私のヒーロー   作:おいーも

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筒美火伊那が求めたもの⑤

 

 

 

 

 

 

side筒美火伊那

 

 

 

「……。」

 

「え……なにこれ。スナイパーうさぎ?」

 

 

「……。」

 

「……ナガンさんこれ欲しいの?」

 

 

「……。」

 

「……クレーンゲーム苦手なんだ。」

 

 

「……。」

 

「…………取れなかったんだ。」

 

 

 

「……うるさい。」

 

仕事終わり。暇だからとスーパーに買い物に行ってる流水ちゃんについて行った帰り。ゲームセンターのクレーンゲームに目がいった。

 

 

大きいぬいぐるみ。可愛い。欲しいって思って……

 

ガチャガチャやってたら……

 

お札が2枚飛んだ。

 

 

「……貸してみて?」

 

「……。」

 

 

流水ちゃんが前に出る。キョロキョロと横から……前から……と見ながら、

 

「うん。……これなら行けそう。」

 

とチャリンと1回。

 

少しづつアームで人形を動かす。

 

2回。3回。

 

「……多分これでいけるよ。」

 

「……本当かい?」

 

「まぁ見てて。」

 

あんなにアームで掴んだのに持ち上がらなかった。絶対に無理だって思ったのに……

 

「……持ち上がった……」

 

タグの輪っかにアームを引っ掛けて持ち上げてる。上手い。

 

ガコン……

 

「はい。取れたよ。」

 

「…………ありがとう。」

 

ぎゅっと抱きしめる。新品の人形独特のひんやりとした感じと、布の匂い。少し落ち着く。

 

 

「んふふ。いいってことよ!」

 

「なんだいそれ?」

 

流水ちゃんはよく分からない。本当に。

 

 

 

それこそ私が服役してる頃から。

 

初めて会った時、私の後釜だと。私が公安の都合で捕まってることを謝罪してきた。この子は全く関係ないのに。

 

何度も面会に来た。何度も何度も。不思議というより不気味だった。

 

私は拒絶した。拒絶してたんだ。

 

 

 

……でもなぁ。

 

「んっふふ〜!ナガンさんは今日何食べるの?」

 

「んー……流水ちゃんと冬美ちゃんに作ってもらったタッパーが余ってるからねぇ……」

 

「えぇ?まだ余ってるの?日持ちしないよ。」

 

「こーいうのはゆっくり食べたいんだよ。」

 

「また作るのに。」

 

「それでもさ。」

 

「ふーん?」

 

「美味いもんは最後まで取っとくタイプなんだよ。」

 

「……ふひひ……そっか!」

 

 

この笑顔だ。この笑顔で……私は心を開いたんだ。

 

私の後釜なのに……こんなに笑える社会になったんだと。それがこの子の頑張りなのかどうなのかは不明だけど。

 

 

「次いつ作りに行けばいい?」

 

「ん〜……今週中は大丈夫そうだね。」

 

「じゃあ今週末だ。また冬美ちゃんと家にお邪魔するね。…………部屋綺麗にしておいてよ?」

 

「善処する。」

 

「不安〜。」

 

 

こんな雑談ができるくらい。人殺し達が雑談できるくらいには平和な社会。

 

私達が居なかったら成り立たなかった社会。平和を当たり前に享受する人間が暮らす当たり前に平和な社会。

 

思い返せば不安な社会だけど……

 

 

「……平和だね。」

 

「……今はね。」

 

「そうだね。」

 

この社会を守りたいと。少しでも思える。

 

 

私のためだけじゃ無いとはいえ、みんなの為に事務所を作って。受け入れて。本人が嫌ってるビルボードチャートに入って。

 

自分を犠牲にすることを全く厭わない私の恩人を、少しでも助けたいと思えるなら。

 

 

「……この社会は多少美しいんだろうね。」

 

「……?」

 

「こっちの話さ。」

 

「ふーん?」

 

 

シャバに出てきてよかったと。ほんのちょっぴり思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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