side筒美火伊那
ピピピピピッ……
「……ん……」
今日もアラームで目が覚める。
雨音が少しだけ心地いい。
このままベッドに潜り混んでると2度寝しかねないので上半身を起こす。
7:15……そういえば今日は休みだっけ。いつものルーティーンでアラームを付けていたみたいだ。少し後悔。
ベッドの周りの人形を整え、カーテンを開く。外の様子は確認しにくいが、傘を差してない人がちらほら。そこまで雨足は強くないのか。
今日はこれといって予定は無い。
…………何もない休日。
そのまま洗面所に向かい歯を磨く。
歯を磨きながら朝食の準備。リビングに向かい、冷蔵庫を開く。……めんどくさいからシリアルでいいか。
…………流水ちゃんに怒られそうだな。やめとこ。
前にシリアルばっかり食べてたら流水ちゃんに怒られた。しっかりいいもの食べなさい……ってね。なんなら朝食作りに来る勢いだったから流石に断ったけどね。
旦那さんから何されるか分かったもんじゃない。
一旦歯磨きを終え、再度冷蔵庫とご対面。
卵と……ハムと……野菜と……
適当にフライパンで火を通し、サッと1人分の野菜炒めと目玉焼きを作る。炭水化物はあまり摂らない派。パン一個で済ます。
ウォーターサーバーから水をコップに汲んで、机に座っていただきます。
…………今日は何しよう。
正直仕事をしている方が楽だ。休日は何をしたらいいのか分からないから。
自己研鑽……とか言う人もいるけど、そんな事言ってられるほど余裕なんてない。楽な時には楽したいからね。
「ご馳走様。」
食器を洗い、パジャマのままベッドに戻る。
何気なくスマホを開く。待受けは職場の皆。私がスマホを買った記念で撮ろうと言われ、当時は渋々撮った記憶がある。
「……ふふっ。」
皆笑顔なのに自分だけちょっとムスッとしてる。本当に写真写りが悪いな。
……あの頃はどうなるか不安だったけど……何とかなるもんだね。
『ナガンさん!これ誕生日プレゼントです!いつもお世話になってるんで、感謝の証だと思ってください。』
『ナガン先輩。本当の助かります。ナガン先輩居るとパトロール楽なんですよね。色々勉強になりますし。』
『ナガン様。紅茶入れましょうか?お仕事手伝いますよ。まだまだ未熟ですが、書類仕事は任せてくださいまし?』
『あっナガンさん!お暇でしたらお昼一緒に行きません?美味しい中華屋さん見つけたんですよ!』
「…………。」
目の前の人形達から、白いうさぎを手に取る。
ちょっとくたびれたうさぎ。
誕生日プレゼントと言われて貰ったうさぎ。私みたいだからって。意味がわからない。
人形を抱きしめる。
「…………はぁ。」
私ってうさぎかもしれない。
だって休日……何もすることなくなったら寂しくなってる。
「…………ふふっ。」
それだけあの職場に救われてるんだね……私。
公安時代は考えられなかったな。誰かと仕事をするのがこんなに楽しいなんて。
誰かと共に時間を過ごせるのが……これほど自分を満たしてくれるなんて。
……あの頃になんて戻りたくない。皆をその道に歩ませない。汚れるのは自分だけでいい。
「…………そうだね。」
だから今の仕事を精一杯しよう。そのための休日だ。
もう一眠りしよう。休日くらい許される。
布団の魔法は……きっと私をいい夢に誘ってくれる。
prrrr……
スマホ……アラーム?
違う。電話?
跳ね起きる。
スマホの画面は…………流水ちゃん?急用かな?
何かあったのかも。
そのまま電話に出る。
「もしm……」
『ナガンさん!お休みのところすみません。』
流水ちゃんの後ろからキャイキャイ声が聞こえる。多分何かあったわけじゃ無さそうだ。
「あ……うん。大丈夫だよ。……それで?」
皆の声を聞くと少しだけ嬉しくなる。絶対内緒。
『えっとですね、仕事の都合でナガンさんの家の近くに来てるんですよ。お昼ご飯一緒にどうかなって!』
「……皆いるのかい?」
『そうですね。少し急なんですが、大掛かりな打ち合わせがあって。全員で出た方が情報伝達も楽かなと。』
「へぇ……その内容は私にも教えてくれるのかい?」
『当然ですよ。仲間なんですから。』
「……。」
仲間…………少しだけ頬が緩む。
『それでどうですか?お昼行きません?』
時計を見やる。13;20……だいぶ寝たね?
「いいよ。行こうか。場所だけ教えてくれるかい?」
『えっ!!いいんですか!!……皆!ナガンさん来るって!』
『え!ほんとですか!やった!』
『うわぁ……楽しくなるね!』
『どういたしましょうか。こちらがお迎えに上がっても良いのでは?』
『そうだよね〜。……どうするナガンさん。そっち行こうか?』
「…………。こっちも準備があるからそうしてくれると少し嬉しいな。」
『わかった!じゃあ家まで行くね!ばいばーい!』
「ふふっ。じゃあね?」
ピッ……
思いがけず……予定ができてしまった。
早く準備しないとね。あの子達を雨の中待たせちゃう。
…………おや?雨……止んでるね。
太陽光が部屋を包む。
「……さて。」
私は人形をベッドに寝かせ、準備のために自室を後にする。
今日は楽しい休日になりそうだね。