side傷原流水
「なるほど、AFOから個性を与えてもらい支配されるに至ったと……個性の付与は約10年前か……。」
A組の教室。警察の方とオールマイト、根津校長、プレゼントマイク先生を集めて一旦事情聴取。青山一家は拘束してある。
……A組の子達もいるけど……あんまり聞かせたくない。
「今無事という事は奴らの様な裏切ったら爆発する仕掛けは無いようだが……。」
……奴ら。多分緑谷くんに送ってこられた刺客のことでしょうか。裏切ったら爆発する個性なんてあるんですね?都合が良すぎますよ……。
「傷原さんに言われるまで信じれなかったが……まさか生徒だったとは……。」
塚内さんに話を振られる。
「……はぁ。私も信じたくなかったですよ。」
「……よく気がついたね。」
「…………元々内通者は常に探ってました。根津校長に許可を取って。……私が壊理ちゃんと一緒に居たのも、住む場所をこちらに移したのも全部この為です。壊理ちゃんと一緒にいれば雄英での些細な変化に気付きやすいですし、住む場所をこちらに移せば色々と融通が効きますからね。…………こんなに早く見つかるとは思ってませんでしたけど。……生徒全員を観察してて正解でした。」
「えぇ!?そんなことしてたの!?」
本当に大変でした。
「はい。USJに敵が来てからちょくちょくと。……ざっと半年強くらいでしょうか。ある程度標的を絞ったとはいえ……生徒を疑うのは心が痛みましたが、これに関しては些細な問題です。…………本当の問題は……こちらでしょう。」
青山一家。……オールフォーワンの恐怖によって支配された家。
「できれば君たちは下がっていなさい。」
根津校長がA組の子に注意をする。
「下がっていられる。」
「……道理がねェよ。」
ですよね。責任感の強い子達です。……きっと自分達を責めてるでしょうね。
「葉隠さんが見つけてなかったら何するつもりだったんだ。」
「青山ッ……嘘だって言えよ!」
「てめェも元無個性だとは……世の中狭ぇな。」
「……しょうがないなんて口が裂けても言えませんね。」
怒る子達。悲しむ子達。何も言えない子達。……これもオールフォーワンの思うツボですか?
「…………生憎まだ我々は秩序に生きようともがいてる。オールフォーワンについて知ってる事を洗いざらい喋ってもらう。」
青山父が重い口を開く。
「知ってる事は何もない。私たちはただ頼まれたら実行するだけだ。失敗すれば殺される。噓ついても殺される。」
「どうやって?」
「見せられた。そうした人間が処分される様を。警察に逃げ込んだ者は出所後に殺された。逃げられなかった。」
……恐怖を植え付ける事に躊躇いが無いですね。……悪の帝王ですか。
「どこにいても居場所がバレる。必ず死に追いやられる。言われた通りにしてどうなるか優雅は知らなかった。ただ誰にも勘付かれてはいけないとだけ。悪いのは私たちだ。」
「……。」
被身子ちゃん……青山くんの両親は…………やっぱりなんでもありません。
「自分が殺していたかもしれない人たちと僕は仲間の顔して笑い合った。」
青山くんが口を開く。
「笑い合えてしまったんだよ……同じ元無個性でオールフォーワンと戦う重圧を背負った彼を知って自分の惨めさに絶望した。彼の心配より先に絶望した自分に絶望したんだ。性根が腐ってんだよ。青山優雅は根っからの敵だったんだよ!」
……オールマイトに師事した緑谷くんと……オールフォーワンに縋った青山くん。そこになんの違いもありません。あるのは……相手が悪かった……っていうだけ。
「…………青山くん。あの夜のチーズはオールフォーワンに言われてやったのかよ。違うだろ!?あれは僕が気づけなかったSOSだったんだ!!だって……取り繕いもせずに泣いているのはオールフォーワンの言う通りにできなかったからじゃあないだろう!?」
緑谷くんだからこそのセリフ。緑谷くんじゃないと……言えない言葉ですよね。
「オールフォーワンに心を利用されても全て明け渡さなかったヒーローを僕は知ってる。心が圧し潰されただけだ。罪を犯したら一生敵だなんて事はないんだ。」
緑谷くんが手を差し出す。
「この手を握ってくれ青山くん。君はまだヒーローになれるんだから。」
青山くんの目が見開く。……及第点ですね。
「待って緑谷くん。三茶、青山の口を塞いでおけ。拘束中だ。手は取れない。情報はどうあれオールフォーワンに加担した罪は消えない。それに状況から安全と推測しているだけで、まだ奴らのような仕掛けが無いと言い切れない。」
