side傷原流水
仕事終わりの帰り道。少し遅くなっちゃった上に最寄り駅じゃない駅から降りたのでいつもと違う道。
ケーキ屋さんあったんだ。知らなかった。いつか被身子ちゃんと寄ろう。
ケーキ。…………明日バレンタインか……。チョコ……作れなかったなぁ……市販品でいいかなぁ。……被身子ちゃんに感謝を伝えるためには……手作りがいいよねぇ。明日早く起きる?なんかそれがいちばん無難な気がしてきた。
「ただいまー。」
被身子ちゃんの声が聞こえない。
そういえば今日友達が来るって言ってたっけ。居ないってことは多分寝てるってことは無い……無いと思う。
一応寝室を確認する。駅まで送ったのかな。
…………それにしては帰ってくるの遅くない?
なにかトラブルでもあったのかも。……ちょっと準備だけして迎えに行くか。少し急ごう。
私達の家は最寄り駅に向かう道すがら雄英がある。
雄英に向かってる時……
「…………!!」
「……!」
話し声が聞こえる。男の人っぽいけど……被身子ちゃん……大丈夫かな?
「よくやった社長!!」
「それでこそ社長だぜ!!」
「一生ついて行くぜ!社長!!」
「いーやダメだ!俺達がついて行くのは!!」
「「「姐さんただ1人!!」」」
この声……
「煩いですね。……なんの騒ぎですか?」
「流水さ……」
「「「姐さん!!!!!」」」
うるさ……
side渡我被身子
「あんたはッ……!!」
「…………お久しぶりですね。金輪際会わない約束をしていたはずですけど。」
流水さん……助けに来てくれた……私の流水さん……。
私の両親に向ける目は……明らかな敵意を持っていました。
「姐さん!ご無沙汰しております!」
「「「ご無沙汰しておりますッ!!」」」
男達が自分より小さい流水さんに全力で頭を下げる。
「…………まずはあなたたちから聞きましょうか。足……洗ったんですよね?……自分たちで洗えないなら……私が『洗ってあげましょうか』?」
男……社長さんは頭を下げたまま続ける。
「言い訳は何もありません!でもッ!俺達はあなたとの約束を反故にするほど馬鹿な真似は誓ってしておりませんッ!」
「…………本当ですかねぇ?……大丈夫だった?被身子ちゃん。」
私に向ける目は……すごく優しい……いつもの流水さん。
「流水さん!」
……正直に言うと怖かった。足が震えた。流水さんに会えないかと思った。
「……おいで?」
両手を広げる流水さん。
私は迷わず流水さんの胸に飛び込む。
「流水さんッ……怖かったです……。」
「うん。……そうだよね 。……遅れちゃってごめんね?」
目から涙がこぼれる。流水さんの匂い。声。……安心する。もう大丈夫だって思う。
優しく抱きしめてくれる流水さんは……極めて低い声で周りに問う。
「……私の被身子ちゃんがこんな泣いてんのに……何もしなかったってお天道様に言えるか?」
私が振り向こうとしたけど……流水さんに頭を撫でられてて顔が動かせない。まるで自分の顔を私に見せないように。
「「「誓えますッ!」」」
「…………ならいい。あんたらから事情を聞こう。話はこれからだ。オイ。そこの馬鹿共捕まえとけ。ちゃんと身ぐるみ剥げよ。車に押し込め。ドアは閉めんな。監禁罪になるからな。」
「「「応!」」」
「何ッ!?きゃっ!?」
「やめろっ!!何をっ……ぐもっ!?」
なにかがぶつかる音とガチャガチャという金属の音。何が……。
「大丈夫よ。被身子ちゃん。お姉さんに任せてね?」
流水さんが私の太ももの下に手を回し、私を片手で抱き上げる。
少し恥ずかしいけど……流水さんに抱き上げられるのは久しぶりなので嬉しさが勝った。
「被身子ちゃん。何があったの?」
「……私がお友達を駅まで送ろうとしたんですけど……雄英まででいいって言われて。雄英まで送って……帰ろうとしたら……この人達に捕まって……でも……社長?さんはあの人達に、捕まってもいいからこんな仕事はしないって……。そしたら流水さんが来て……。」
