side傷原流水
「先生。…あいつはなんなんだ…ですか。」
「あいつ?被身子ちゃんのこと?…教えるから顔動かさないでね〜。」
私は今轟くんの傷を診ている。これなら……
消毒して……絆創膏でOKかな。
「それで……何が聞きたいの?」
「渡我の訓練です。何をしてたんですか。身体能力が……」
「あー……あの子暗殺術を10年勉強した化け物みたいな人から、人間の隙を作る動きと目線を外す動きを全力で叩き込まれたからね。」
あの動きは私でもできない。訓練でどうにかなる問題だろうか。天性の才能もありそう。
「……」
「あとは私のランニングに定期的に付き合ってる。最近は1時間くらいやってるかな〜。筋力も持久力も、対人戦闘能力も多分頭1つ抜けてると思うよ。」
「……すげぇな。」
感心してくれてるみたい。すごいでしょ?私の被身子ちゃん。
「でしょ?………あなたの半分の力でも個性なしで対処できなかったんだから上々じゃない?」
「……気付いてたんですか。」
多分驚いた……と思う。この子表情の変化がわかりにくい。
「当然。轟ってエンデヴァーさんの苗字でしょ?……あなたもそうなら、確か息子さんと娘さん両方氷の個性だったはずだから……髪の毛も片方赤いしそういうことなんじゃない?」
「………なんで知ってるんですか。兄貴と姉貴のこと。」
「気分悪くしたらごめんなさいね?私公安所属で色々な情報をある程度なら知れるのよね。あとは自分の足で……とか。有名なヒーローの情報はあらかた欲しかったから、なんでも見たし覚えたわ。」
「……そう……ですか。」
「……はぁ……家庭環境的な問題があるのは……被身子ちゃんだけじゃないのね。」
「……渡我も……ですか?」
「解決済みだけどね〜。……でも苦しい選択をさせちゃったから。」
「………」
「お節介だったらごめんね?……今。すごく苦しいかもしれないし、父親のことが大嫌いかもしれない。もしかしたら母親の方かもだけどね?でも、なるべく寄り添ってあげて欲しい。自ら親を捨てるなんて選択……お互いずっと苦しいわよ。」
「……わかりました。考えてみます。」
「……よし。じゃあみんなのところ戻ってらっしゃい。」
「はい。ありがとうございます。」
轟くんが保健室を後にする。
多分理解してないね。……飲み込みたく……無い…か。
それでもいっぱい悩むと思う。……解決出来る人は居るのかなぁ……?
「傷原先生。」
対人戦闘訓練も終わり、保健室の整理をしていたら相澤先生が来た。
「およ?相澤先生?保健室に来るなんて珍しいですね。リカバリガールはちょっと席を外してますよ。」
「いえ。リカバリーガールではなく……傷原先生に相談があります。」
「……私ですか?」
「本人の意見を聞いてないので、決定事項ではないのですが……渡我被身子の事です。」
全容が見えない。とりあえず作業は止めた方が良さそうだ。
「……決定事項?意見?……聞きましょうか。」
「結論からいいます。渡我被身子に捕縛布を使わせてみませんか?」
「捕縛布!?……相澤先生のですか?」
「はい。彼女の個性にも合ってると思いまして。縄鏢術の応用である程度は形になるかと。」
「……確かに相手を拘束出来れば……安全に吸血は出来ますけど……」
個性……ね。多分それだけじゃない。
「今日、彼女の動きを見てわかりました。あの薙刀は斬ることよりも、取り付けた注射器を相手に刺すようにするものでしょう。」
「お、よくわかりましたね。凄いですね。一応あれは射出出来るようにもなってまして……」
「……そこまで……。であれば尚更相手を拘束する手段は多い方がいいでしょう。遠距離攻撃は頼れますが……一辺倒になっては行けません。」
言われることはごもっともだ。……雄英に入ってから被身子ちゃんが取捨選択出来ればと思って何も言わなかったが……早いね。ありがたい限りだ。
「………確かに。最終決定は被身子ちゃんですが、希望を聞くのはいいと思います。」
「彼女は身体は充分に出来てます。捕縛布……は少し固くて扱いが難しいでしょうが、素材を変えれば彼女の動きを損なわないはずです。」
「……どうしてそこまでして頂けるんですか?」
「教師として。生徒に多くの道を示すのは当然です。」
「……なるほど。私からは勧めていただいて構いません。本人の希望次第ということであれば。」
少し強めに言い切る。強制はダメですよ?
「……ありがとうございます。では、そのように。」
相澤先生は保健室を後にする。
……そうかぁ…捕縛布か〜……イレイザーヘッドだから出た発想だね。縄鏢術の応用で何とか出来そうかな?
