side傷原流水
今は海の上。少し緊張が走る。
「……そろそろだよ。」
「…………。」
「まぁそろそろって言っても私の面会を終わらせてからだから……あと良くて2,3時間後かな。」
「…………。」
「……お腹空かない?」
「…………。」
私の横に座る気月さんは顔を俯かせている。不安と焦り。色んな感情がごっちゃになってる感じかな。
「……心配だよね。怖いよね。命令されたとはいえ……生き残っちゃった訳だからね。」
「…………。」
「しかも今何不自由ない生活をしてるときた。捕まってる同僚……というか組織のトップにどんな顔していいかわかんないよね。」
「…………。」
「……聞きたいこと聞けばいいんじゃないかな。……四ツ橋社長はそんな気難しい人じゃないよ。」
「…………。」
こりゃ相当重症だな。……まぁ……どうにかなってるでしょう。
「こんにちは。レディ・ナガン。」
「や。……なんか元気そうだねぇ?」
レディ・ナガンに手を振られたので振り返す。
「分かります?最近は色々あったので。」
「へぇ……聞かせておくれよ。」
1回席に着いて息を吐く。
「フーッ……言えることだけですよ?あんまり深いこと言えないので。」
「大丈夫さ。わかってるつもりだよ。」
「じゃあ…………」
「まぁそんな感じです。」
「異能解放軍……ね。……だいぶ前に存在していた組織だけど……今もあったとは。」
「まぁ……私が仕留めた訳では無いですが……何とかなりました。」
……リ・デストロ……。不安や疑問は全部この後聞来ましょう。
「良かったじゃないか。何とかなったが1番いいよ。ただ……聞く限りだけど相当強かったんだろうね。……ヒーローどころか町全体が行方不明なんだろ?」
「はい。何故か……はまだ想像の範疇を出ないのですが……明らかに異常なので警察もヒーローも多数動いてます。」
まぁ全く進展してないんですけど。……相当な隠れ蓑になってるはずです。こちら側の。
「ふぅん……その喋り方は結果は出てなさそうだねぇ。」
「……出てないですね。超常現象とかニュースでは言ってます。馬鹿らしい。」
「超常社会に超常現象!?はははははっ……そんなの日常じゃないか!当たり前以上のことが起こったって事だよね?くくくっ……いいじゃないか。ユーモアが効いてる。」
レディ・ナガンがこんなに笑ってるのを見るのは久しぶりだ。相変わらず笑いのツボはわかんないけど。
「レディ・ナガンの笑いのツボはわかんないですね。」
「くくくっ……だが敵連合も異能解放軍もどちらも雲隠れしたのが異常だね。……どこに行ったのやら。」
「さぁ。……皆目見当もつきませんが……このままだと非常に良くないので、公安は普通に焦ってますね。慌ただしいです。」
「……あんたは?」
「私は公安職員じゃないので興味なしです。」
「ふふふっ……いい立場だね。」
「全くその通りです。…………時間ですか。」
私が席を立つ。
「……早いものだね。…………なんか嫌な予感がするよ。気をつけておいた方がいい。」
「……はい。胸に刻みます。」
女性の勘……怖いよね。…………敵連合。何処にいるんでしょうか。ホークス頼りですね。
side???
