side気月千歳
今日は取材……と言っても本来私が取り持ってるスクープ系じゃないんだけど。
人手が足りないのよね。私はこういう系があまり好きじゃないけど……今回のに関しては私が名乗り出た。私じゃないとダメな気がした。
このカフェでの待ち合わせも慣れたものよね。最近新しい人が入ってきたみたいで騒がしいし。
分倍河原さんだっけ?あの人にも取材してみたいわね。
「気月さん!」
「被身子ちゃん!待ってたわ!」
「すみません!途中で仕事になっちゃっもので。」
「いいわよ。事前に連絡くれたでしょ?ささ?座って。今日は私が奢ってあげる。」
「いいんですか!?ありがとうございます!」
今日の取材対象は渡我……違うわね。傷原被身子ちゃん。どうにも学生時代のかわいい彼女がチラつくわ。……私も歳をとったわね。
「それで……意外ですね?こんな取材……気月さんがするなんて。」
「人手が足りないのよ。ウチも。新人さんは入ってきてるけどね?」
「なるほど……ふふふっ気月さんも大変ですね?」
「お互い様ね?……よし。じゃあ早速始めちゃいましょうか。……まず……流水ちゃんとの馴れ初めを教えてくれる?」
「改めて聞かれると恥ずかしいですね?」
そう。今回は『ヒーローの恋愛模様特集』……なんでこういうのが気になるのかしらね?緊急!とかスクープ!とかならそそられるんだけど……
彼女達の馴れ初めは以前嫌という程掘り下げた。2人とも胸張って答えるんだもん。筆が進んだわ。雑誌にしたのは別の記事だけどね?
それにしても楽しそうに話すわねこの子。……少しだけ羨ましいなって思うのは内緒。
「〜で……こうで……なんですよ!」
「うん……うん…………それで?」
「そこで流水さんが登場です!何度思い出しても何度でも恋できます!……それくらいかっこよかったんです!」
「うふふ。」
…………私は。そんな彼女に隠していることがある。
元異能解放軍。もう……何度フラッシュバッグしたか分からない。今でも夢で見る。今はある程度……犯罪をしていたという意識が芽生え、罪の認識が出来つつある。出来つつある……が……代表の甘言。あれが何度でも私を……キュリオスを呼び戻そうとする。
「……大丈夫ですか?」
「あっ……うん。大丈夫よ。安心して?」
「別に日にします?」
「今日以外だと予定がカツカツでね……今日にしておきたいの。」
「…………そうですか。辛かったら言ってくださいね?」
「ありがとうね。」
こんないい子を……こんないい子の好きな人を……私の元仲間は傷付けた。彼女は私は関係がないとは言ってくれるけど……勝手に背負ってしまう。認識してしまう。
「……なるほどね。……次の質問なんだけど……」
私にできることは何でもする。彼女達の幸せが……私の贖罪に少しでもなれば……と思ってる。
「今日はありがとうね。」
「いえいえ。楽しかったです。」
夕方。もう彼女を解放してあげないと流水ちゃんが怒っちゃう。
彼女は途中まで送ってくれるという……本当にいい子ね。
「もう。流水ちゃんが羨ましいわ?こんな素敵な旦那様が居るんだもの。」
「ふふふ。口が上手いですね?」
「じゃなきゃこんな仕事出来ないわよ。」
「じゃぁ……私はこっちだから。」
「はい。今日はありがとうございました。」
被身子ちゃんと別れ……
「……気月さん。」
「……どうしたの?」
「……私。貴方のこと知ってますから。……自分を許してあげてくださいね?」
「……え?」
「それじゃ!」
被身子ちゃんは足早に去っていく。
「ちょっ……何が……何を知ってるの!?」
その声は虚しく空に消えた。