side渡我被身子
食事も終わり、食器を運んでる最中ふと緑谷君が喋りだした。
「ていうか、かっちゃん達知ってたんだ。轟家の事情。」
「はぁ!?俺のいるところでてめーらが話してたんだよ!」
「聞いてたの!!?」
「私は知りませんよ?」
「えっ!?」
緑谷君が両手で自分の口を塞ぐ。……遅いです。
「まぁ……何が起こってるかはある程度察しましたけど。」
「……。」
母親がいない。夏雄さんとエンデヴァーさんの関係。……まぁ十中八九母親問題でしょうね。エンデヴァーさんが何かしたんでしょ。
「緑谷くん達に片付け手伝わせちゃってわるいなァ……。」
「手伝わせないほうが3人にわるい。」
……障子越しに話し声が聞こえますね。
3人で耳をすませる。
「私だって夏みたいな気持ちがないわけじゃないんだ。…………でも、チャンスが訪れてるんだよ。焦凍はお父さんの事どう思ってるの?」
自分の意思より家族のこと考えられる冬美さんは素敵です。……立派な大人です。
「この火傷は親父から受けたものだと思ってる。お母さんは堪えて……堪えて……あふれてしまったんだ。お母さんを蝕んだあいつ……そう簡単に許せない。」
「「「……。」」」
言葉が詰まる……爆豪くん?……何を……
「でもさ、お母さん自身が今乗り越えようとしてるんだ。どうしたいのか正直自分でもわからない……親父をどう思えばいいのか……まだ何も見えちゃいない。」
スパーン!
爆豪くんが勢いよく障子を開けた。
「客招くならセンシティブなとこ見せんなや!!まだ洗いもんあんだろうが!!」
「かっちゃん!?」
「あ!いけない!ごめんなさい、つい……。」
「晩飯とか言われたら感じいいのか思うわ!フツー!四川麻婆が台無しだっつの!!」
そのまま食器を持って洗い場に行っちゃいました。……爆豪くんは空気が読めるのか読めないのかわかりませんね?
「ごめんなさい。聞こえてしまいました。」
「……家庭の事情だから私たちが介入していいものじゃ無いですしね。」
「……すまん。」
謝られても……
「轟くん、轟くんはきっと、許せるように準備をしてるんじゃないかな。」
「え?」
「お父さんの事が本当に大嫌いなら"許せない"でいいと思う。でも、君はとても優しい人だから待ってるように見える。きっと今は……そういう時間なんじゃないかな……。」
「緑谷……ありがとう。」
「私からも……ごめんね?緑谷くんと渡我さん……だっけ?気持ちよくない話しちゃって。」
冬美さんにも謝られる。
「……私は両親にお金で売られたので、家庭があるだけ幸せだと思ってます。」
「「!?」」
「渡我……。」
「まぁこれに関しては家庭事情は千差万別。どうなってるかは蓋を開けてみないとわからないですから、一概にこうとは言えないですけどね。」
「……ごめんなさい渡我さん。辛いこと思い出させちゃって。」
ズキン
今もあの光景が目に浮かぶ。耳に残る。
『その苦労があるのに何も私達が報われないのは酷いです。せっかく産んだ子が!化け物で!今こんな状態になってるのもこいつが悪い!慰謝料だ!慰謝料をよこせ!!!』
『人1人の生涯年収って2億円でしょ!?2億ちょうだい!そしたらこんな家からもさらば出来る!!』
『すっ……すげぇ初めてこんな量の金を見た!!』
『遊び放題買い放題よ!あなた!!』
『とっととこんな家から引越しだ!近所もゴミだったしな!!』
『ええ!ええ!私タワーマンションに住みたいわ!!』
『よーし家具も全部新調しよう!!』
『靴に……服に……あーもう何買おう!』
「……辛くないといえば嘘になります。…………ですが外部の人の手助けもあって助かりました。今はあんまり悩んでられないですし。……別の幸せもできました。人生なんて生きてれば案外なんとかなりますよ?きっと歩み寄れるきっかけはあるはずです。」
「……そうだな。わかった。」
「ありがとう。渡我さん。」
何とかしてくれたのは流水さんなんですけどね?
