side渡我被身子
「覚えてるわよね?ママよ!」
「……なんですか。」
冷たく言い放つ。何を今更。……ママなんて。
「……頼みたいことがあるんだ。聞いてくれるよな?家族だもんな!」
「…………今更家族?……寝言は寝てから言ってください。」
少しづつだけど……元両親が近づいてくる。
「近づかないで。私はあなた達を許してないです。」
2人は歩みを止めて、ムッとした顔をする。
「何よそんな言い方!」
「娘でも許せんことがあるぞ!!」
「肉親でしょ!聞いてくれたっていいじゃない!」
「両親?……娘?……肉親?……。」
何を……何を今更。
「私がどれだけ傷付いて……私がどれだけ苦しんだか!何も分からない癖に!」
2人の声が響く。
「あなただって!私達の苦しみなんて全く分からないくせに!あなたにわかる!?何ヶ月も苦しんで、お腹を痛めて産んだ子が!血を吸っていた時を!傷付いた動物が好きだった時を!!普通じゃなかったのよ!あなたはッ!!!」
「そうだぞ!あの日からだ!あの日からッ!俺たちの関係も崩れたんだっ!お前が居たから!!お前が人間じゃないから!家庭崩壊したんだ!少しは詫びようと思わないのかっ!!」
激昂。謝罪の強要。
「……。」
あぁ……もう。
もう……この人達は……。
私は何を期待してたんでしょうか。この人達に。
人間だから。人の心があるって。どんな人にも……心があると……優しさがあると思い込んでました。
雄英のみんな。先生方。白体教の皆さん。カフェの皆さん。気月さん。ナイトアイ。センチピーター。バブルガール。グラントリノ。辛堂ちゃん。鳴花ちゃん。オールマイト。…………そして流水さん。
この半年ちょっとで会った人は……私の認識を狂わせていたのかもしれません。
人は……みんな優しいわけじゃない。人はみんな認めてくれるわけじゃない。……勘違いをしていた。優しすぎたんだ。暖かすぎたんです。
気付かない内に私は救われていたのかもしれません。
「何よ!黙っちゃって!申し訳ないと思うならまずは謝りなさい!気は長い方じゃないの知ってるでしょ!!」
「…………です。」
「……は?聞こえないわ!」
「絶対に嫌です!」
「「!!」」
「私は!あなた達に謝ることなんて何一つないです!!」
「な…………な…………なによそれっ!!」
「何よって何ですか!私は望んであなた達の子供になった訳じゃないです!親も!子も!お互い望んでないからこそ!親が子を認めて関係が始まるんでしょう!?あなた達は何ですか!責任を放棄して!私を蔑ろにして!あまつさえ金で売ったのにも関わらず!久しぶりに顔を見せたと思ったら謝れ!?何様ですか!!!私にとってあれが普通だった!何が悪いのかも!何がおかしいのかも分からなかった!教えるのが!導くのが親でしょう!?あなた達は私の親なんかじゃない!!」
「なんだと!?」
「聞こえないんですか!?耳が悪いなら何度でもいいましょうか!!私はあなた達の人形じゃない!!あなた達は既に私の人権をお金で売った『元』両親です!私があなた達に対して謝ることも!許しを乞うことも!お願いを聞くことも何もありません!お引き取りください!私の目の前に!二度と出てくるなッ!!」
言い切る。心の中を。あの時言えなかった全てを。目の前にいる存在に。私の普通を踏みにじった悪魔に。
絶対に許すわけにはいかない。私は……あなた達の娘じゃない。
「…………もういいんじゃない?」
「……。」
「何言っても無駄ってことだな。」
ピッ……
元母親がスマホで電話をかける。
「私よ。すぐに来て。……何?今更断れないわよ。私たちはあなた達の弱みを握ってるんだから。口答えは許さないわ。」
ピッ
「…………誰を呼んだんですか。」
「あなたには関係ないわ。まぁ……。」
ブロロロ……
エンジンの音。……車?
