。」
「当然です。私の被身子ちゃんなんで。」
「…………笑い方が前より自然だな。何かあったか?」
気付くんだ……凄い観察眼。
「ええ。とびっきりの事が。」
「くくくっ……そりゃよかった。そんで……連絡通りのインターンさせりゃいいわけだな?」
「はい。こっちはこっちでやることがあります。」
……別の仕事……やることが沢山ある。
「公安だもんな。わかった。後は任せておけ。」
「はい。ありがとうございます。被身子ちゃん。頑張ってね?」
「はい!」
被身子ちゃんからのいい返事。うん。じゃあ……いっちょ頑張りますか。
ホークスからの暗号読みといて、情報共有しないとね。
side渡我被身子
「……それで……何するんですか?」
「アイツ……ブラッドロータスから頼まれてることがある。……ただ……俺はまだお前さんの力が分からん。」
「…………なるほど。」
私はバッグの中から最低限の装備と捕縛布を取り出す。最近相澤先生から捕縛布の使用許可が降りた。重いけど……確かにしっくりくる。
「そいつは……イレイザーの……くくくっ。物分りも身体も充分ってことかい。」
「いつでもどうぞ。」
「こっちのセリフだ。小娘!」
ズババババッ!!
杖をぶん投げて部屋を飛び回るグラントリノ。早い。四方八方に移動してるのがわかる。……わかるけど……
「……流石に目で追うのはほぼ無理ですね。」
「じゃあどうする!?何も出来ずに突っ立ってるだけか!?」
「まぁ……」
私は半身をずらす。
そのタイミングでグラントリノが通り抜ける。
「こうするだけですね?」
「ほう!!いい耳だ!」
「体力勝負に持ちかければ私は勝ちそうですけど……そうするのが正解じゃ無さそうなので……頑張って迎撃してみますね?」
「わかってるならやってみろ!」
もう1段ギアが上がった。本当に早い。エスコルチアの流水さん以上です。これじゃ目で見えませんね。
「……じゃあ。」
音を聞いて、突撃してきそうなタイミングで捕縛布を宙にばらまく。
「!?」
「よいしょ!」
そのまま縛り上げる……が
「危ねぇっ!やるじゃねぇか!」
ギリギリ空を切る。
「ん……本当に早いですね。少し見誤りました。」
「目が慣れる前にするもんじゃねぇわな!」
「確かに。……では次……行きますね?」
「!?」
後ろ方向にハイキック。
「当たったと思ったんですけど。」
天井の隅に張り付いてるグラントリノに言う。
「馬鹿言え。まだヒーローになりたてですらないガキの攻撃に当たってたまるか。にしても……よく動ける。頭も回る。その上目も良い。……いいじゃねぇか。お前さん。」
「……ありがとうございます。認めて貰えました?」
「はっはっは。老いには勝てねぇな!」
「またまたご冗談を。その気になれば一瞬だったでしょうに。」
「どうだか!……とりあえず座れや。たい焼き食おう。」
「流水さんのたい焼き楽しみです。朝いい匂いしてたんですよね。」
「今朝作ったのか……。」
「美味しい……餡子がまたなめらかで。流水さんまた腕を上げましたね?」
流水さんの和菓子作りは世界一です。甘い餡子と甘すぎない生地。絶妙です。
グラントリノが持ってきてくれた茶葉も良い奴ですね。お茶も美味しいです。
「……うめぇなこりゃ。あの嬢ちゃんが作ったとは思えねぇ。」
「流水さんは天才ですから。」
「なんでお前さんが偉そうなんだ。くくくっ……似たもの同士だな?」
「……ありがとうございます。嬉しいです。」
「そいつは良かった。それじゃ……仕事の話だ。」
たい焼きをお茶で流し込む。
「……ごくん。はい!」
「ブラッドロータスからは……グラントリノの仕事につけてやってくれと言われてる。今……俺の仕事は公にできない。」
「……公に出来ない?」
流水さんみたいなお仕事って事ですか?
「ああ。黒霧からの情報収集と……敵連合の最大戦力、ギガントマキアの捜索だ。」
「黒霧からの……情報収集と……ギガ……ント……?」
「ギガントマキア。……オールフォーワンの下僕……ボディガードっつった方が正しいな。巨人だ。巨人。」
「マウントレディみたいな感じですか?」
「そうだ。そいつが何処かに隠れてやがる。居場所の捜索だ。暴れた場所次第では都市が滅ぶ。そんなやつ野放しにできねぇ。」
オールフォーワンはそんな化け物を……まだオールフォーワンの息があると考えていいですね。
「都市が…………わかりました。それじゃ先ずは……何しますか?」
「頼もしいねぇ!……じゃあ先ずは……」
病院。
目の前に警察官さん……確か塚内さんって言う方とグラントリノ。……そしてガラス壁を挟んで黒霧。
「……こいつから情報を聞き出そうとしてる訳だが……全く掴めん。」
「死柄木弔の話を聞き出そうとするとシャットダウンした見たいに何も話さなくなる。」
「……DNA鑑定は?」
「今やってもらってるが……こいつも改造人間っぽくてな。難航してる。」
この人も脳無と似たような感じってことですか。
「…………じゃあ私の個性使ってもあまり意味は無さそうですね。」
「……そういや聞いてなかったな。どんな個性だ。」
「グラントリノ……それくらい聞いておきましょうよ。」
塚内さんが呆れ気味だ。いつもあるのかな?
「いいんです塚内さん。私が言うべきでした。私の個性は変身。他人の血を摂取して、その人に変身できます。時間は摂取した血に比例します。」
「……そいつは……内臓も変わるのか?」
「血液型も変わるので……そうじゃないですかね?」
「……だったらグラントリノ。この子に変身してもらって、その血でDNA鑑定すれば多少状態が進展する可能性がありますよ。」
「……一理あるが……」
グラントリノがこちらを見つめる。心配事でしょうか。
「私なら大丈夫ですよ?」
「……すまねぇな。」
「じゃあ……黒霧の血を……。」
数分後、私の目の前に出された血の入った試験管。
私は蓋を開けて迷いなく口に血を流し込む。
「うお……迷いなく行ったな。」
「ま……」
「「ま?」」
「…………不味い。」
「そりゃそうだろうな。」
「いえ。……普通の血とは違う……なんと言いますか……シャンプー口に入れちゃったみたいな感じです。絶対に飲める味じゃないって感じです。」
泥……毒……無味だが……強い嫌悪感を示す匂い、風味。舌がヒリヒリする。
「でも変身できそうです。」
「お……じゃあやってみてくれるか。」
「はい。」
ドロ……
「「……。」」
ペタ……ペタ……
顔を触るといつもと違う。
「お!出来たみたいですよ!……どうですか?」
「……渡我……お前……すげぇことしたな。」
「すげぇこと?」
「塚内ィ!この顔!見覚えあるだろ!!」
「わかってます!すぐに連絡取ります!」
「?????」
なんか私のよく分からないまま話が進んでるみたいです。
……どうしたんでしょう。