「……なるほど。教えてくれてありがとう。被身子ちゃん。」
流水さんが頬にキスをしてくれる。
さっきまであった怖さは……どこかに行ってしまいました。
「被身子ちゃん。お家で待ってれる?私今からちょっとお話があってね。」
「……寂しいです。」
素直な気持ちが口から出た。流水さんの首元に抱きつく。
「……ごめんね?いっぱい埋め直しするから……。ダメ?」
「…………早く帰ってきてくださいね?……そうしないと…………許しません。」
流水さんのお仕事の邪魔はしたくない。……でも寂しい。……今日は我慢してあげます。
「いい子。……被身子ちゃん愛してる。」
「……私もです。」
そのまま抱き抱えられながらお家に送られて、ソファに寝かされた。
「待っててね。私の愛しい被身子ちゃん。」
おでこにキスをされる。
「…………はい。待ってますね。」
顔が熱を持った気がするけど……恥ずかしくない。嬉しい。
「うん。」
流水さんは家を後にする。
かっこよかった……ドキドキが止まらないです。…………よし。流水さんのために腕によりをかけてご飯を作ります。流水さん……流水さん…流水さん!…………少しだけ……ほんの少しだけ……流水さんの事でいっぱいになってもいいですか?
side傷原流水
「…………んで?馬鹿共は?」
「暴れてますが……縛り付けたら動かなくなりました。声も抑えてます。」
件の場所に着くと、車もある程度整理されて何も無かったように見える。……見えるだけだけどね。
「ちょっと待て。電話する。」
「ウス。」
prrrrr……
『流水ちゃん?どうしたの?』
「白ちゃん。ごめんね。ちょっと相談したいことあるんだけど、空いてる倉庫……無い?」
『…………わかった。あるよ。場所は…………』
「姐さん。お手を煩わせて申し訳ありません。」
「大丈夫。何もしなかったんでしょ?ありがとう。」
「ムーーーッ!!ンーーーーッ!!」
「ッモーーーッ!!ヌーーーッ!!」
後部座席で暴れてるふたり。うるさいですねぇ?
「姐さん。黙らせましょうか?」
「ダメ。暴力振ったら事件になっちゃうわ。汚れ仕事は任せて。」
「姐さん……すんません。」
車に揺られて10分。目的の場所に着く。
「姐さん。連れてきたんですが……本当にあと姐さんだけでいいんですか?」
「いいよ。ありがとう。」
目の前に椅子に縛りつけられた被身子ちゃんの両親。
「…………。」
「…………。」
何も言わないのね。つまらない人。
「…………あとは任せて。」
「……わかりました。帰りの車も……いいんすね?」
「いいよ。……あぁ……あと。」
私は持ってきたとある紙に必要事項を記入。社長に渡す。
「これ。あげるね。手間賃。」
「え……これ……小切……手…………1000万……!?」
「「「えぇ!?!?」」」
「色々設備がガタきてるやつとか、あとは部下に焼肉でも奢ってあげたら?」
「いや……こんなに受け取っちまったら……まだ何も返せてねぇのに!」
「いいよ。本当に嬉しかったから。真面目になったね。これからも頑張って。」
社長……今は社長だけど前に壊滅させた敵集団のボス。過去の理不尽な金銭徴収を受けて社会に反発。殺しはしてなかったので私監視の元、建築及び引越し業者として再出発。幸いガタイのいい人ばっかりで、個性もパワー系ばかりなので仕事も上手くいってるみたい。
「姐さん…………本当に……くっ……」
社長が目頭を抑える。
「姐さん!一生ついて行きます!」
「姐さん!ありがとうございます!」
「姐さん!」「姐さん!!」
「大丈夫よ。ありがとうね。」
「ぐずっ……ずびっ……お前らッ!姐さんの奢りだ!焼肉行くぞッ!!」
「「「応!!」」」
「姐さん!ありがとうございますッ!!」
「「「ありがとうございます!!」」」
「ふふっ。いっぱい食べてね?」
「「「応!!!」」」
みんな去っていった。
さて…………あとはコイツらね。
どう処理しようかしら。