ワンボックスカーが3台。私達を囲むように止まる。
ぞろぞろと筋肉質の男が1人……2人……3人……
10人降りてくる。
「お客さん……本当にやるのか?」
「ええ。決定事項。変えないわ。」
なんとなく理解した。私を拐う気だ。……誘拐ですね。
私は丸腰……何も持ってない。余裕と判断されたか。
「……社長。俺やりたくねぇよ。」
「どうにかならねぇか社長?」
「…………?」
……嫌がってる?……何が……。
「あら?いいのよ?すぐ帰ってもらっても。そうしたらあなたたちが元敵集団だってことバラすから。それに…………私達から前金貰ってるでしょ?」
「……くっ。」
……性格の悪い。人の弱みを握って従わせてるってことですか。
「社長……俺達あの人と約束したじゃねぇか……。」
「嘘つけねぇよ俺。社長……。」
「やっぱおかしいよ社長。もう1回……」
「何ごちゃごちゃ言ってんだ!?仕事しろ仕事!こいつを捕まえて運べっつってんだ!こいつ人質にして金巻き上げるんだよ!」
「最低。」
「なんとでも言え!やることやんだよこっちは!」
「早くやりなさい。時間は待ってくれないわ。」
「……すまねぇ。嬢ちゃん。」
「社長……。くそっ。」
10人の男が動き出す。
さすがに雄英で鍛えてるとはいえ……多勢に無勢が過ぎます。
時間を稼ぐにしても何秒稼げるか……。
「……流水さん。」
こんなことなら……1人で出なければ……。
「やりなさい。早く。」
「…………すまねぇ。」
「…………。」
やるしか……無いんですか……。
と思ったら社長と呼ばれてた男が元両親に向き直る。
「俺はっ!俺達はっ!二度とお天道様を拝めねぇ仕事はしねぇと約束したんだッ!!」
「…………え?」
「「「社長ッ!!!」」」
残りの従業員も元両親に向き直る。
「はぁ!?なによそれっ!あなたたちのこと言いふらしてもいいって訳!?」
「そうだぞ!信用ガタ落ちだぞ!客が来なくなるぞっ!!」
「うるせぇ!俺達ァとある人に約束したんだ!救ってもらったんだ!その人に足向けて寝れるかってんだ!」
脅しにも屈せず啖呵を切る社長(?)さん。
部下さんも続く。
「よく言った社長!俺はその人にメシ奢ってもらったんだ!あの日食ったあったけぇメシ忘れらんねえよ!!」
「そうだそうだ!俺達の家も用意してくれたんだ!小さいマンションだって言ってたが!デケェ部屋だった!もう俺はあの人について行くって決めたんだよ!」
「嬉しかったんだよ!人に感謝されんのは!お天道様の下を胸張って歩けるのは!あの人無しじゃ俺達ァもしかしたら今お縄だったかもしれねぇ!それが多少早まるだけだ!!」
「いい人生過ごさせて貰ったんだ!後悔はねぇな!?」
「「「応!!」」」
すごい……今までピンチだったのに……急に一致団結して……。
すごい人に救ってもらったんですね……まるで流水さんみたい。
「何よ……何なのよそれ!!!」
「知らなくて結構!俺達はもう脅しに屈しねぇぞ!!」
「お金払ったんだぞ!安くないお金をッ!」
「うるせぇそんなに欲しけりゃくれてやるッ!はした金だ!!」
社長と呼ばれた人は懐から封筒を投げ捨てる。
なかには分厚いお札の束が入ってる。
「よくやった社長!!」
「それでこそ社長だぜ!!」
「一生ついて行くぜ!社長!!」
「いーやダメだ!俺達がついて行くのは!!」
「「「姐さんただ1人!!」」」
…………姐さん?
「何よ……何なのよ!!意味わかんない!!!」
「煩いですね。……なんの騒ぎですか?」
後ろから声が聞こえる。
安心する声が。私のヒーローの声が!
「流水さ……」
「「「姐さん!!!!!」」」
…………え?