side傷原被身子
「「「ヒミコちゃん先生〜!」」」
保健室のドアが開かれる。
「……どうしましたか?」
「勉強教えて欲しいの〜!」
「ヒミコちゃん先生雄英だったんでしょ?勉強難しくて……。」
「宿題多いし!助けてヒミコちゃん先生!」
「私の時と大差ないですよ。……何処ですか?」
「「「やった〜ヒミコちゃん先生大好き〜!」」」
「せめて敬語使ってください。私これでも先生なんですよ?」
「「「はーい!」」」
本当にわかってるんですかね?
あの大戦から10年。私は雄英高校の保健室の先生をしている。
同級生の人達とは連絡を取りこそすれ……あまり交流は少ない。
「そういえばヒミコちゃん先生ってデク先生と同級生だったんでしょ!?」
…………1人を除いて。
……ヒーローデク。先の大戦の英雄であり、ビルボードチャートにも名を連ねるプロヒーロー。緑谷くんが雄英に赴任してからというもの、入試の倍率が跳ね上がった。ヒーローデクの名前は強いですねぇ。
……それに伴ってヒーローデクと同級生の私に色々厄介な質問が来る。
「ねーねー!デク先生と付き合ってるの?」
「思った!ヒミコちゃん先生指輪してるもんね!もしかして結婚してるの!?」
「デク先生可愛いもんね〜。その上であの時の戦い……かっこよかったなぁ。ギャップ凄いよね!」
「「わかる〜。」」
「…………。」
本当にめんどくさい。私が同級生バレする度に聞かれる。付き合ってるんですか。結婚してるんですか。デク先生のどこが好きになったんですか。…………はぁ。
「……気持ち悪いのでやめてください。」
「気持ち悪……!?」
「私の指輪はデク先生とじゃないですし、私は雄英に来る前から心に決めている人がいたので普通に失礼です。」
「なんだぁ〜ちぇっ。つまんないの。」
「えぇ〜。デク先生にも春が来たと思ったのに。」
「…………謝れない子には罰が必要ですよね??」
「「「ごめんなさい。」」」
本当に……めんどくさい。
「それに…………私の結婚相手は今オールマイト教頭とお話してますよ。」
「「「えーー!見に行こ!!ヒミコちゃん先生!」」」
「…………忙しいですね。勉強はいいんですか?」
「いいよ!いこいこ!今日暇でしょ?」
「……しょうがないですね?少しだけですよ?」
「わーい!いこいこ〜!」
はぁ……本当に元気。困っちゃいます。
side傷原流水
「お変わりないですね。オールマイト。」
「君もね!……っていうか本当に変わらないね?時間が止まってるのかい?」
「どうでしょうか。毎日トレーニングはしてますよ。」
今日は久しぶりに雄英に顔を出した。事務所を作ってからというもの……パトロールだったり公安の仕事だったりインターンだったり大変で大変で……保健室の先生なんてやってられなかった。
サイドキックも3人しかいないしね。あんまり無茶できない事務所なんですよ。まぁその3人が大層有能なので他にいらないってのもあるんですけんども。
今日は緑谷くんに授業をお願いされたので顔を出した。もうそろそろかなぁ?
知ってる先生がいっぱいでたっぷり甘やかされました。……私もう30ですよ?子供に見えるんですかねぇ?
「本当にストイックだね。休んだ方がいいよ?」
「今でも爆豪くんといい轟くんといい暇さえあればいろーんな人から模擬戦頼まれるので、身体鍛えてないとやってけないんですよ。」
「…………君は休んだ方がいいよ?」
コンコン。
ノックだ。緑谷くんかな。
「いますよ〜。」
「流水さん♪」
「おや?被身子ちゃん。どしたの?」
被身子ちゃんは雄英の養護教諭……保健室の先生になった。大学で教員免許を取得、その後医大に入って医師免許も取得。今研修医として少しづつだが実績も重ねてるとか。リカバリーガールの口添えと修行もあってメキメキ成長してる。
かくいう私も被身子ちゃんの雄英卒業と同時にリカバリーガールに医大にぶち込まれて免許取得することになった。もう研修医の期間はすぎちゃったからこれからはリカバリーガール無しで色々できるように。
今まではリカバリーガールが色々黙認してくれたからね。ありがたや〜。
あっそういえば被身子ちゃんとは正式に結婚しました。渡我じゃなくて傷原姓になりました。
名前変えなくてもいいんじゃないかと思ったけど、変えることが私の覚悟ですなんて言われた日にゃもう被身子ちゃん大好きモードだった。
「えっえっえっ……ヒミコちゃん先生!結婚相手って……」
およよ?生徒さん居るね。被身子ちゃんもう仲良しなんだ?
