side傷原流水
「よいしょ。」
「ぎゃっ!」
血で拘束。こういうのは早い方がいい。
「傷原ちゃん!そっちはどないなった?」
「こっちも片付きました。」
「いや〜。傷原ちゃんと仕事すると早いわ。飴ちゃんいる?」
「いただきます。」
今日はファットガムと仕事……と言っても私は近場。違法薬物処理なので私達が呼ばれただけ。
「警察さん。じゃあとはそっちの仕事やんな?」
「はい。ありがとうございます。」
飴ちゃんを口に運ぶ。イチゴ味。美味しい。
「あ……私も薬物捌きます。ここである程度捌いちゃった方が早いでしょう。」
「いいんですか!ありがとうございます!」
「傷原ちゃんがやるなら俺もやるわ!二人でやった方が早いもんな!」
ファットガムは本当に優しい人ですね。人気者なのも頷けます。
「こっち違法。……こっち不明。多分未承認。……こっち合法。でも…………若干混ぜ物してあるかも。匂いが不穏。こっち合法。……これ違法…………。」
「……凄いなぁ……こんなに溜め込んでたんか。…………これはお金もたんまりやなぁ。」
二人でテキパキ捌く。すごい量だ…………これ鑑識だけで捌くの無理でしょ……。
「そうですね……これ違法……レートは知りませんが……これ未承認です……多分普通に生活できないくらいのお金は入ってたでしょうね。これも未承認です。」
入れる場所は警察に全部任せてる。何か不具合があったら大変だからね。押収品は警察組織の人間に管理させるのが1番です。
「そやろなぁ……バケモンやでこれ…………個性増強剤だけじゃなくて……普通に違法麻薬もあるやん。ここら一帯だけじゃなさそうな感じやで?」
「ハァ……めんどくさいですね。とっとと潰せるところ見つけてしらみ潰しにやるしかないですね。……あ、これ合法です。」
こういうのはコツコツだ。1つづつ1つづつ。しっかりきっちり潰していく。1度育った巨木を根っこまで撤去するのは根気が要りますからね。一緒です。
「「いただきます!」」
「傷原ちゃん。今日はありがとうな!」
お仕事は終わり、ファットガムにご飯を奢ってもらってる。
「いえいえ。こちらもいい経験になりました。」
「お互い様やな。」
「そうですね……うま。」
「ここの店適当に入ったんやが……結構当たりやな。美味いわ。」
とんかつのお店ですけど……衣サクサクで……お米も美味しいです。ソースが自由なのがいいですね。私塩かケチャップ派なので。
ファットガムは……とんかつ3枚……?
まぁあまり気にしないでおきましょう。
「そういえば今日はインターンですよね?」
「そうやな!学生さんは申し訳ないけどサイドキックのみんなに任せてるで。」
切島くんと鉄哲くんと……天喰くんもいるんでしたっけ?
3人を迎え入れるなんて懐の深い人ですね。
「よく1人増やそうと思いましたね。」
「鉄哲くんは切島くんの推薦でな?えらい熱血漢やったから気に入ってもうたわ!」
「ファットガムらしいです。」
prrr……
ん?パパ?
「もぐもぐ……ごくん。…………すみません。」
「ええやで。あんま肩肘張らずにいこうや。」
「ありがとうございます。」
ピッ……
「もしもし。」
『流水か!お仕事お疲れ様。少し話せるかな?』
「いいですよ。ファットガムさんいますけどいいですか?」
目線だけでファットガムに確認を取る。
OKマーク。ファットガムは大丈夫そうだ。
『ああ。大丈夫だ。……被身子から聞いたが……ママに……傷原操水さんに会ったのは本当か。』
被身子ちゃん…………言ってくれたんだ。
「…………。はい。ご自身が言ってたので。」
『………………そうか。わかった。……騙していたようで済まなかった。』
「いえ。気にしてませんよ。……普通話せないですしね。」
私でも無理です。そこまで無神経じゃないです。
『それにしても…………同じような存在は居るのだね。』
「…………白雲朧の事ですか。」
『よくわかったね。そうだ。黒霧のDNAが白雲朧と一致した。』
「…………なんか嫌な感じですね。敵連合の全員の身柄を今一度洗ってみてもいいかもしれないです。」
胸がモヤモヤする。……なんだろうこれ。
『ああ。ホークスくんから次々に情報が集まってる。いつでも動けるようにしておいてくれ。』
「……わかった。それだけ?」
『ああ。忙しいところ済まないね。じゃあ。』
「うん。」
ピッ
「誰からや?」
「パパです。公安務めなんで……。」
「なるほど。だから敵連合とか…………。」
?……ファットガムのとんかつ2枚どこ行きました?もしかして食べた?…………早。
「…………実はですね?」
「……そんなけったいな話があってたまるかいな。」
けったい……変でしたっけ?
「……そう思いますよね。」
「でも傷原ちゃんが言うってことはホントなんやろ?何考えてんねんオールフォーワンは。死人2人も使って悪さしよるって事かいな!胸糞悪いわ!他にもおるんちゃうか?」
ファットガムはプンプン怒りながら口にとんかつを運ぶ。
「……ただ…………そうなると身元が不明の人……荼毘……くらいですか。」
「荼毘……荼毘……あぁ!あの炎の奴か。あいつ身元わからんのか。」
「はい。出来る限り警察に調べてもらったんですけど……決定的な情報が何も無く……。」
「そら大変やな……誰かおらんのん?火の個性の家系で身内に身元不明の子がいる家庭とか。」
「限定的すぎません?……そんな……こ…………と…………。」
あれ…………そういえば……
あの人の……長男は山火事で……。…………。
「いや。……そんなことは……ないと思います。」
思いたいです。
……ピースが……ハマる音がした。
「なんや?なんかピンと来たんか?」
「…………これはまだ不確定な妄想なので……話せません。」
「…………なるほどな。よほどっちゅうことやな?わかった。今は聞かんとくわ!」
ありがたいです。本当に。
二人で完食。
「「ご馳走様でした。」」
お代は払ってもらった。別にいいんですけど……。割り勘でって言っても払わせてくれなかったです。頑なですね?
「じゃあ。気をつけて帰りや!俺はもう少しブラブラしたら帰るわ!」
「はい。ファットガムもお気をつけて。」
ファットガムに手を振る。
「おおきに!」
ファットガムは手を振ってからその場を去る。
あれくらい愛嬌があれば私も人気ヒーローなんですかね?
私の愛嬌は被身子ちゃんだけ知ってればいいです。
それはそうと…………これ確認取っておいた方がいいですよね。
公言するにしろしないにしろ……どちらにせよめんどくさい事に変わりは無いです。
「…………。」
エンデヴァーが……私と同じ立場。
しかもエンデヴァーは……もっと酷い状態。家庭が……半壊している状態。
そのうえで言う……んですか?
確認するんですか……?
長男くんの死体見つかりましたかって?
予め知っていた時のデメリットと……知らなかった時のデメリットが同じくらいなんですけど…………。どうすればいいんですかねこれ。
考えて数分。
「……ふぅ……。」
お腹痛くなってきました。
でも……
ピッ
『俺だ。』
「すみません。少しお話したいことがあって……」
これは…………きっと確認取らないといけないことです。