side渡我被身子
2月といえば何があるでしょうか。
「「バレンタインだよ〜!!!」」
「2人ともテンションが高いですね?」
バレンタイン前日。今日は鳴花 亜煌(なりばな あきら)ちゃんと辛堂 霞味(しんどう つゆみ)ちゃんを家に招いてチョコ作りをします。
先生に確認を取ってみると大丈夫との事で2人を招待してチョコ作り……って感じです。
予めチョコは多めに買っておいたのでなんとかなるでしょう。
ちなみに流水さんは今日休日出勤らしいので顔が死んでました。帰ったらいっぱい慰めてあげないといけないです。
「渡我ちゃん!」
「はいはい?エプロンつけて手洗ってくださいね?」
「私達チョコ作ったことないから教えて!」
この子達ったら……。
「…………いいですけど。」
「渡我ちゃんだけが頼りなんだよ〜……。露味は味覚音痴だから無理すぎて……。」
「味覚音痴!?酷い!」
「あ〜……なんとなく理解しました。」
「渡我ちゃんまで!?」
辛堂ちゃんは極度の辛党なので……甘すぎるのもあんまり得意じゃないんですよね。なんでチョコ作ろうって言い出したんですか。言い出しっぺ辛堂ちゃんですよ?
「何その目!…………だって例年通りだと亜煌気になってる人にチョコ渡さずに終わりそうなんだもん!」
なるほど……鳴花ちゃんへの配慮だったんですね。
「ばっ……そっ…………ソンナコトナイシ。」
たぬきみたいなタレ目でほぼ顔の表情筋が動かない鳴花ちゃんの照れ顔。一気に顔真っ赤になるんですよね。
「……これは腕によりをかけて作らないとですね。」
「…………オネガイシマス。」
かぁいいですよねぇ。
「渡我ちゃんは何作るの?」
「カップケーキを作ります。」
「カップケーキ?……ちょっと待ってね。」
今も真っ赤な鳴花ちゃんをほっておいて、辛堂ちゃんがスマホをスイスイ。
「手また洗わないといけないですよ?」
「『あなたは特別な人です』!?へーーーーっ!傷原さんに?」
「当たり前です。他の人には普通のチョコあげます。」
「渡我ちゃん先生!私たちは何すればいいですか!」
そうでした。この子達何が作りたいとかじゃなくてチョコ作りたいって言ってきたんでした。
「トリュフ作ります。」
「「トリュフ!?」」
「難しくない!?大丈夫!?自慢じゃないけど私めっちゃ不器用だよ!?」
「辛堂ちゃんが不器用なのは知ってます。」
「私なんでもできるよ。」
「鳴花ちゃんがある程度なんでも出来るのも知ってます。」
名前だけで敬遠しがちですけど……トリュフってめちゃくちゃ簡単なんですよね。そう……
「チョコパイあれば簡単に出来ますよ。私もクラスのみんなはトリュフにする予定なので。いっぱい作りましょう。」
「本当〜?……ママが言うなら本当か。」
「なんかチョコ以外にもチョコパイとかココアパウダーとか色々買うなって思ってたんだよね。」
「チョコはチョコクリームにするので買いました。カップケーキにココアパウダーで色つけするんですけど……さすがにチョコが何も無いのは味気ないなって思ったので。」
「…………よくわかんないけどすごい事しようとしてるのはわかった!」
「私たちにカップケーキはまだできないって事もわかった!」
「カップケーキだけなら簡単ですよ。作ってみますか?」
「いいの!やってみる!!」
「やめとこうよ亜煌……失敗したら爆発だよ?」
「何事も挑戦だよ露味!」
前傾姿勢がすぎるのが鳴花ちゃんのいい所でもあり悪い所でもあるんですよね。いい方に傾いてくれることを祈りましょう。
「……牛乳あれだけで良かったの?」
「チョコパイいっぱい入れたよ?」
「いいんです。牛乳多すぎてもダメなので。」
私は今カップケーキの生地を作ってる最中。卵と砂糖を入れてもったりするまで混ぜてます。ハンドミキサー最強ですね。ベーキングパウダーを入れないので空気をいっぱい入れます。
2人はカップケーキの生地ができるまでトリュフの様子を見ているようです。……そんなことしても早くできる訳じゃないですけど……。
「……溶けるの?これ。」
「多分外見で溶けたか判断はしにくいと思います。温めたあと、すぐゴムベラで混ぜてもらいますね?」
「任せて!」
ゴムベラを構える鳴花ちゃんと辛堂ちゃん。……何してるんですか?
