私のヒーロー   作:おいーも

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気月千歳の現罪④

 

 

 

 

 

side気月千歳

 

 

 

 

「ねえ。気月さん。今。楽しい?」

 

「え?」

 

 

ふと。本当に何気なく。

 

今日はいつも通り流水ちゃんの事務所に遊びに来た日。いつも通り私が持ってきたお茶を淹れて。いつも通り持ってきたお菓子を配って。いつも通り皆とお話してた日。

 

 

ふと。流水ちゃんに問われた。

 

楽しい?

 

楽しいってなんだろう。今。私は楽しんでるの?

 

 

「…………。」

 

「……難しい?」

 

 

私の困惑は多分彼女には見破られてて。そのうえで回答を求められる。

 

「…………考えたことも……なかったかも。」

 

 

本音。スっと出た。彼女の前だと嘘なんて通用しない。そもそも嘘ついたことがあまりないけど。彼女の問いは……なんというか本心を引き出す何かがある。

 

 

「……。」

 

「ね。ちょっとごめんだけど気月さんと2人きりにしてくれないかな?」

 

 

「……いいよ。どれくらい?」

 

「10分でいいよ。」

 

「あいよー。」

 

「流水さん。ちょうどいいので晩御飯の材料買ってきますね?」

 

「うん!おねがーい!」

 

「あたしら何しよっか。」

 

「筋トレとかどうですか?」

 

「そうだねぇ……いいかもね。」

 

「じゃあ私は被身子ちゃんについて行こうかな。」

 

「いいんですか?うふふ♪冬美さんとデートですね?」

 

 

ゾロゾロと皆さんが思い思いの方向へ。

 

 

 

「…………これ。今は私しか持ってない情報なんだけど……聞いてくれるかな?」

 

「……え……ええ。」

 

 

 

 

なんだろう。神妙な面持ちで、だけども軽い口ぶりで。

 

「異能解放軍。復活したみたいなんだ。」

 

「……え?」

 

 

異能解放軍。その言葉だけで嫌な汗が背中を伝う。復活……したみたい……?なんで?代表は……だって……

 

 

「そうだよね。四ツ橋さんは獄中で亡くなったもんね〜。二人で立ち会ったから知ってるもんね〜。」

 

「っ……。」

 

「…………それで。本当だとして。気月さんはどうしたい?」

 

「…………嘘の……可能性もあるって事?」

 

「どうでしょう?」

 

 

にっこりと笑われた。……流水ちゃんがこんなにセンスのない嘘をつくわけがない。きっと本当。どこからか違和感を感じて自分で調べてたんだ。

 

 

「……も……もし……戻りたいって言ったら……?」

 

「居るであろう場所は教えるよ。」

 

「………………。」

 

 

そんな……そんなの……

 

「…………やめとくわ。」

 

「へぇ。」

 

 

「……もう。私は……異能解放軍から足を洗ったわ。今更……私が戻ったところで……居場所なんて……」

 

 

何を言ってるんだ私は。ポロポロ……ポロポロと思ってもないことがこぼれ落ちる。だってこんなの……居場所があれば戻ってもいいとか言ってるようなっ……

 

 

「じゃあ今の生活に居場所を感じてるんだ?」

 

「!」

 

「うふふ。良かった。なんだかんだ楽しんでるじゃん。」

 

「たの……え……なんで……」

 

「……気月さん見ててなんか居た堪れなかったからさ〜。心配だったんだよね。救って良かったのかなって。」

 

 

「……!」

 

「私ね?気月さんには罪を償う〜じゃなくて、前を向いて生きて欲しいんだよね。……もう充分返して貰ったから。ね?」

 

「…………流水……ちゃん……」

 

 

光明が……光が……見えた気がした。

 

ずっと絡みついていた何かが……消えた気がした。

 

 

「……そっか。……もっと……前向いていいんだ。」

 

「うんうん。……次からはさ。もっと笑顔で来て欲しいな?楽しい話しようよ。」

 

「……うん。わかったわ。」

 

「うふふ。」

 

「……あ。そうだ。流水ちゃん。お願いができたんだけど……いいかしら?」

 

「?……いいよ。どうしたの?」

 

 

「あのね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 






今回で気月千歳の現罪は一旦終了です。

次からは気月さんのもう少しハッピーな話を書きたいです。

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