side渡我被身子
今日はみんなでオールマイトに招集をかけられた。流水さんもいる。……お菓子食べてるけど。
「猶予ォ!?」
「アメリカの戦闘機から頂いた分析データで判明した。本来なら死柄木は明日にも万全の身体となるハズだった。少なくとも一週間、死柄木は動けない。スターアンドストライプが遺してくれた最後の猶予だ。」
アメリカのナンバーワンヒーロー。スターアンドストライプが個性で死柄木弔の身体に爆弾を仕込んだらしい。……命と引き換えに。
「奪われた新秩序が毒のように死柄木をむしばんだ。いくつ持っているのかは分からないが、相当数の個性が損壊したと見られる。一般人の避難も進みつつある今、残存ヒーロー総出で死柄木たちの行方を捜索している。」
……流水さんは何してるんですか?お菓子美味しそうですね?
あー……口にあんなに付いて……
「しかし痛手を負ったAFOがどう動くか……これまで以上に読み辛い。見つかっても見つからなくても結局は総力戦になるだろう。…………動けないと言ったが依然最凶の敵、死柄木弔。同じくオールフォーワンの本体。エンデヴァーに匹敵する炎、狂気の男、荼毘。大手企業の御曹司でありながら自身の個性で敵連合全体をサポートする男、白灘睦月。もう1人……今は名前を出せないが強力な敵。残る6体のニア・ハイエンド。解放戦線の残党。そして未だ捕まることなくAFOに従い暴れ回るダツゴク……。」
相当な戦力ですよね。……多分強力な敵の1人は流水さんのママさんです。
「対してこちらは前線に立つ者はもう半数以下に減ってしまった。スターの殉職を前にして敢えて言う。君たち自身と君達が守りたいモノを守る為にこの猶予を使って少しでも力を底上げしてもらう。」
「ンなもんとっくにやっとるわぁ!」
「郡訝・蛇腔以降プッシーキャッツの圧縮訓練を続けてたんです!」
「我々は緑谷と共に征く者。死柄木らを止めるまで戦い続ける所存。」
「所存。」
「私だって。」
「僕だって!」
「俺も!」
……本当に頼もしいです。皆の力があれば……きっと。
「俺の新境地クラスターが通用するか確かめてえ。ワンフォーオール相手は対死柄木・オールフォーワンへの一つの指標になる」
「緑谷!俺の事殴ったりしてくれよ!俺はもっと硬くならなきゃいけねえんだよ!」
「わかった!」
「僕達でスターの意志をつないでいかねばな。」
みんなで話し合ってる最中……流水さんが居なくなっていることに気付く。……どこに行ったんでしょうか。
グラウンド。みんな思い思いの訓練を重ねる。
「渡我さん。」
「八百万ちゃん。どうしました?」
「渡我さんの知恵をお借りしたくて。」
「え?八百万ちゃんが?」
「ええ。」
深刻そう。……なんだろう。
「その……私は体育祭の時から考えていたんですが、あまり形に出来ず……。対人戦闘能力が高く、武器の扱いも上手い渡我さんなら私の近距離戦闘の補助になる武器……装備のきっかけをいただけるかもと思いまして……。」
「いいですよ。どんなものを考えてるか教えてください。」
「実は……。」
しゃがみながら地面に棒で絵を描く八百万ちゃん。上手いですね。私こういう芸術センスないので羨ましいです。
「大盾と近距離武器の長物……そして肩にガトリングガン……ですか。」
「はい。自分の負担にならず、再上限動けるのはこれかな……と。」
大盾と長物は一旦置いておいて、肩のガトリングガンはいい発想だ。弾丸は八百万ちゃんなら無限に出せるから面制圧が可能。問題は……
「大盾と長物ですよね。大きな問題は。」
「……やはりそうですか。」
「うん。どちらも大きくて重い。閉所じゃ扱えない上、扱いが難しい武器2つは……ちょっと大変かもです。」
長物は私が頑張って慣れたので……大盾は……視界が塞がるので私は好きじゃないです。
「……なるほど。ありがとうございます。参考になります。」
「近距離の武器は、どちらかと言ったら長物じゃない方が扱いやすいです。力も込めやすいので。」
「なるほど……じゃあナイフとかそちらの方が……」
「はい。……流水さんくらいの長さの武器の方が……扱いやすいかと。」
「カトラスと……鉈ですか。あれくらいの長さ……ふむ。」
「大盾は視界が塞がらなければ個人的にはアリです。八百万ちゃんはもう少し相手の死角から攻撃することも覚えていいかもです。」
八百万ちゃんが立ち上がる。
「わかりました。渡我さん。さっきの反省点を踏まえて、私と組み手してくれませんか?」
「……怪我しても知りませんよ?」
「承知の内です。」
「ハァッハァッハァッ……」
「フゥ……だいぶいい動き出来てるんじゃないですか?」
組み手を数本。本気で切りあった。体育祭の頃とは比べ物にならないくらい戦えるようになってると思う。
「ハァ……ハァ……本当に……ハァ……身体能力は……ハァ……どうしても追いつけませんね!」
「取り柄ですからね。……勉強では毎回負けてますけど。」
「ふふっ……ハァ……ハァ……それが……取り柄ですから。」
「……ふふっ。」
八百万ちゃん……本当に面白い人ですね。世間知らずですけど……懐が深くて話していて不快にならないです。
「ハァ……ハァ……渡我さん。……私の事……百と読んでくださいませんか?」
「……え?」
急な提案。……たしかに私は皆に苗字+ちゃんで呼んでますけど……。
「私の良きライバルとして…お互いに切磋琢磨してゆきたいのです。……ダメですか?」
そんな……そんな事言われなくても……
「いいんですか?……よろしくお願いしますね。百ちゃん!」
「渡我さん……いえ被身子さん!改めてよろしくお願いしますね!」
二人で握手。……へへ。こういうのもいいですね?