「「2人はプリ○ア!」」
「うわーーっ!すごいすごい!本当に混ざる!!なんかそれっぽくなってきた!!!」
「それっぽくなるんです。あとそれを丸めるだけですよ。」
「渡我ちゃーん混ぜ方これでいいの?」
「はい。空気潰さないようにゆっくり混ぜてくださいね?バターそろそろ入れますよ。」
「はーい!ゆっくり……ゆっくり……。」
トリュフを作って感激してる辛堂ちゃんと頑張ってカップケーキの生地作ってる鳴花ちゃん。どちらも料理初心者さんでかぁいいです。……私もこんな時あったなぁ。
ちなみに私はココアパウダーを生地に入れるので私のカップケーキ用と鳴花ちゃんのカップケーキ用で生地が分けてあります。
「カップケーキはあとはホイップクリーム作って終わりです。」
「わかった!頑張る!」
「渡我ちゃん。お団子作ればいいの?」
「そうですよ。生地流し込んだらそっちに合流するので……丸めてて大丈夫ですよ。」
「はーい!」
思ったより順調ですね……。辛堂ちゃんも不器用なところ見せてませんし……これなら…………
「なんか私のトリュフすごく形悪くない?」
そんなこと無かったです。
カップケーキをオーブンに入れてる間に、トリュフを丸めてしまおうとしたところ……私と鳴花ちゃんのトリュフは綺麗な丸なんですけど……鳴花ちゃんのトリュフ……楕円だったり潰れてたり割れてたり……これはこれで味がある…………んですかね?
「独自性があっていいんじゃないですか?」
「下手くそだね。露味。」
「渡我ちゃんは配慮があったのにあんたって人はァ!!!!」
「まぁまぁ。あとは冷やしてココアパウダーかけて終わりです。辛堂ちゃんはおやすみタイムですね。」
「チョコちょろ。簡単じゃん。」
「不格好トリュフが何か言ってる。」
「誰が不格好トリュフですって!?」
「喧嘩しないの〜。」
「「はーい。ママ。」」
「大きな子供ですこと。」
私はクリームにチョコ入れてチョコクリームに、鳴花ちゃんは生クリーム頑張って泡立てて生クリームを作れたので……
「ご開帳です。」
「「わー!膨らんでる!すごい!!!」」
「これにクリーム乗っけてデコレーションして終わりです。」
「可愛い〜。……これ私が作ったんだ……。」
「…………渡我ちゃんには言ったの?少しだけ進展したこと。」
「え?何も知らないんですけど。」
「…………イイジャンワタシノコトハ。」
顔真っ赤……。
「何かあったんですか?」
「いいじゃん!私のことは!!」
「瀬呂くんバレンタイン当日に誘えたんでしょ?良かったじゃん!」
「もーーーーっ!!言わないでって言ったじゃん!!!」
「良かったですね。鳴花ちゃん。瀬呂くん優しいからきっと受け取ってくれますよ。」
「…………そうかなぁ。……優しすぎる気がするけど。」
「基本いい人ですからね。男女問わず平等に接してくれるクラスのムードメーカーです。」
「…………頑張らないと!」
「しっかり心込めましょうね?」
「うん!」
「…………亜煌が本当に真っ当に恋愛してる……なんかこっちまで恥ずかしくなってくる。」
「なんでよ!!」
お二人共本当に仲良しですね?
私をその輪に入れてくれてありがとうございます。楽しいです。
そしてラッピングして……
「「完成〜!」」
「お疲れ様です。」
「ありがとう渡我ちゃん!渡我ちゃんのお陰だよ!!」
「いえいえ。鳴花ちゃんが頑張ったからですよ?」
「チョコちょろ……これなら私でもできるね!」
ほんとですかねぇ?
「露味はやめときな?チョコがモンスターになっても何も言わないよ?」
「なるわけないでしょ!!」
16時ちょっと過ぎ。……流水さんはまだ帰ってこないですけど……そろそろ暗くなります。2人を雄英まで送ってあげた方がいいでしょうか……。
「2人とも……雄英までなら送りますよ?」
「悪いよ。傷原さん帰ってないんでしょ?」
「そろそろ帰る予定なので……大丈夫だとは思うんですけど。」
「ん〜……渡我ちゃんがいいならいいけど……。」
「……暗くなったらそれこそ大変です。今のうちに帰っちゃいましょ。」
「……わかった。」
片付けを終わらせて、2人を雄英まで送って、あとは帰るだけ。
帰り道……流水さんがいないとこんなに寂しいんですね。家までの距離が長く感じます。
今日の晩御飯は何にしましょうか。流水さんの喜ぶ顔を想像しながら歩く道は……ちょっとだけ楽しいです。
私は後悔しました。
流水さんが帰るまで待ってれば良かったです。
「……被身子!」
聞きたくなかった声。
さっきまでの気持ちはどこへやら……わたしは心がどんどん沈んでいくのを感じます。
目の前にいたのは……
「被身子!……やっと見つけた!」
「……お久しぶりですね。」
私の元両親。……私を捨てた人。