私のヒーロー   作:おいーも

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side傷原流水

 

 

 

その日私はパパからのお仕事でとある人達を追っていた。

 

身寄りのない私を、名前しか記憶のない私を養子に迎え入れて育ててくれたパパ。公安委員会の……なんだっけ。お偉いさんらしいけどよく分かんないや。

 

 

 

飼田一狼《かいだいちろう》さん。

 

パパから貰ったスマホを大事に耳に当てながら、私はパパとお話をする。

 

 

 

 

「パーパ。今回は私普通に拘束するだけでいいんだよね?」

 

『そうだな。戦闘は極力避けて貰いたい。……後始末が大変だからな。』

 

「ふふふ……はーい♪目標はもう着いてるの?」

 

『入ってきてる情報では……君が到着する頃には揃ってると考えて大丈夫だ。』

 

「ふーん……にしても集合場所が外なんて不用心だよね。敵なんだからもーちょっと頭使えばいいのに……。」

 

『……自分の義娘をバカにするつもりは全くないが、お前はもう少し他人に配慮をした方がいい。誰も彼もお前ほど優秀ではない。』

 

「はーい。ふふふ……楽しみ〜!今日はいっぱい血が見れるかなぁ!!」

 

『……何度も言うが程々にな。』

 

「わかってるよー……パパも配置に着いてるの?」

 

『着く予定ではあるが……少し遅れそうだ。』

 

「誰も通しちゃダメだからね?何があるかわかんないし。特に今回は……。」

 

『わかってる。早めに始めておいても構わん。何とかする。』

 

「ふーん……ふふっ……じゃあ……殺ってきます!」

 

『気をつけてな。』

 

 

ピッ

 

 

 

 

大事なスマホを大事に胸ポケットに仕舞う。パパには悪いけど……ちょっとだけ暴れちゃおうかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は気分がとてもいい。

 

何となくハッピーな気がする。

 

それはそれとしてしっかりお仕事しないとね。怒られちゃう。

 

 

 

 

 

「にしても……。」

 

ここ……よく学生が通る通学路……まぁ……意識の外って意味で隠れやすいって言ったらそうかもだけど。

 

 

 

 

「良くないねぇ……良くないよねぇ?」

 

 

私の口角が上がる。

 

「せぇ〜っかく可愛い可愛いJCの制服が……敵の手で染まってしまう可能性が……非常に良くないよねぇ?時期限定だよ?もったいないよね?」

 

 

 

 

通学してくる学生たちを知り目に口が回る。

 

いかんせん私は今ヒーローコスチュームに身を包んでる。

 

修道女?クラシックロリータ?よくわかんないけど可愛いのを選んだ。動きやすくて。傷つけやすい。……傷つけやすいは私の個性の都合だけど。

 

 

危ない人に見られなかったらいいけど。

 

 

 

「可愛い〜。」

 

「誰だろ〜?」

 

「あんなヒーロー居たっけ?」

 

 

 

そうでしょう可愛いでしょう!……私は可愛いのです。いっぱい考えたんだよね!動きやすさと可愛さと機能性のハイブリット!!!!……身長の事じゃないはずだけど……きっと……多分。

 

私は何故か学生時代から130cm代から身長が全く伸びなかった。コンプレックスです……まぁ身長伸びてコスチューム考え直しとかにならなくて良かったけど。

 

 

そんなことより仕事仕事〜。ここの路地をまっすぐだったね。待っててね♪My blood♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっちゃった〜……。

 

しょうがないじゃん相手が個性使って応戦してきたんだもの!!私も盛り上がっちゃうよねぇ?

 

 

……まぁ……盛り上がった結果血の海なんですけど。

 

もちろん私の血だよ?大丈夫!敵さんは一滴も血流してないはずだから!多分!きっと!Maybe!

 

 

 

うーん……これパパにどうやって言い訳しようか……怒られちゃうよねぇ……。

 

 

 

 

 

 

ほよ?

 

 

 

 

 

 

 

後ろに

 

誰かいる。

 

 

 

仲間?違う。仲間だったら逃げるか戦うかしてくるはず。ずーっと様子を見てる。

 

じゃあ誰だろ?パパか……え!?

 

 

 

 

 

 

一般人!JC!!かわいい!お団子ヘアー!いやそうじゃなくて!!

 

「誰かしら。ここには誰も通さないでって伝えておいたはずなんだけれど……。」

 

 

 

カチッ……カチッ……

 

 

カッターナイフ。

 

あの目……多分吸血衝動。吸血鬼の個性ちゃんかな?ちょうど良かったっていえばちょうど良かったんだけど……もしかして刺そうとしてる?????

 

うーん……カッターナイフの傷くらいならどうとでもなりそうだけど……この子……吸血パックは持ってないのかしら。

 

まぁ……こういう子を救うのも私のヒーロー活動じゃない?

