side傷原流水
「おい黒霧ィ……オールマイト以外のヒーロー来てるじゃねぇか!!……痛てぇ…」
「……申し訳ありません。一人外に逃がしました。」
「クソッ……クソッ……クソッ……あいつら……俺たちを逃がす気ねぇぜ……どうすんだよぉ。」
「揉めてるみたいだな。」
好都合だ。こちらも情報共有をしよう。
「逃がす訳には行きません。相澤先生。奴らの個性をわかる範囲でお願いします。」
「手。手のひらで触れらた俺の肘が壊れた。黒いモヤ。ワープ。脳みそ。不明。パワーとスピードは素。オールマイト並み。」
……バランスのとれたというか、ワープしてくるオールマイト嫌すぎない?攻撃もワープで対処されそう。
「簡潔にありがとうございます。手の子は……あまり気にしなくて良さそうですね。それ以上に……ワープが厳しい。どこからでも逃げられるってことですからね。」
「……やるなら今ですね。」
「はい。直ぐに。油断せずにケリをつけましょう。」
足を肩幅に開き、息を整える。
「もう少し血と……力を込めますね。さっきのクロユリでは……足りなかったみたいなので。」
武器を太ももの傷に這わせて武器に血を纏い、腕に力を込める。
「……今聞くことではないのかもしれませんが、血を操る個性ですか?」
たしかに。言ってなかったかもしれない。
「いいえ。汚水です。不純物が混じっていれば混じっているほど操りやすいです。粘度と硬度も操れます。」
「……なるほど。それであの拘束を……。」
会話しながらお互いに臨戦態勢。
相手はまだ言い合ってる。人数差……こっちの状態も含めてこれで五分。さぁて……どう捲りましょうかね。
「合わせます。1…2…3!」
「クロユリ十断(じっだ)!!」
さっきの倍近い大きさの血の斬撃。私の『今の』最大出力。
「死柄木!!」
「っ!!!脳無!!!!!」
一瞬。本当に早いのね。その黒いの。
でもね。
バチンという音と共に黒い化け物が後ろに飛んでいき、壁に衝突。大きな砂煙が立った。
さっきも喰らったでしょう?
「なっっ!?!?」
「死柄木!前!!」
あら。そのモヤの人は反応が早いのね?手を伸ばしてるみたいだけど……
「……まさか!イレイザーヘッド!」
「悪いな。お前の個性は意地でも止めさせてもらう。」
相澤先生が接敵したのを確認して私も武器を振るう。
「あなたの相手は私。何秒持つかしらね?」
私の攻撃をギリギリで躱す手の子。動きは多少早いのね?
私はともかく、相澤先生はもう満足に動ける時間が無い。今も身体にムチを打ってくれてるだろう。
「クソッ!クソッ!黒霧!!助けろォ!!」
「だーめ。あっちはあっち。こっちはこっちよ?」
……早いだけかも。情緒は幼稚。……こんなちぐはぐな子初めて見たわ。
何度か攻撃が掠り、いくつかの出血が見える。
「痛てぇ!痛てぇ!さっきもぶっ刺して引っ張りやがって!!」
「あら?私たちの敵に何の配慮が居るのかしら。命があるだけありがたいと思いなさい?…………それと。私の射程範囲(エリア)よ?」
「何!?」
既に私がナタを幾度となく振った事で、細長い血の糸が手の子を覆うように出来ている。反応しているようだがもう遅い。
「追い詰められてるのも分からずに……ヒペリクム・ネット。」
手の子が血の糸で縛り上げられる。
「あぐぁっ!?」
「……本当にこの事件あなたが計画したの?戦力の見積もりが甘すぎるわ。」
「……黒霧ィ!脳無ゥ!!何してる!助けに来い!!」
黒霧と呼ばれた男は……さっき相澤先生に拘束されてるわ。
脳無……脳みそあったわよね?丸出しだけど。
「……脳無?あの黒い化け物?」
「おかしい……おかしい……先生は言ってたんだ。超回復と衝撃吸収で……オールマイトにすら負けない脳無なんだって……おかしい……おかしいおかしいおかしい!!あああああああっ!!」
先生……?
「え?」
「傷原!!横!!!」
脳無がすぐそこまで近付いてきている。
「っ!?」
脳無っ!!!早い!……だけど!
