side傷原流水
私が起きてから3日経った。
バタバタしていたのであまりいい情報を入れられなかった。
「……タルタロス襲撃……ダツゴク……ですか。」
『ああ。日本全土に存在する刑務所のうち6つが崩壊。脱獄犯が多数放出された。』
オールマイトと通話。車が走る音が聞こえるので運転中だろう。
私が寝ている間に刑務所がいくつも崩壊。脱獄犯が日本全土に放り出された。彼らを『ダツゴク』と呼んで今ヒーローが確保に尽力している。
……一般市民も武器を持ち、自衛のために大暴れ。被害は広がる一方。
「……それで、全ての責任をエンデヴァーが背負う……と。」
『あぁ。市民の非難もマスコミの言及も……全て彼が背負った。』
「……。」
そうする他……無かったでしょうが…………それ以上にマスコミの当たりが強い。
「もしかして。荼毘が燈矢君だってバレました?」
『そうだ。ニュースすら見てないのか?』
「そんなもん見る暇無かったですよ。何人の怪我の手当したと思ってるんすか。」
『…………すまない。』
「まぁいいですけど。……それで。私はまだ1番聞きたいことが聞けてないです。オールマイト。」
『…………。』
「……緑谷出久は何処ですか。」
居ないのだ。何処にも。……誰に聞いても知らないの一点張り。同級生に聞いたら探すなと言われた……と。許せるかそんなもん。
『…………それは……。』
「……言えないんですね。だったらいいです。さっきニュースを見たらヒーロー引退者多数って記事も見ました。公安委員長が死んだ……という記事も見ました。」
『傷原くん…………。』
「トップ3がチームアップしたという記事も見ました。オールマイト。緑谷出久もそちらに居るのでしょう。…………私は私なりに……出来ることをします。」
『傷原くん!?何を……』
ピッ……
「あっ流水ちゃん。電話?」
「あ……優ちゃん。」
包帯まみれのマウントレディ……優ちゃんが話しかけてくる。
「怪我どうですか?」
「もう全然大丈夫!いつでもヒーローに戻れるよ。」
本当に強いですね。優ちゃん。
「ふふっ。私もそろそろヒーロー活動を再会しようと思ってます。」
「そうなの!?楽しみだね!」
「……でも。優ちゃんはエンデヴァー達を助けてあげてください。」
「え?エンデヴァー?なんで!?」
「私はやるべきことが残ってるので。」
「やるべきこと?」
「バカ弟子を……救ってこなくちゃいけません。」
side渡我被身子
「推測でしかねェけど……十中八九エンデヴァーたちといる!あのクソ野郎。」
今は雄英の寮。みんなと緑谷君のことで相談中です。
「推測?連絡をして確認を取ったんじゃないのか?君たち4人の師に。」
「幾度もしたさ。だがホークスは電話に出なかった。」
「ジーンズ先輩も。」
「流水さんも通話に出てくれません。」
「親父もだ。忙しいとは言え不自然だ。俺たちに隠し事してるとしか思えねぇ。」
「たしかオールマイトも戻ってないんだよね。」
確実に……皆何かやってます。何も相談せずに。……流水さんからは一言。『お願いね。』とだけメッセージが。……何がお願い……なのか。
「授業は停止。俺らは進級も留め置かれてる。ヒーロー科生徒は基本、寮待機と周辺の警備協力。細かい情報を得にくい環境だ。」
「ジーンズ先輩とヘラ鳥は病院でデクに接触してる。…………この手紙、雄英に近づくことすらビビってんなら誰が真夜中ドアに挟み込んだ?オールマイトしかいねぇ。あいつらきっと組んで動いてる。」
探さないで……でしたっけ。そんな無責任な手紙。皆から許されると思ってるんでしょうか。
「大人といるんなら、むしろ安心していいんじゃなウィ?」
「トップ3のチームアップしかニュースないぜ?オールマイトは仲間に入ってない。」
「だからだよ!俺はエンデヴァーたちよりデクの事もオールマイトの事も知ってる!多分考え得る最悪のパターンだ。」
「自己犠牲だけでヒーローしてますからね。面倒臭い2人です。」
「本当に渡我はブレないね?」
「じゃあ連絡手段をどうするか!?だな!」
「校長先生に直談判してみては?確かエンデヴァーは雄英出身でしょ?」
「それがいいかも!1回相談してみようぜ!」
後日。校長室。
「校長ハメましたね!?」