「燈矢兄の事、緑谷くん達に話してないんだ。」
「率先して話すもんじゃねぇだろ。」
一通り話してもらった。轟くんの1番上のお兄さんのこと。亡くなってる事。家の問題も少し。
「夏は燈矢兄ととても仲良しでね、よく一緒に遊んでた。お母さんが入院してまもなくの頃だった。…………お母さん、更に具合悪くなっちゃって焦凍にも会わせられなくて。」
私とはまた違った……家庭問題。だいぶ複雑化してますね。
「でも、乗り越えたの。焦凍も面会に来てくれて、家が前向きになってきて。…………夏だけが振り上げた拳を下ろせないでいる。」
……私は振り下ろさなくてもいい気がしますけどね?
「お父さんが燈矢兄を殺したって、思ってる。」
「だから、あんな面してたんか。」
爆豪くんは何か見たんですかね?
「車で学校まで送ろう。」
と言われたのでお開き。ご飯美味しかったですね。……流水さんの為にも早く帰らないと。
玄関に向かうと……大きな車と……え?
「流水さん!?」
「やっほー。」
「なんで貴様がここにいるのだ!傷原ッ!」
エンデヴァーさんのスイッチが入る。
「住所くらい知ってますよ。だって私一応先生ですよ?」
「……何をしに来た。」
「簡単です。」
流水さんはポイッと目の前に何かを投げる。
人間……?
「コイツは……!敵エンディング!」
「エンディング?」
誰ですか?敵?
「……最近出所してきた敵です。エンデヴァーのこと大好きでしたよ?個性ブースト剤のしようも見えました。……まだ流通してますね。」
……なんで流水さんは持ってきたんですか?
「なんで師匠は……。」
「襲われてる一般人が居たのでね。助けてあげたんです。……そして家まで送ろうとしたら……。」
「……。」
「夏雄!怪我は無いか!」
エンデヴァーさんが夏雄さんに駆け寄る。
「……親御さんならこんな夜道男だとはいえ、送ってあげるべきでしたよ。敵活動も活発化してる昨今……あまりにも不用心すぎます。」
「…………。」
「……夏雄。すまなかった。」
「……別に。助けてもらったし。」
「………。」
流水さんの顔は険しい。
「エンデヴァー。これを機にしっかり話し合った方がいいです。……出来れば焦凍くんも交えて4人で。言うべきこと。話すべきことあるでしょう。……私が雄英まで送ります。……話し合ってください。あなたの出来る最善を。」
「流水さん……。」
「エンデヴァー。逃げんな。現実だろ。向き合え。どう思ってるか、何を考えてるか吐け。ヒーローは何かあってからじゃ……全部が遅いよ。」
「……わかった。ありがとう。」
「……。」
「ほれほれ。夏雄くんも腹割って話しな。……きっとそれが良いふうに転がってくれるさ。」
流水さんが夏雄さんの背中を押す。
「……あんたは……なんでここまでしてくれるんですか。」
……あんた?
「渡我。」
「…………ヒーローは苦しんでる人を救うものだからね。エンデヴァーも貴方もどちらも苦しんでる。拗れた人間関係を救えるのは他者だけだって思ってる。」
「……。」
「だから救う。助ける。……悩めるってことはあなたはきっと優しいから。でも……許すだけが優しさじゃないのは知っていて欲しい。貴方も。貴方も。」
流水さんが轟くんと冬美さんを指さす。
「……。わかりました。」
「よ〜しじゃあみんな帰りましょうね〜。」
「ちょっと待てや!夕飯のマーボーのレシピ教えろ!」
「……あっ……うん!いいよ!焦凍にメッセージで送るね?」
「わかった。」
「フン!」
いいなぁ……私も知りたい!
「私も教えて欲しいです!」
「じゃあ渡我さんにも教えるね!」
「はい!ありがとうございます!」
「……緑谷くん。爆豪くん。渡我さん。焦凍の友達になってくれてありがとうね。」
冬美さんが緑谷君の手を握る。
「はい!」
「友達じゃねぇよ!!」
「友達だろ。」
「てめぇナメてんじゃねぇぞ!!」
「……傷原。頼みがある。」
「んぇ?いいですよ。」
流水さんとエンデヴァーさんが話してる……なんだろ。
爆豪くんと轟くんと緑谷君の声でよく聞こえませんでした。
……少しは進展すればいいですね。