side筒美火伊那
「「……。」」
シュン……
「…………ハァ………………ハァ。」
「「……。」」
「アハハ……」
「…………被身子ちゃん……。」
本日。ブラッドロータス事務所は……社長が……萎えてる。
今日は日曜日。察しのいいやつは気がついたかもしれないが……本来であれば雄英高校は休みの日。ブラッドヘリアンサスが事務所に出勤してるであろう日。
……ただ……トラブルがあって休日出勤してるんだと。平日に代休が貰えるらしいけど……いや……その場合は社長が出勤することになるから、ふたりからしたらぜーんぜん嬉しくないだろう。当たり前だ。
とくに。とくに毎週土曜日日曜日を楽しみにしてる社長にはキツイ話だ。見てて可哀想になってくる。
ただあの状態で仕事は完璧なんだよね。それもあってか尚更可哀想に見える。
「社長。そういう日もあるよ。」
「……そうですよ。ブラッドヘリアンサス様もきっと同じ気持ちです。」
「…………そうかなぁ……そうだったらいいけど……」
あーこりゃだいぶナイーブになってるね。今日は少し早めに事務所を閉める予定だから、その分もブラッドヘリアンサスと一緒に過ごせるはずだったから……いつもなら出るはずのないセリフが出てる。
半年に1回くらいあるからね。こういう日。毎度毎度可哀想だね。雄英高校も雄英高校だよ。養護教諭が出ないといけないトラブルってなんなのさ。
社長のスマホのロック画面……ブラッドヘリアンサスとの結婚式の時の写真なんだけど、見返してはため息吐いてる。
「ねぇ。流水ちゃん。紅茶煎れようか?」
「…………いいの?」
「うん。そろそろ茶葉も使い切っちゃいたいからね。」
「…………ありがと……。」
冬美ちゃんナイス!インテリジェンスと目が合い、お互い頷く。
畳み掛けるなら今!
「社長。私お菓子買ってくるよ。茶請けいるだろ?」
「お仕事もあってないようなものですし、一旦休憩にしましょ?」
「……わかった。」
この状態の社長はイエスマン。だからこういう風に持っていくのは非常に楽。
少しでも元気になって欲しいからね。
「……美味しかった。」
「「「……。」」」
多少……戻った……か?
今回はだいぶ凹んでるみたいだね……これ以上は一旦無理だね。
さて……どうしたものか。
「……!」
私らが頭を悩ませてると、社長が急に何かに気付いたみたいに玄関を見る。
私達もつられて玄関に視線をやるが…………何も無いけど??社長にはなにか見えてる??
ガラッ……
「すみません。ただいま戻りました。」
「「「え!?」」」
「被身子ちゃーーーん!!!!!」
「「「え!?」」」
ブラッドヘリアンサスが帰ってきたのもびっくりしてるけど、それ以上に社長がぶっ飛んで行ったのにもびっくりした。
「わ!?流水さん!?……この匂い……また皆さんに迷惑かけてました?」
ほとんどのけぞりもなく社長を受け止め、そのまま抱き上げるブラッドヘリアンサス。…………私目線はどちらも充分化け物なんだけどねぇ。謙遜してんだ。ふたりとも。
「だってぇ〜!寂しかったんだも〜ん!!」
「もう!文化祭もあるから忙しいって言ったじゃないですか!」
「だってぇ……それとこれとは……」
「もぉ……すみません皆さん。ウチの流水さんが……」
「大丈夫だよ。仕事っていう仕事も無かったし。」
「はい。ちょうど休憩がしたいと思っておりましたので。」
「よかったねぇ流水ちゃん。」
スンスン……
「あっちょっ!?走ってきたんですから匂い嗅がないでください流水さん!!くっまっ……力強!!」
「「「あはは……」」」
いつも通りに戻ったね。やっぱこれくらいの空気の方がいいよ。
「流水さん!?首だけはダメ!ほんとにダメです!」
「やーだ。」
「恥ずかしいですぅうう!!」
「スーッ……」
…………今日もいい天気だね。