side気月千歳
「ねえ。気月さん。今。楽しい?」
「え?」
ふと。本当に何気なく。
今日はいつも通り流水ちゃんの事務所に遊びに来た日。いつも通り私が持ってきたお茶を淹れて。いつも通り持ってきたお菓子を配って。いつも通り皆とお話してた日。
ふと。流水ちゃんに問われた。
楽しい?
楽しいってなんだろう。今。私は楽しんでるの?
「…………。」
「……難しい?」
私の困惑は多分彼女には見破られてて。そのうえで回答を求められる。
「…………考えたことも……なかったかも。」
本音。スっと出た。彼女の前だと嘘なんて通用しない。そもそも嘘ついたことがあまりないけど。彼女の問いは……なんというか本心を引き出す何かがある。
「……。」
「ね。ちょっとごめんだけど気月さんと2人きりにしてくれないかな?」
「……いいよ。どれくらい?」
「10分でいいよ。」
「あいよー。」
「流水さん。ちょうどいいので晩御飯の材料買ってきますね?」
「うん!おねがーい!」
「あたしら何しよっか。」
「筋トレとかどうですか?」
「そうだねぇ……いいかもね。」
「じゃあ私は被身子ちゃんについて行こうかな。」
「いいんですか?うふふ♪冬美さんとデートですね?」
ゾロゾロと皆さんが思い思いの方向へ。
「…………これ。今は私しか持ってない情報なんだけど……聞いてくれるかな?」
「……え……ええ。」
なんだろう。神妙な面持ちで、だけども軽い口ぶりで。
「異能解放軍。復活したみたいなんだ。」
「……え?」
異能解放軍。その言葉だけで嫌な汗が背中を伝う。復活……したみたい……?なんで?代表は……だって……
「そうだよね。四ツ橋さんは獄中で亡くなったもんね〜。二人で立ち会ったから知ってるもんね〜。」
「っ……。」
「…………それで。本当だとして。気月さんはどうしたい?」
「…………嘘の……可能性もあるって事?」
「どうでしょう?」
にっこりと笑われた。……流水ちゃんがこんなにセンスのない嘘をつくわけがない。きっと本当。どこからか違和感を感じて自分で調べてたんだ。
「……も……もし……戻りたいって言ったら……?」
「居るであろう場所は教えるよ。」
「………………。」
そんな……そんなの……
「…………やめとくわ。」
「へぇ。」
「……もう。私は……異能解放軍から足を洗ったわ。今更……私が戻ったところで……居場所なんて……」
何を言ってるんだ私は。ポロポロ……ポロポロと思ってもないことがこぼれ落ちる。だってこんなの……居場所があれば戻ってもいいとか言ってるようなっ……
「じゃあ今の生活に居場所を感じてるんだ?」
「!」
「うふふ。良かった。なんだかんだ楽しんでるじゃん。」
「たの……え……なんで……」
「……気月さん見ててなんか居た堪れなかったからさ〜。心配だったんだよね。救って良かったのかなって。」
「……!」
「私ね?気月さんには罪を償う〜じゃなくて、前を向いて生きて欲しいんだよね。……もう充分返して貰ったから。ね?」
「…………流水……ちゃん……」
光明が……光が……見えた気がした。
ずっと絡みついていた何かが……消えた気がした。
「……そっか。……もっと……前向いていいんだ。」
「うんうん。……次からはさ。もっと笑顔で来て欲しいな?楽しい話しようよ。」
「……うん。わかったわ。」
「うふふ。」
「……あ。そうだ。流水ちゃん。お願いができたんだけど……いいかしら?」
「?……いいよ。どうしたの?」
「あのね……」
今回で気月千歳の現罪は一旦終了です。
次からは気月さんのもう少しハッピーな話を書きたいです。