 

 

 

 

「……なるほど。いいわよ。おいで?」

 

両手を広げる。

 

 

 

 

 

 

 

その子は容赦なく私を押し倒して

 

 

私の腰に馬乗りになり

 

 

カッターナイフを私の首に刺した。

 

 

「っ!!」

 

 

容赦なし!考えてる余裕なさそうだね。

 

流石に痛い。呼吸はどうにでもできる。血もどうにでもなる。

多分この子を押しのけるのは容易い。

 

 

 

 

 

 

 

でも

 

 

 

「…………。」

 

 

そんな笑顔見せられたら

 

もっと助けたくなっちゃうよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

その子は私の首に口を付け

 

 

 

 

 

「……ちう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……血を吸われたのは2回目だけど……こんなに情熱的なのは始めてね。

 

 

「ちう……ちう……。」

 

赤ちゃんみたい。可愛い。撫でてあげたいけど両腕は動かせる状態じゃないから気が済むまで吸わせてあげよう。

 

 

 

いやー……色々手間が省けましたね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少ししたらその子は寝ちゃった。ゆっくりその子を押しのけて、膝枕をしてあげる。よく見たら目の下のクマ……寝れてなかったのかしら。……問題が多そうね。

 

とりあえず首は痛いけど、私の個性で血に触れてる限り死にはしない。何とか傷を固めて。その子の頭を撫でて。パパが来るまで…………10分くらいかな。

 

全然起きないから心配してたら、パパが来る前にその子が起きた。

 

「あぇ……」

 

 

 

 

ふふっ……寝起きも可愛い。

 

 

「っ!!!!!!」

 

飛び跳ねて距離を取られちゃった……まぁ。 

 

「あら♪元気じゃない。良かった」

 

「…………。」

 

多分だけどめっちゃ警戒されてるわよね。そりゃそうよね。ナイフで首ぶっ刺したのに生きてるんだもん。不安に思うし……何より自分が人を傷つけちゃったもんねぇ…………うーんどうしたものか。

 

悶々と考えてると足音が聞こえる。多分パパだ。

非常にまずい。この状況を見られたらこの子の未来が終わってしまう。とりあえず……

 

 

 

 

 

「お願い。皆待って。」

 

 

 

ザッ

 

4人……多分もっといるかもだけど……パパもいる。すごい顔してる……ごめんね?

 

まずはこの子だから。

 

 

 

 

「大丈夫。」

 

 

極力優しく。許すように。

 

「大丈夫よ。私はなーんにも怒ってないわ。寧ろありがたかったくらい。」

 

 

 

 

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

 

その子は素っ頓狂な声を出した。呆けてる。可愛い。

 

 

「何を言ってるかわからないって顔ね。ふふふっ。可愛い」

 

赤ちゃんみたいで可愛かったけど。

 

 

 

「特に。私の血を吸っている時。いい笑顔ね。素敵。」

 

 

 

 

「!」

 

 

 

「好きなものを止められてたんでしょう?抑圧。良くないわ。本当に。母親?父親?どちらもかしらね。」

 

よく眠れてなかったんじゃないかしら。満たされない仮面をずーっと被ってたんじゃない?それがなんなのか分からないけれど。踏み込むのは……この子の呪いの鎖を見てからね。 

 

 

 

「…………。」

 

下唇を噛み締めてる。図星ね。困惑と……焦り。焦燥の色。 

 

「ふーん……沈黙は肯定と捉えるわよ?」

 

 

 

 

 

 

その子は重い重い口を開いた。

 

「黙って。私は普通にならなきゃいけないの。私は普通じゃないの。みんなと違ってる。異常者なの。人間じゃ……ないの……」

 

 

 

 

 

 

普通。

 

 

 

 

この世界。個性社会において普通。個性がないことが普通?個性があることが普通?人間の見た目をしているのが普通?

 

 

 

違う。全部違う。

 

この世界は超多様性世界。全部が当たり前で、全部を受け入れて。全部が日常でなくてはいけない。それが出来て始めて普通なの。

 

この子の親はそれがわかってるのかしら。

 

個性問題は根深い。異形だから……個性が人道的ではないから……果たしてそれは排除していいものかしら。抑えていいものかしら。

 

 

 

今悲しんでるこの子を前に、私は何も出来ないの? 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌な思い出は無数にあった。

 

血を主に使う私の個性。いい思いはされなかった。

 

 

 

でも

 

 

 

 

 

 

 

だとしたら。

 

 

私はこの子の 

 

 

 

 

 

「……じゃあ」

 

 

 

 

受け皿に……

 

安心出来る巣になってあげたい。

 

 

 

 

 

 

「ねえパパ。私決めたことがあるの!」

 

 

 

 

 

今苦しんでるこの子だけでも救ってあげたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうせろくな事でも無いだろうが……ハァ……了承しないと怒るんだろう?」

 

ため息混じりだけど。

 

パパが優しくて私のこと大切にしてるのはよくわかる。

 

 

だから

 

「ありがとうパパ!大好き!」

 

 

 

 

 

 

 

 

次はこの子に私が分けてあげなくちゃ。

 

 

「ってことであなた。」

 

 

 

 

愛を。

 

 

「っ……はい。」

 

 

 

 

 

 

希望を。

 

 

「私と一緒に暮らしてくれない?」

 

 

この子のために。

 

 

 

この子の今の為に。

 

 

 

 

生きてて。

 

 

生まれて。

 

 

 

 

私と、皆と共にあれて良かったって心から笑えるように。

 

 

 

 

 

 

私が全身で愛してあげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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