三茶……猫の警察官さんが青山くんの口を塞ぐ。
「セントラルの検査結果が出るまでこれ以上彼に喋らせるのは良くない。お母さん、お父さん、我々が神野の強襲をかけることを何故報告しなかった?」
「こちらから連絡はできない。向こうが求めた時のみ、その都度連絡先が伝えられ、終わればすぐに使えなくなる。」
「捕まっても辿れないように……か………ならば………。」
一応……釘を指しておこう。
「…………緑谷出久。……A組の皆。1度心に留めておいて欲しい。君たちは優しすぎるから……青山くんを救おうとしている。私たちが救おうとしてない訳じゃないけどね?」
「流水さん?」
「罪を犯したら一生敵じゃない訳無い。罪を犯してしまったら一生敵のレッテルは貼られ続ける。青山くん……青山一家は既に敵一家。恐怖で支配されていたとはいえ、あろうことかオールフォーワンに加担していたとなれば……この環境はいとも容易く崩れ去る。覚えておきなさい。罪は敵。罪には罰。」
「……ごめんなさい。師匠。」
「ただ。」
「……ただ?」
「それはそれ。これはこれ。青山くん一家の問題解決はこれから急ピッチで考えるとして、救うことが出来るのは極小数の人達だけ。……ヒーロー。期待してるわよ?」
「「「……はい!!」」」
いい子達ね。
私も甘いわね。本当に。
「そうだ!……塚内さん。」
「ん?」
「オールフォーワンは見つからない。それが今の見方でしょう!?だったら……青山くんを……!」
「出方を……死柄木たちの動きを誘導出来るように……」
「見方を変えれば現状ただ一人、青山さんだけがオールフォーワンを欺く事ができるかもしれない!」
なるほど。救おうとしてるからこその発想……頼もしい限りですね。
「青山くん、もう一度言うよ。君はまだヒーローになれるんだ!」
「待て……待て待てガイズ。飛躍しすぎだ。傷原先生が言ってただろ。罪は罰、言いたかねぇけどさ。……救えと言った矢先何言ってんだと思うかもしれねぇが、おまえらが一番の被害者だ。今更信じられるのか。」
「それは過去の話でしょう。彼の心の内を救い取れなかった俺たちの責任でもあります。だからこそ今泣いて絶望しているクライメイトを友として手を取りたい。手を取ってもらいたい。それが彼と俺たちが再び対等になれる唯一の方法だからです。」
「合宿でひでー目に遭ってっからなァ。3発くらいハウザーぶちこんでトントンだな。」
「つっこみ辛すぎるからやめろ。」
爆豪くんらしいちゃらしいですけどね?
「そうだぜ。青山はAFOに勝てねぇと思ったから従っちまったんだろ。でも今は違ぇから止めようって親御さんに言ってくれたんだろ。緑谷を止めに行った時、誰か一人でも無個性を責めたかよ!?涙こらえて隠し事してた奴嫌いになったかよ!?青山!まだ終わってねぇんだよ!一緒に踏ん張れるんだよ俺たち!!」
「盛り上がってるとこ悪いが、まずは青山一家に捜査協力を頼むとしてオールフォーワンには嘘は通じない。噓をつけば処分されると先程聞いている。君たちの気持ちは分かるがここは冷静に。」
「……必要と思ってある人に通話を繋げておいた。今から画面を映す。」
モニターにとある人は映し出される。
『……見えてるか?』
「「「相澤先生ェ!!」」」
相澤先生……左足無くなったんでしたっけ。他に外傷は無さそうですね。良かったです。
『緑谷、オールフォーワンを誘導すると言っていたが、何か具体策はあるのか?』
「いえ……それは……」
『だろうな……ったく……塚内さん、この責任は見抜けなかった担任の俺にあります。ただ気持ちはこいつらと同じです。…………青山、俺はまだおまえを除籍するつもりはない。』
甘いですね。相澤先生。……あなたがそう判断するなら従いましょうか。
『A組担任として俺に考えがある。塚内さん、一応青山とご両親には話が聞こえないよう配慮お願いします。』
「ああわかった。」
相澤先生との作戦会議が始まる。そこまで時間をかけずに大まかな形だけでも纏まった。……やることいっぱいだね。
「各所検証が必要ではあるが……たしかに実現性が高い。」
「やってみる価値はあるか……内容の検証は本部で詰めることにします。」
『お願いします。』
そのまま青山一家はセントラルに運ばれて行った。あとは相澤先生に任せます。
……できることをしましょう。全員で。
きっと最終決戦は……もうすぐです。