今被身子ちゃんは強くなり方を色々模索してる最中だと思う。色々試して。色々経験して。
きっとそれが求めてるものに繋がるわ。
……そういえば被身子ちゃんのやりたいことってなんだろ。聞いた事なかったな。んまぁ……あの子のことだし人の道は外さないでしょ。
side渡我被身子
「捕縛布……ですか?」
「ああ。使ってみないか。」
昼休み、相澤先生に呼ばれて仮眠室にいた。
先日の対人戦闘訓練での動きが相澤先生のお眼鏡に叶ったようで……というか可能性を見出されたというか。
捕縛布を使う訓練をしてみないか。との打診であった。
「………。」
「無理にとは言わない。お前の個性をより戦闘、作戦に活かすためだ。」
「……私。それを使えるようになったとして、流水さんの役に立てますか。」
「……傷原先生の役に?」
相澤先生は意味が分からないと言った顔だ。
それもそうだ。私の家庭環境を全部知ってるとは思わない。
「私は流水さんに救われました。私は流水さんに何も返せてません。」
「そんなことは……」
「私の気持ちです。私を否定した両親から、私の親権を争ってくれました。家を。安心する場所にしてくれました。」
「………」
ごめんなさい相澤先生。私流水さんの事になると止まらないんです。止められないんです。
「私は……流水さんのために力を使いたい。流水さんの助けになりたい。……捕縛布を使えば、私は流水さんの役に立てますか。」
これは冗談なんかじゃない。私の本音。
「……分からない。が正しいな。」
「!」
「俺は生徒に可能性を与えるだけだ。……それが傷原先生の為になるかどうかは、お前が取捨選択するべきだ。」
私のことを考えてくれてるのが伝わってくる。……もし出来るとか言われたら……絶対に信用しなかった。
「………わかりました。……捕縛布、やります。教えてください。」
「わかった。とりあえず傷原先生には俺から言っておく。遅くなり過ぎないようにはするから安心してくれ。」
「はい。よろしくお願いします。未来の流水さんのために。」
「…………。」
待っててね流水さん。私もっと強くなる。
もっともっと………流水さんのために!
side傷原流水
「え?マスコミが?」
「はい。なんか大変だったみたいで……」
夜。二人で晩御飯。今日はギョーザパーティー。お肉少なめで野菜たっぷりギョーザ。私大好きなんだよね。
「あふあふ……ごくん。今日雄英に居なかったしわかんなかったや。ごめんね。」
「いえいえ。なんというか……食堂は大変だったみたいですよ?生徒がパニックになっちゃったらしくて。もぐもぐ。」
天下の雄英生もパニックになるんだねぇ。ちょっと見てみたかったかも。
「飯田くんが解決したみたいです。……ちょっと真面目すぎますし…周りに強要しすぎな気もしますが、かっこよかった見たいですよ?」
「……ほへー。……もぐもぐ。」
「……1番は流水さんですからね?」
「……ほーでふか。」
「かぁいい。もぐもぐ。」
最近被身子ちゃんに心読まれてる気がするんだよなぁ……
「………マスコミが乱入……ねぇ………ちょっと調べてみる必要がありそうね。」
「調べるですか?」
「……オールマイトが雄英に来てからマスコミ乱入。疑いは晴らすのが私の心情だからね。明日にでも校長に掛け合って調べてみるよ。……だから保健室にはいないかもしれない。ごめんね?」
雄英バリアがあるはず……学生証やID持ってないとシェルターが閉じるヤツ。
……内通者?考えたくないなぁ……。
「……寂しいですけどしょうがないですね。」
「………何も無いといいけど。監視カメラ……あると思うから見てみるか。」
『オールマイト。』
『なんだい?』
『ここ数ヶ月で少しだけ気になったことがあって。』
『……聞こうか。』
『……犯罪件数が減っています。』
『いいこと……では無いんだろう?』
『はい。オールマイトの登場から犯罪件数は減少傾向にあります。……ですが減り方がおかしいです。』
『ふむ。ヒーロー達が活躍しているだけでは?』
『……そうも思ったのですが…減少傾向がありえない程に著しくて。』
『……潜んでいる可能性がある……か。』
『はい。何者か……大きな悪意を感じました。気のせいだったら良いのですが。』
『むむむ……。』
『タイミング次第では雄英も……無事では済まない可能性があります。』
『……なるほど。頭に入れておこう。』
『よろしくお願いします。』
……
「気のせいだといいけどなぁ……」
こういう時の私の勘は当たるんだ。