side渡我被身子
「ぐえっ!」
楽しい!
「きゃっ!?」
楽しい!!
「被身子ちゃーんラストいっぽーん!」
終わらないで!!
「楽しいです!流水さん!」
もっともっともっともっと!!!
ガギン!……ガンガン!……ギン!
武器の撃ち合い。お互い切れないが、触れたらもう終わる。個性が使える私と、拘束できる流水さん。
全身がヒリヒリする。
「ハァ……ハァ……ふふっ!もっとやりましょう!流水さんッ!!」
「ハァ……いいね!なんなら死ぬまでやろうよ!被身子ちゃん!!」
息が上がる。思考が研ぎ澄まされる。
苦しくなればなるほど……身体が思考を放棄して反射で動くようになる。だが思考をやめない。今できる全てをぶつける。
流水さんに徹底的に愛してもらうために。
流水さんを胸を張って愛するために。
コンディションなんて最悪だ。汗で身体ベトベト。髪もボサボサ。身体なんて動けるのが不思議。でも私は流水さんみたいになりたいから。
『戦場は常にバッドコンディションが付きまとう。』
『本気の死闘は今のあなたのコンディションから更に下がる。』
流水さんの発言は私の糧になっている。
『時間を稼ぐのはいいけど、敗北条件をもう一度頭に入れた方がいいわ。』
長い時間での打ち合いも……相手の隙を晒すため。己が隙だらけでも……肉を切らせれば骨が見える。
己の体力と相談。もうギリギリ限界。
「ハァ……ハァ……ハァ……。」
「ハァ……ハァ……だいぶ息上がってるね……被身子ちゃん?」
体力を削るのは……もう厳しい。なんですかこの化け物体力。同じ訓練をしてるはずなのに全く追いつける気がしません。
仕掛けるのは……今。この一瞬。勝つための布石。
私は踏み込みをあえて滑らせる。
「!?」
体力がごっそり持っていかれるけど……ここが勝負どころ!
「疲れが見えちゃったかなッ!?」
流水さんがそんな隙を見逃す訳もなく、私に切り込む。
掛かった!ここから1発勝負ッ!!
薙刀の投擲。
やけくそに見えたかな?
流水さんはしっかり弾いてみせる。何度も思うんですけどなんであの質量を弾けるんですかね?
ただ……私がしてくると思ってなかったんじゃないですか?
薙刀を弾く一瞬。意識を持っていかれるその時。
私は流水さんの後ろに回り込む。
相手の時間を奪え!
「目潰し……!」
「もう遅いですッ!」
あとは捕縛布でッ!!!
「……これで終わりね。」
私は地面に突っ伏してた。もう動けませんよ……体力使い切りました。
「ハァ……ハァ……もう無理です。」
降参。出し切りました。
「そうでしょうね。……結果は……10対1。」
「へへへっ……1本取れました!」
「…………はぁ。最後の最後に出し抜かれたわね。」
悔しそうな流水さん。
ぐるぐる巻きの流水さん可愛かったですよ。
「渡我さん!凄かったよ!」
緑谷君が水とタオルを持ってくる。
「ハァ……ハァ……ありがとうございます。」
「チッ……やるじゃねぇか。」
「すげぇな。渡我。……傷原先生に勝っちまうなんて。」
轟くんと爆豪くんも来る。
「ありがとうございます。……爆豪くん……また1歩先いただきますね?」
「アァ!?うっぜ!すぐ追い越すわボゲッ!」
「何年後ですかね?」
「とっととクールダウンしろやクソがっ!!」
「はーい。」
「私もまだまだね。……次からリスク覚悟でエスコルチアするしか無さそうね。」
流水さんが本気でガッカリしてる。……えへへへ。いい気分です。
「楽しみです!」
「もう…………。」
流水さんが頭を撫でてくれる。
「本当に強くなったわね。被身子ちゃん。もっと強くなるんでしょ?」
流水さんの顔は優しさに満ちてる。なんか心がホワホワします。
「流水さん…………はい!もちろんです!」
「師匠!反省点は……。」
緑谷くん……ムードってのがあるんですよ??