「…………。」
「……だ生意……な!」
「黙……まん。」
「あぁん!?……お前!!」
「……死……受けてんだろ?……あと……ことか。」
「あ……月だ。……術が終わる。ド……りだとな。」
「……。」
「……つらど……るのよ。……する?」
「当然。死……てもらう。」
「マ……もいいけど……。」
「とり……ず俺の……から喋れ。」
「…………。ああ。それでいい。……まぁいいんじゃねぇか。……病院?……わかった。」
「…………病院。……ね。」
「どこだ。ホークス。」
「あいあいこっちですよ。」
「俺のボディガードなんだから俺が出たらすぐ守れ。何かがあってからじゃおせぇ。」
「わかりました。申し訳ありません。」
「……ふん。さっさとしろ。公安が寄越したボディガードがナンバー2ヒーローとは……俺も重要視されたものだな。」
「まぁ……そうなんじゃないですかね?よくわかんないっすけど。」
side傷原流水
「こんにちは。四ツ橋さん。」
「…………。」
「……傷原くんだけだと思っていたが……。まさか君もか。」
「……ご無沙汰しております。四ツ橋社長。」
面談。四ツ橋社長は気月さんが入ってきたらびっくりしていたが……すぐに表情を戻す。
「……傷原くん。私は君と話がしたかったが…………別に大丈夫そうだな。友人は元気にやってくれているみたいだ。」
「頼まれたので。……気月さんは大層落ち込んでましたけど。」
「いえ……私はそんな……。」
「気月くん。本当に申し訳ない。」
「……大丈夫です。……それよりも足が……。」
そうなのだ。四ツ橋社長は足がない。……なんでだ?死柄木弔にやられた?……既にそんなににも力を持っていたのか?
「ははははっ。……死柄木弔にやられてね。足を崩壊されてしまったよ。彼の個性が進化した……とでも言うべきか。」
「……進化した?」
「伝染する崩壊……とでも言おうか。崩壊している場所に触れても崩壊するようになった。」
「「!!」」
「つまりだ。……地面に触れれば範囲内にいる全ての地に足ついている生物は一緒に崩壊するということ。…………文字通り日本を滅ぼせる力を手に入れてしまった。」
「…………日本を……滅ぼせる……。」
「…………。」
そんな力が……使える……のが死柄木弔…………。相当にまずい。ホークス……情報収集を急いでください。
「…………聞きたいことがあります。ほかの異能解放軍はどうしたんですか。」
「……逃がしたよ。私が殿になってね。」
「何処に。」
「それは教えられないね。」
やはり。敵連合の味方になったわけじゃなかった。
「……敵連合は。」
「……いつの間にか居なくなっていた。……大きな人型の敵は見えたんだが……それ以降はなんとも。」
「…………。」
長い沈黙。
四ツ橋力也が何か覚悟した強い眼差しで私に話しかける。
「……5日後だ。5日後だよ。傷原流水。君に託す。」
「5日後…………?……何を?」
「気月くん。よろしく頼むよ。」
「……!……わかりました。」
「なんの事……。」
「……もう時間のようだ。すまないね。気月くん。もう君を巻き込みたくはないのだが。」
「大丈夫です。四ツ橋社長。私は私のやりたいことをします。」
「…………傷原くんを頼む。」
「はい。」
なんのことか分からないけど……多分ここは気月さんに聞いた方がいい。
「最後に。四ツ橋さん。」
「なんだい傷原くん。」
「…………後悔は無いですか。」
「…………難しい質問だね。……あるさ。あるとも。……まだ種火は……残ってると信じたい。」
「……。わかりました。それでは。」
帰り道
「気月さん。あれってなんですか。5日後……とか。」
「……5日後に普段なら異能解放軍の集会があるの。……そこにあなたを招待しろってことだと思う。……応答がなかった……誰も来なかった時は……覚悟した方がいいわね。」
「……敵連合に残党狩りされてる可能性があると……。」
「うん。」
ただ……敵連合だけで全ヒーローと戦うだけの頭数は足りるのだろうか。……それを確信できるほどに死柄木弔の能力が上がってる……?異能解放軍を味方につける方が楽だとは思うが…………ほかの3人の幹部がそれに従うかどうかは不明だね。
「…………。5日後ですか。」
「ええ。絶対来てね。」
「わかってます。……それまでに話が進展すればいいんですけど。」
「…………。」
「残党狩りしてるのであれば……散らばった解放軍だけでどうにかなるか……分からないね。」
『なんか嫌な予感がするよ。気をつけておいた方がいい。』
今になっていやな気がして来ましたよ。レディ・ナガン。