「「「ブラッドロータスじゃん!!」」」
…………有名になったねぇ。私も。
ホークスくんのせいで今ヒーロービルボードチャート101位。100位になると名前がガツンと有名になるから絶対に上げるなって言ってる。上げたら公安の仕事手伝わないよとも。
それでも先の大戦の影響もあってか職場体験や、インターンシップのお願いが絶えない。……身体いくつあっても足りませんね。
「そうですよ?私の大好きなフィアンセです。」
「フィアンセでーす。」
被身子ちゃんが横に来たので抱きついてみせる。
「「「キャーーー!」」」
被身子ちゃんは私のところから独立すればすぐ100位以内入れそうなのにもったいない。
そんな話ホークスくんにしたら、
『傷原サンもあげようと思えばサクッと20位くらいまであげれますよ。』
なんて言われたから黙っといた。公安委員長の権力怖すぎ。
っていうかギャングオルカといいファットガムといいベストジーニストといい……私に対する接し方が仕事内外問わず全く変わらないから、一緒に仕事すると目立つ目立つ。
名前がめっちゃ有名だけどビルボードチャートが思ったより低い人って認識になってる。……もっと低くていいんだよ。
「流水さん?オールマイト教頭とのお話はもういいんですか?」
「ん〜?オールマイトとは世間話に来ただけだから大丈夫だよ〜ん。」
「そうですか。仲良しさんですね。」
「なんだかんだね。」
「傷原くんッ……!やっと私と仲良しと……!」
涙脆くなりましたね。ジジイじゃないですか。
「……勝手に感動しててください。……あれぇ?緑谷くん遅いなぁ。」
もうそろそろ来てもいい頃なんだけどなぁ?
「デク先生まだ来られないんですか?」
「あー……多分デク先生色々資料作るのに熱入っちゃってるんじゃない?いっつもそうだし。」
生徒ちゃんからのタレコミ。…………治んないんですねぇ?
「……へぇ。生徒待たしてるんですか?」
これはお説教が必要ですね?
「…………南無阿弥陀仏だ。緑谷少年。」
「被身子ちゃん。緑谷出久の所に連れて行って欲しいな。」
「…………ハァ。みなさんは帰った方がいいですよ。デク先生のみっともない姿見たくないでしょ?」
「「「みたいです!」」」
元気だねぇ?
職員室。
私が入ると……目の前の席。パソコンをガタガタ叩いてる男1人。
ほかの皆さんと目が合いましたが……スっと逸らしてくれる。
……それでは。
「緑谷出久。」
「…………!!」
緑谷くんがこちらに振り返らず時計を見る。
約束の時間5分遅れ。
ギギギ……と音が鳴るようにこちらに振り返る緑谷くん。
「あ…………えーっと…………ブラッドロータス……さん。」
「…………。」
「師匠!!すみませんでしたァ!!」
「緑谷出久!!あなたって子は!!」
土下座。そのまま説教コース。何度言っても治らないんですから!!このスカポンタン!
授業開始前にはしっかり切り上げて、そのまま授業を行う。
色々質問してくる子も居て、結構授業してて楽しかったね。最後にデク先生の師匠ですって言ったらめっちゃ驚かれた。そんなにですか?
帰り道。
隣には被身子ちゃん。
「……今日は疲れたよぉ。」
当たり前のように腕を組んで歩く。私が被身子ちゃんにもたれかかる形だ。
「ふふっ。そんなだらけきった姿気月さんに見られたら大変ですね?」
「別にいいよ〜。帰ったら才子ちゃんに紅茶挿れて貰うもんね〜。」
「私も先輩の紅茶飲みたいです!」
「みんなと一緒に飲もうね?」
「今日は事務所誰が居るんですか?」
「えーっと……冬美さんと……才子ちゃんと……筒美さんと……くらいじゃない?お菓子買って帰ろっか。」
「いいですね!みんな喜びますよ。」
何気ない会話。本当に楽しい。
「……楽しいねぇ。」
「はい。…………流水さん。キスしたくなっちゃいました。」
「……いいよ?しよ?」
伸びた影がひとつになる。
夕焼け空の茜色は私たちの心を表してるようだった。
「……好きだよ。被身子ちゃん。」
「ずっとずっと好きです。流水さん。」
このままの平和が続くと信じて。
きっとこれは……
私の……私だけのヒーローと出会う物語。
ご愛読ありがとうございました。
最後の方駆け足になりましたが、これで本編のストーリーは完結です。
今後「私のヒーロー」は更新頻度を下げ、「私のヒーロー」の外伝を執筆する予定です。
「私のヒーロー」の今後の執筆方針なんですが、気が向いたら少しづつ日常会を入れていく予定です。1話完結のさっくりした話を何本か出す気でいるのでよろしくお願いします。
次の主人公ちゃんは既に作品内に出てきているので、次の私の小説でお会いできたら幸いです。
拙い文章でしたが、長い時間ありがとうございました。