「彼らの話を聞いて対話の余地があると判断した。私は常にアップデートするのさ。」
エンデヴァーを誘い込むことに成功。
「何で俺のことスルーした?燈矢兄を一緒に止めようって言ったよな!?」
「焦凍……その気持ちだけで俺は救われているんだ。」
「俺は救われねぇよ…………緑谷だけは例外か!? エンデヴァー、デクとオールマイトを2人にしてるだろ?」
「……。」
珍しくヒートアップした轟くん。爆豪くんが手で制する。
「やっぱな……あぁ正しいと思うぜ。概ね正しい選択だよ。出久の事わかってねぇんだ。出久はイカレてんだよ……頭ぁ。……自分を勘定に入れねぇ……大丈夫だって……。」
イカれてる……今考えたら確かにそうですね。体育祭の時も。試験の時も。死穢八斎會の時も。文化祭の時も。
「オールマイトもそうやって平和の象徴になったから今のデクを止められねぇ!エンデヴァー!2人にしちゃいけない奴等なんだよ!」
「しかし……」
エンデヴァーがスマホらしきものを取り出す。
「それGPSのやつっスか?」
私は隠していたナイフ(訓練用の為刃無し)を飛ばす。エンデヴァーの手からスマホを弾く。
「なっ!?貴様……」
その勢いで皆がスマホに飛びつく。
「フン。とっととよこしやがれってんです。」
「こっ……これ借りていースか!? あのっ、俺偶々同じクラスになっただけスけど……。」
「僕も1年一緒に過ごしただけだけど……。」
「我々A組は彼について行き彼と行動します。ワンフォーオールがどれだけ大きな責任を伴っていようが緑谷くんは友だちです。友人が茨の道を歩んでいると知りながら明日を笑う事は出来ません。」
委員長……かっこいいじゃないですか。
「外は危険だ。秩序が無い。おまえたちまで……」
「大人になったね轟くん。私はヴィランの目的である彼が雄英に戻りたがらない事を踏まえチームアップを是とした。でもいいのさ。戻って来ても。合格通知を出した以上は私たちが守るべき生徒さ。」
「…………しかしデクを戻せばここにいる避難者の安全が……それに彼らの中にはまだ我々を敵視してる者も……」
エンデヴァーの言うことも一理ある。
「何も敷地面積だけで指定避難所を受け入れたわけじゃない。彼らには私から何とか伝えよう。…………文化祭開催に伴い強化したが結局出番の無かったセキュリティ、雄英バリア、その真価と共にね。いいんだよ。オールマイトだってここで育った。」
根津校長が私たちに頭を下げる。
「君たちの手で連れ戻してあげておくれ。」
了承した後、エンデヴァーに流水さんの安否を聞く。これが1番大事なんです。
「エンデヴァー。」
「……なんだ。」
「流水さんも貴方達と一緒にいるんですよね?」
「そうだよ。傷原先生もチームアップしてんだろ?」
「…………何も聞いてないが……。」
「「「え?」」」
side傷原流水
大雨の日。荒れ果てた都市部。……見つけた。
「緑谷出久。」
「……師匠……どうして……。」
「3日です。3日。協力者に要請して。あなたを探して。3日間。やっと見つけましたよ。このバカ弟子。」
「…………。」
「貴方を連れ戻します。緑谷出久。」
「……僕は……みんなを笑顔にしないといけないんです。」
「そうですか。……頑なですね。本当に。話は平行線。…………ただダツゴクを何人も仕留めたその腕……実戦で磨かれた戦闘力、そしてワンフォーオールは…………正直私が万全でも勝てるか怪しいです。」
「……じゃあ。」
「なので。協力者を用意しました。」
「協力者……?」
私の後ろに人影がひとつ。
「ハァ…………協力関係は今だけだ。」
「言ったじゃない。この子は自己犠牲が過ぎるって。みんなと協力しろっつってんの。」
「…………それもまた。貴様にとって粛清対象か。」
「そゆこと。」
緑谷出久が驚いた表情を見せる。
「し……師匠…………なんで……。」
「なんでも何も……言ったじゃない。私は裏の世界で名前が知れてるって。」
「…………貴様。殺すつもりは無いが…………無駄な抵抗はよせ。」
「ヒーロー殺し……ステイン…………!」
あっちが正式にチームアップ組んでるなら…………私たちはアウトローでチームアップだね。
「目標。緑谷出久の確保。」
「了解。」