私は脳無をあえて蹴る事で触れられずに遠くに飛び、距離をとる。
「……本当に復帰が早い。全力の拘束ですよ?……まじでオールマイトと同等なんですね。」
「はははっ……いけ!脳無!あのガキを殺せ!すぐにだ!!」
……言語すらない。まさか脳無って……。
一旦思考は戦闘に集中だ。迫る脳無。……でも。
吹っ飛んでいた時に血を地面に流していた。脳無に遠距離攻撃は……無い。
「足元……血の海ですよ?ローザネーラ・クラッチ!!!」
足元の血を操作して脳無と呼ばれた化け物の足を引っ掛けて転ばし、そのまま地面に血で拘束する。
動こうとしてるみたいだが……地面がヒビ入ってる。もって数秒だね。
そのまま脳無の背中に乗り、ナタを構える。
「衝撃吸収とか言ってましたけど。斬撃、特に差しっぱなしの場合はどうなんでしょうね?」
狙うは延髄。脳の下。背骨がくっついてる場所。動けなくできたらこっちの勝ちだ。
ザシュッ
「脳無ゥ!!!くそっくそっ解けよォ!!」
あちらに拘束は一旦いいとして……
脳無がじたばた暴れる。
こちらの拘束が既に引きちぎられそうだ。
「こいつ!まだ動けるんですか!?延髄ぶっ刺してるんですよ!?どんな耐久力を……!」
「うがあああああ!!!!!」
ブチッブチィ!
手の子が拘束を解きながら走ってくる。
「!!」
拘束を……破壊して!!なんで!?手は触れられないように……
それよりも触れられたら破壊!まずい!
一瞬の気の緩み。
ほんの少しの油断。
戦況は一瞬で覆る。
黒い拳が私の視界を覆った。
side渡我被身子
吹っ飛んだ。
人間じゃ無いみたいに。
まるで人形みたいに。
命が無いみたいに。
「!!……ッ傷原ァ!!」
相澤先生が叫ぶ。
私の理解は遅かった。
飛んでる人が誰なのか。
今地面に叩きつけられた人は誰なのか。
今……動かない人は誰なのか。
愛する人が動かなくなっただけで、私の脳みそはパンクしそうだった。
「……いや……いや……そんな……流水さん……。」
「ははははっ!!やっと死んだ!まずガキ1人ィ!!!」
「……流水……さん!!」
動いて!お願い!!!
「油断しましたねイレイザーヘッド!!」
「なっ!?」
相澤先生が黒いモヤに包まれて消える。
「あなたには1度ここから離れてもらいます。そちらの方がいい。」
ジャボン。
水に落ちたみたいな音。
……どうしよう。どうしよう。流水さんならどうした。どうすればいい。ここの突破。3人相手に?逃亡。流水さん達を置いてひとりで?できるはずがない。どうすれば……。
ピクッ
動いた。流水さんが……
「あぁ〜……いったぁ……何してくれてんのほんと……」
のそのそと立ち上がる。
「はぁ!?まだ生きてんのかこいつ!」
「……生きてるわよ。ゴバッ……あーっ……もう死にかけだけど。」
吐血しながら…あれ………立ち方が……もしかして足と腕が……
「流水さん!!!」
「ふぅーっ……とりあえずどうしましょうね。これ。」
相澤先生にやった血のギプスみたいに右腕と右足を固定、そして右肩、胸、腰を補強した。
立ち姿でもフラフラしている。いつ倒れるかわかったものじゃない。
立ってる場所も血の海。普通の人間じゃ耐えられない。
それだけのダメージ。それだけの一撃。
「……脳無。黒霧。まずはあいつを始末する。3人でかかるぞ。」
「わかりました。」
もうまともに……動けないのに……なんで……
ザバァ!
「蛙吹!感謝する!お前たちはとりあえず逃げろ!………やらせるか!!!」
相澤先生が走ってくる。……間に合わない!!!
「脳無!!やれ!」
悪の魔の手が……
咄嗟に体が動いた。
怖かった。
涙が出そうだった。
流水さんを失うのが。
私は注射器を投擲。流水さんの体に管を巻き付けてそのままこちらに手繰り寄せる。
ありえないくらい軽く、ありえないくらい抵抗なく私の腕の中に収まる。
守らなきゃ。私が。守ってもらったのだから!
来るなら来い。覚悟は決まった。
襲われると思っていたのに。敵の視線は私ではなかった。
「私が……来た!!」
それは皆が待ち望んだ救いの光。
「……コンテニューだ」