「あっずるいヤオモモ!私も被身子って呼んでいい?」
「私も〜!」
「私は既に被身子ちゃんって呼んでるわ。ふふん。」
「梅雨ちゃん?何のマウントですか?」
嬉しい誤算と言いますが……皆とまた少し仲良くなれた気がします。
「総力戦っつってたけどさ、敵の大将二人は今弱ってるんじゃね?ギガントマキアも拘束して眠らせ続けてんだろ?大将二人見つかりゃ今度こそいけそーじゃね?」
上鳴くんと峰田くんの話し声が聞こえる。
「ざっくり3点、甘ぇ。」
爆豪くんが突っ込む。聞いてたんですね。
「ええぇ……3つも甘いの……?」
「まず1つ。多分見つからねぇ。…………これまで脳無格納庫や死柄木のアジト、研究施設は見つかってもオールマイトに敗北後、奴自身の所在は摑めた事がねぇ。逃げ隠れるなら世界一なんだよ。」
「その2は、そもそも前回戦った死柄木が不完全な状態だった……ですわね。こちらの甚大な戦力減を鑑みると五分と言えるかどうか。」
「それだ。」
百ちゃんも一言。爆豪くんと仲良くなりましたよね。紅茶一緒に作ってましたし。
「んで……3、火蓋を切るタイミングは向こうが握ってる。アメリカ戦で個性サーチが消えたとしても恐らく後手は必至。だからこその今のヤケクソ人海戦術なんだよ。」
「だからせめて出方を、動きを誘導できるように早速僕も捜索に出る。」
緑谷……緑谷くんなんですかその頭!?プスプスですけど!?
「……僕達だろ。」
飯田くんのチョップ。……緑谷くんのストッパー役が同性に居るのは助かりますね。
「うん。ありがとう。」
side????
雄英高校敷地内の森の中。
「やるしかないのよ。あの人が再び指示を出してきた。大丈夫。これまで通り傍受されていても民間の日常に取れるよう暗号化してあるわ。ここなら監視の死角になるんでしょ!?大丈夫だよ。」
聞きたくはなかった。
「神野までちゃんとオールフォーワンの言う通りできてたじゃない。やらなきゃ私達が殺されてしまうの。」
顔色が皆と違ってたから……何かあったのか不安に思っちゃった。
「優雅。」
青山くんが……内通者だったなんて……。
「入学間もない頃うまくあの人の要望に応えたじゃない。合宿でも誰にもバレずに居場所を教えられたじゃない…………私たちだって一度だって好きでやったことはないわ。けれどもう遅いのよ。遅すぎるの。」
「ママン……パパン………でも僕。」
「私達はあなたにただ幸せを摑んで欲しかった。個性を持たず生まれたあなたが皆から外れないように皆と一緒に夢を追えるように…………こうなる事がわかっていたならしなかった…絶対に…オールフォーワンに個性を貰うなんてっ……。」
個性を……もらう……?青山くんは無個性だったってこと……?
「私達はもう関わってしまったらもうAFOからは逃げられないのよ!」
「ずっと苦しかった。絶対に疑われないように振る舞ってきたよ。罪悪感に押し潰されるから無理矢理気丈に振る舞ってたよ…………神野でAFOが捕まった時、卑しくも勘違いをしてしまったんだよ。これで皆と一緒にって!!」
青山くんの涙……なんでそんな顔が……!
「ああ優雅、許してちょうだい。愚かな私たちを許して……。」
青山くんの両親も泣いている……なんでそんな顔が!!
「僕、ママンとパパンを守りたくて、死なせたくなくて。」
「優雅お願い……私達を助けて……優雅。」
誰か助けを……
「もう大丈夫。葉隠さん。……私が来た。」
ふいに上から声をかけられる。
その姿は……まるで……
side傷原流水
……青山くん。…………苦しかったよね。オールフォーワンに利用されて。辛かったよね。みんなを裏切って。
「……さっきまでの話……聞かせて頂きました。」
木から飛び降り……青山家族に歩み寄る。
「何の話かしら?何かとんでもない聞き間違いでも!?」
「一応聞いておきます。……内通者はあなた達ですか。」
ボイスレコーダーを見せる。詰みだよ。もう。
「…………。」
「………………。」
沈黙。
「…………USJも合宿も。」
「!」
「優雅!」
「僕が手引きした。」
青山くん……もう……心が…………。
「傷原先生……僕はクズの敵だ。」
「優雅逃げるんだ!!」
青山家族が逃げる。
逃がさない。みんなの為にも。
青山くんの為にも。
「僕はッ……パパンとママンを救いたいんだッ!!ネビルレーザー!!」
光線が飛んでくる。この程度……え?
「私の体は光を屈折させる性質がある!!」
目の前で止まった。……葉隠さんが光線を分散させたんだ。
「皆死んじゃってもおかしくなかったんだよ。日本中がおかしくなっちゃったんだよ!何考えて教室にいたの!?寮で皆と暮らしていたの!?ねぇ青山くん!!」
「うわあああああああああああっっっ!!!!!」
「違うんだ!!」
「優雅はー……」
もう……見てられない。
「……この話は一旦終わりです。」
青山夫妻共々……青山くんを血で拘束する。
「…………葉隠さんに見られるとは思ってみませんでしたが……一旦……私の言うことを聞いてもらっても?……この話をここで処理するには救いが無さすぎる。」
……オールフォーワン……。
私は3人を拘束後、スマホを開く。
心が重い。……生徒である可能性も考えていたが……本当とはね。
私もそうとう心にきてるみたいだね。先生として過ごし過ぎた。