「今回のに関しては……反省点ってよりかは9敗は全部私の体力を使わせるように立ち回ったんじゃない?」
「……よく気付きましたね?」
この人の観察眼はすごい。いつから分かったんだ。
「5本目くらいから気付いてたわ。私の運動量に対して被身子ちゃんの運動量が明らかに少なかったからね。……遠距離攻撃を持ってるから待てたのもあると思うんだけど。」
「…………あの運動量でそんなこと考えれるのか。」
「出来ねぇと勝てねぇって事だろ。」
「……すごい駆け引きでした。武器持ち同士で戦うとあんな感じになるんですね!」
「武器はいいよ。でもそれ以上に武器が壊れた時何も出来ないじゃいけない。武器はあくまで補助。ステインみたいに武器をいくつも携帯するとか、私みたいに武器が無くても戦えるくらいしか解決方法は無いね。」
「私はどっちもある程度賄ってます!」
2人の師匠のハイブリットってやつですね!
「話を戻すわね?今回の反省点は……そうなると私以外特にないわね。体力もっとつけようね位じゃないかしら。」
……流水さんの体力は異次元ですよね?
「……私以外に3連戦してから私と戦ってやっと息上がってる化け物みたいに体力つけるって……何やったらそうなるんですか??」
「……ハラセン化け物すぎねぇか?」
「……化け物。」
「オールマイトみたいですね!」
「え!?私こんな体力無かったと思うんだけど……あったかな。」
「オールマイトと一緒って言われるとちょっと嫌ですね。」
流水さんらしいです。
side傷原流水
「傷原くん。ちょっといいかな?」
今は緑谷くんと轟くんの勝負中。オールマイトに小声で話しかけられる。
被身子ちゃんと爆豪くんは二人で分析しながら勝負を見てるようだ。言語化は大事だよ〜。
「どうしましたか?」
「……なんでさっきの……1本取らせたんだい?」
「!」
……この人……
「よく気が付きましたね。」
「いや。勘だよ勘。なんというか……あの捕縛布。相当甘かったよね?多分躱すことも出来た。……が、くらってあげたように見えたんだ。」
この人の天性のセンスと言うか……長年培ってきた戦闘経験値というか……それでいて頭も回る。…………本当にナンバーワンヒーローなんですね。この人。
「……くらってあげた……といえばそうなんですけど、実際あの場面でもし捕縛布が完全だったら逃げれませんでしたし、私の隙を作られたのも確かです。…………それ以上に……被身子ちゃんの成長が嬉しすぎて……受けちゃったのもあります。」
「……親バカだね。」
「勝手に言っててください。……それに…………これはいいでしょう。」
「…………?」
被身子ちゃんのあの時の顔……かっこよかったなぁ……なんて言えませんしね。見惚れたなんて……恥ずかしすぎます。
「オイ出久!!なんで飛んでんだてめぇ!」
爆豪くんの声で試合に向き直る。
緑谷くんが宙に浮いてる!もしかして……
「緑谷少年!!『浮遊』が出来るようになったのかい!!」
「くっ……まだ……制御は難しいですけどっ!なんとなく掴みました!!」
まだフラフラしてるけど……浮けてる!
「緑谷……続けていいか。」
「うん!!……大……ッ丈夫……やろう!轟くん!!」
彼も成長している。ここからはワンフォーオールだけじゃなくて、『黒鞭』と『浮遊』の同時並行処理をしながら戦ってもらった方が良さそうですね。
「……これで空中戦もできるようになった……わけですか。厄介ですね?」
被身子ちゃんがしかめっ面だ。もう次戦うこと考えてる。バトルジャンキーだねぇ?
「被身子ちゃんなら1ヶ月後にはなんか飛んでそうだけどね?」
「私は人間ですよ?……飛べる人の血を舐めたらいけるかもしれませんけど……多分無理です。」
「冗談よ。冗談。」
「もう。」
あ、緑谷くんの足が凍った。
「操縦は……もう少しかかりそうですね。オールマイト。」
「……ああ。そうみたいだね。」
ただペースはだいぶ早い。このまま行けば……全部の個性を扱い切れるかもしれない。きっと敵連合との決戦にも役に立ってくれるはず。
頑張れ。次世代の平和の象徴くん。