私のヒーロー   作:おいーも

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筒美火伊那が求めたもの②

 

 

 

 

 

side筒美火伊那

 

 

 

ピピピピピッ……

 

「……ん……」

 

 

今日もアラームで目が覚める。

 

雨音が少しだけ心地いい。

 

このままベッドに潜り混んでると2度寝しかねないので上半身を起こす。

 

 

7:15……そういえば今日は休みだっけ。いつものルーティーンでアラームを付けていたみたいだ。少し後悔。

 

ベッドの周りの人形を整え、カーテンを開く。外の様子は確認しにくいが、傘を差してない人がちらほら。そこまで雨足は強くないのか。

 

今日はこれといって予定は無い。

 

…………何もない休日。

 

 

 

 

そのまま洗面所に向かい歯を磨く。

 

歯を磨きながら朝食の準備。リビングに向かい、冷蔵庫を開く。……めんどくさいからシリアルでいいか。

 

 

…………流水ちゃんに怒られそうだな。やめとこ。

 

前にシリアルばっかり食べてたら流水ちゃんに怒られた。しっかりいいもの食べなさい……ってね。なんなら朝食作りに来る勢いだったから流石に断ったけどね。

 

旦那さんから何されるか分かったもんじゃない。

 

 

一旦歯磨きを終え、再度冷蔵庫とご対面。

 

卵と……ハムと……野菜と……

 

適当にフライパンで火を通し、サッと1人分の野菜炒めと目玉焼きを作る。炭水化物はあまり摂らない派。パン一個で済ます。

 

ウォーターサーバーから水をコップに汲んで、机に座っていただきます。

 

 

…………今日は何しよう。

 

正直仕事をしている方が楽だ。休日は何をしたらいいのか分からないから。

 

 

自己研鑽……とか言う人もいるけど、そんな事言ってられるほど余裕なんてない。楽な時には楽したいからね。

 

 

 

 

「ご馳走様。」

 

食器を洗い、パジャマのままベッドに戻る。

 

何気なくスマホを開く。待受けは職場の皆。私がスマホを買った記念で撮ろうと言われ、当時は渋々撮った記憶がある。

 

 

「……ふふっ。」

 

皆笑顔なのに自分だけちょっとムスッとしてる。本当に写真写りが悪いな。

 

……あの頃はどうなるか不安だったけど……何とかなるもんだね。

 

 

 

『ナガンさん!これ誕生日プレゼントです!いつもお世話になってるんで、感謝の証だと思ってください。』

 

 

『ナガン先輩。本当の助かります。ナガン先輩居るとパトロール楽なんですよね。色々勉強になりますし。』

 

 

『ナガン様。紅茶入れましょうか?お仕事手伝いますよ。まだまだ未熟ですが、書類仕事は任せてくださいまし?』

 

 

『あっナガンさん!お暇でしたらお昼一緒に行きません?美味しい中華屋さん見つけたんですよ!』

 

 

 

「…………。」

 

目の前の人形達から、白いうさぎを手に取る。

 

ちょっとくたびれたうさぎ。

 

誕生日プレゼントと言われて貰ったうさぎ。私みたいだからって。意味がわからない。

 

人形を抱きしめる。

 

「…………はぁ。」

 

 

 

私ってうさぎかもしれない。

 

だって休日……何もすることなくなったら寂しくなってる。

 

 

「…………ふふっ。」

 

それだけあの職場に救われてるんだね……私。

 

 

公安時代は考えられなかったな。誰かと仕事をするのがこんなに楽しいなんて。

 

誰かと共に時間を過ごせるのが……これほど自分を満たしてくれるなんて。

 

……あの頃になんて戻りたくない。皆をその道に歩ませない。汚れるのは自分だけでいい。

 

 

「…………そうだね。」

 

だから今の仕事を精一杯しよう。そのための休日だ。

 

もう一眠りしよう。休日くらい許される。

 

布団の魔法は……きっと私をいい夢に誘ってくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

prrrr……

 

 

スマホ……アラーム?

 

違う。電話?

 

跳ね起きる。

 

スマホの画面は…………流水ちゃん?急用かな?

 

何かあったのかも。

 

そのまま電話に出る。

 

 

「もしm……」

 

『ナガンさん!お休みのところすみません。』

 

 

流水ちゃんの後ろからキャイキャイ声が聞こえる。多分何かあったわけじゃ無さそうだ。

 

「あ……うん。大丈夫だよ。……それで?」

 

皆の声を聞くと少しだけ嬉しくなる。絶対内緒。

 

 

『えっとですね、仕事の都合でナガンさんの家の近くに来てるんですよ。お昼ご飯一緒にどうかなって!』

 

「……皆いるのかい?」

 

『そうですね。少し急なんですが、大掛かりな打ち合わせがあって。全員で出た方が情報伝達も楽かなと。』

 

「へぇ……その内容は私にも教えてくれるのかい?」

 

『当然ですよ。仲間なんですから。』

 

「……。」

 

 

仲間…………少しだけ頬が緩む。

 

『それでどうですか?お昼行きません?』

 

時計を見やる。13;20……だいぶ寝たね?

 

 

「いいよ。行こうか。場所だけ教えてくれるかい?」

 

『えっ!!いいんですか!!……皆!ナガンさん来るって!』

 

 

『え!ほんとですか!やった!』

 

『うわぁ……楽しくなるね!』

 

『どういたしましょうか。こちらがお迎えに上がっても良いのでは?』

 

 

『そうだよね〜。……どうするナガンさん。そっち行こうか?』

 

「…………。こっちも準備があるからそうしてくれると少し嬉しいな。」

 

『わかった!じゃあ家まで行くね!ばいばーい!』

 

「ふふっ。じゃあね?」

 

 

ピッ……

 

思いがけず……予定ができてしまった。

 

早く準備しないとね。あの子達を雨の中待たせちゃう。

 

…………おや?雨……止んでるね。

 

太陽光が部屋を包む。

 

 

「……さて。」

 

私は人形をベッドに寝かせ、準備のために自室を後にする。

 

 

今日は楽しい休日になりそうだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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