私のヒーロー   作:おいーも

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気月千歳の現罪②

 

 

 

 

side気月千歳

 

 

 

今日は個室居酒屋。こういう静かなところで呑むのもたまにはいいよね。

 

例えば……

 

「冬美ちゃんって結構イケるクチなのね?」

 

「気月さん程じゃないですよ?」

 

こんな可愛い子と2人で呑む時はね?

 

 

 

いつもなら筒美さんも居るけど、今日は2人だけ。

 

居たとしても筒美さんはお酒呑まないんだけどね〜。なんでも流水ちゃんに習って何時でも何処でも出勤できるようにしてるって。偉いわねぇ。

 

 

「ここの焼き鳥美味しくて好きなのよね。」

 

「そうなんですか?じゃあいっぱい頼みましょうよ!」

 

他の子達もお酒は呑まないし……今日傷原夫妻は家に……っていうかあの事務所の2階が家だから直帰だし、才子ちゃんは元同級生と食事会だとか。筒美さんはわかんない。今日は休みだって。

 

 

「焼き鳥以外もだし巻き玉子とかいたわさも美味しいわよ。」

 

「いたわさ……?なんですかそれ。」

 

「えぇ!?いたわさ知らないの!?」

 

 

そういえばこの子あのヒーローエンデヴァーの娘さんだったわね。お嬢様過ぎてこういうの食べたことないのかしら。

 

 

「いたわさ……いたわさ……?わさびってことは分かりますが……いたってなんですか?」

 

「うふふ!じゃあ頼んじゃいましょ。辛いの食べれる?」

 

「はい!大好きです!」

 

「食べれなかったら私が全部食べるから大丈夫よ。」

 

「はい!店員さん呼びましょ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これが……いたわさ……」

 

かまぼこに切れ目を入れて、その溝にわさびを敷き詰めた料理……というかツマミ。わさびを楽しみたいなら絶対コレ。

 

いたわさを一切れ醤油に付ける。

 

 

「じゃあ1個いただきマース♪……あむ。…………っく〜!」

 

効く効く〜ッ!!このままこれをお酒で流し込む!

 

「っ…………はぁっ!!お酒が美味しいッ!!」

 

 

もはや酒盗よこれ。ビールもいいけど日本酒が美味しいのよねぇ。あぁ〜……美味しいわさびってなんでこんなに美味しいのかしら。このお店のわさびは絶品ね。

 

 

「!私もいただきます!…………あーん。…………んんっ!!!」

 

冬美ちゃんがすかさずビールで流し込む。

 

 

「っっっっっはっ!!美味しいです!こんなに辛いのにお酒がすぐ無くなっちゃいます!」

 

「うふふ。わさびが絶品だといたわさも美味しくなるわ。それに……切れ込みを深くするともっとキくわよ?」

 

「…………へぇ!」

 

冬美ちゃんは辛いのが好きみたいね。中華をよく食べてるイメージあったけど……四川風とかじゃなくてもわさびもOKなの幅広いわねぇ。

 

 

「でもこれお酒すぐ無くなっちゃいますよ!いっぱい頼まないと!」

 

「うふふふっ。いっぱい食べましょ?」

 

「はーい!!」

 

 

焼き鳥もだし巻き玉子も枝豆も。全部美味しい。全部お酒が進む進む。これ冬美ちゃんじゃなかったらどっちもベロベロになってで大変なことになりそうね。

 

それにしたって……

 

 

「ごくごく…………ぷはぁっ!もう1杯欲しいですね!」

 

冬美ちゃんザル過ぎない?

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜!美味しいですねぇ!」

 

「そうね?ここは本当に大当たりなんだから。」

 

「気月さんに紹介してもらって良かったです!」

 

 

ふたりで枝豆をつまむ。枝豆は無限にお腹の中に入っていける気がするわ。どうしてでしょうね?

 

 

「……そ、れ、よ、り、も。冬美ちゃんなにか浮ついた話無いの?」

 

記者モードよ。お酒でよく喋るようになったなら……ここからは私の本題!

 

 

「うっ……浮ついた?……そ……そんなの……無いですよ。」

 

「そうかしら?最近大・爆・殺・神・ダイナマイトとよく食べ歩きしてるって記事になってるけど?」

 

「ふぇ!!そっそれは私じゃないかもしれないじゃないですか!!」

 

「えぇ〜?でもこの特徴的な白髪と……メガネは冬美さんのものでしょう?」

 

 

最近記事になった写真をヒラヒラ見せる。そこには楽しそうに中華店に入っていく大・爆・殺・神・ダイナマイトと女性の姿。

 

「うっ…………。」

 

「もう。白状しちゃいなさいな。大・爆・殺・神・ダイナマイトとはどうなの?」

 

「ううううっ…………ま…………まだ……進展は…………してないです。」

 

「えぇ!?!?アンタたち何年食べ歩きしてるのよ!」

 

「5年です5年!!悪いですか!!」

 

 

この子相当ヘタレよねぇ。大・爆・殺・神・ダイナマイトもこういうの無頓着そうだし。

 

「もっとグイグイ行かないと婚期逃すわよ?」

 

「ううううっ……恥ずかしくて……それに……私……轟家だから……爆豪くん嫌がるかなって。世間体も悪いし。」

 

 

…………そっか。彼女は彼女なりに悩んでるんだ。

 

敵連合が起こした一連の大事件で。不可抗力とはいえ手を貸してしまった異能解放軍。

 

少しだけだけど責任を感じる。

 

罪からは……逃れられないのだと……何度だって突きつけられる。

 

 

「いや!気にしないと思うんですけど!思うんですけど……ちょっとしり込みしちゃうっていうか……私が幸せになってもいいのかなって……。」

 

「いいに決まってるじゃない!」

 

バァン!

 

机を叩く。

 

「えっ!?」

 

「何が轟家よ!何が世間体よ!貴方の好きか嫌いかで判断しなさい!貴方はどうしたいの!?」

 

「ばっ……爆豪くんとお近付きになりたいです!」

 

「だったらそうなさい!逃げんじゃないわよ!?」

 

「はい!!」

 

 

私は罪を背負って生きていくんだ。私の罪じゃなくても。異能解放軍の罪を。

 

それでも前を向かなきゃいけないから。じゃないと流水ちゃんに笑われちゃう。

 

 

「……ふん。クヨクヨしてたらまた変なゴシップ書くわよ?」

 

「やっぱあれ気月さんだったんですね!?」

 

「ふふっ。どーだか?」

 

私は気月千歳。キュリオス。

 

今普通に生きられていることに感謝を。

 

 

現在に贖罪を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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