私のヒーロー   作:おいーも

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悪ノ道

 

 

 

 

 

 

 

 

side傷原流水

 

 

 

 

「こんにちはマスター。久しぶり。」

 

 

 

休日。被身子ちゃんが久しぶりに友達と遊びに行くとの事で、フリーになった私はとあるカフェに顔を出した。

 

 

 

「あら!?流水ちゃんじゃない!久しぶり!元気してた??」

 

筋肉モリモリのスキンヘッドのおじさん……

 

旗見 陣之伸(はたみ じんのしん)さん。個性の問題で…事件を起こしそうなところで私が止めた人。

 

そこから再起して今は自分の個性問題で苦しい人のためのカフェを開いてる。相談も少しだけ聞いてるみたい。

 

 

郊外のなんの変哲もない所に建ってるけど、そういうお客さんも多いらしい。

 

何より時々敵も出入りしているカフェになっている。

 

ただここはそういう人でも寛容なので、結構色んな敵が顔を出してたりするらしい。

 

時々改心して出頭してる人もいるとか…いないとか。

 

 

「今日はどうしたの?もしかしてそろそろ身を固めたくなった?誰か紹介しましょうか?」

 

 

「それはいつも大丈夫って言ってるでしょ?血染くん来てるでしょ?」

 

 

「あー……どこかにはいるはずよ?例えば……2階席の奥…とか。」

 

 

 

こういう所での敵の居場所ははぐらかす。これがマスター流。関わらないが1番だからね。

 

 

「わかった。ありがとう。今度私の彼女も連れてくるよ。」

 

「え!いいのかしら!楽しみにしてるわ!」

 

 

……こんなに気のいい人が迫害されるんだもんね。異形型個性問題って根深いね。

 

 

「じゃあマスター。いつものをひとつね。」

 

私は300円差し出す。

 

「はーい。ホットミルクね?」

 

 

マスターは自分の足を器用に使ってカップを取り出し、ミルクを温める。

 

マスターの個性。半人半魚。マスターのタイプは下半身がタコだ。この見た目で色々苦労したみたい。

 

タコって可愛いよね。私は好きよ?

 

ここのホットミルク美味しいんだよね。ミルクだけじゃない気がするんだけど…何入れてるんだろ。

 

 

「はい。できたわ。これはオマケ♡」

 

一緒にチーズケーキも出てくる。

 

「えっ!いいの!?ありがとう!マスターのチーズケーキ大好き!」

 

「そんなに褒めても何も出ないわよ?あなたにはこのお店作るのに助けてもらったからお返しよ。まだまだ返しきれないから何度も来てね?」

 

「ふふっ。わかったわ。また来るね?2階席行ってくる。」

 

「はい♪ごゆっくり。」

 

 

 

このカフェの従業員はマスターだけじゃないけど、全員私が色々手引きした子ばかり。皆真面目に仕事してくれてるのが本当に嬉しい。

 

少しづつ。少しづつでも社会が良くなってる気がする。

 

 

 

 

 

「血染くん。」

 

 

「……来たか。要件を言え。」

 

「まぁまぁ。いったん飲ませてよ。せっかく来たんだし。」

 

「……ハァ…。」

 

 

ズズズ…パクパク…

 

 

「おいひー!幸せ!」

 

 

 

 

「………」

 

 

「……わかったわよ。って言うより仕事の依頼とかじゃないんだけどね。被身子ちゃんの事。」

 

「……アイツの事?」

 

 

「やっぱり心配?」

 

「……さっさと話せ。」

 

ちぇっ。ちょっとくらいおちょくってもいいじゃん。

 

「ありがとうね。修行付けてくれて。おかげで被身子ちゃんは雄英1年の中でもすごく評価が高いわ。」

 

「……フン。当たり前だ。」

 

 

「ヒーローとしての心意気も……あなたが認めるに値するんじゃない?」

 

「……それでも根本は変わらなかった。」

 

「私のため〜ってやつでしょ?」

 

 

 

「あぁ。だが……変わったこともあった。」

 

 

血染くんがコーヒーを1口すする。

 

 

 

あの頭の硬い血染くんが……変わったって言った?

 

ナチュラル・ボーンしか信用しない血染くんが????

 

 

 

「……失礼なことを思ってるようだが……俺は認識を改めた。」

 

「血染くんが……?」

 

 

「あいつ…渡我被身子は、行動原理が『お前のためになにかしたい』から『お前の横に立つために強くなりたい』に変わった。」

 

「……大切に思われてるなぁ。」

 

 

「フン。根っこは同じだ。お前のため。……だが、俺が認識を改めるには充分すぎた。それだけ長かった。」

 

血染くんはコーヒーを飲みきる。待たせすぎたかな?

 

「日に日にアイツが成長するのが……少し嬉しい自分がいた。……ハァ…」

 

 

「修行が終わり……お前との契約が終わった後。……何をするにもやる気が起きん。」

 

 

 

「ふーん……血染くんも考えてるんだね。……実際あなたが今年起こした殺人事件は0。ちょっと不安もあって今日会ったってのもある。」

 

 

「不安だと?………確かにそうか。お前の理想が…」

 

「血染くん。」

 

「……野暮だったな。だが、俺はそろそろ動くぞ。」

 

 

「……いいんじゃない?動いてくれた方がこちらも嬉しい。」

 

「あぁ。休みすぎた。……ヒーローとして…あってはならぬものは無数といる。……だが変わるものも居ることを頭に入れておかねばな。」

 

変わったんだなぁ……ちょっとだけだけど。

 

 

「頑張ってね。……もちろん私はあなたに手出ししないから。」

 

 

「ハァ……ヒーローのセリフじゃないな。お前じゃなかったら粛清対象だ。」

 

「今更。お熱いのね?」

 

 

「…ハァ………勝手に言っていろ。」

 

血染くんが立ち上がる。

 

 

 

「あなたの分私が払うわ。帰ってもらって大丈夫。」

 

「…ハァ……貸しか?」

 

「無いわ。」

 

「………感謝だけしてやる。」

 

「素直じゃないのね。」

 

 

 

 

 

でも血染くんが動いてくれるのはすごく助かる。ヒーロー共に注意喚起だ。ヒーローの精神性。民の心の主柱になるべく。身を粉に。理想の社会のために。

 

別に彼が捕まろうと知ったことじゃない。彼が捕まってくれた方がゴシップにし安くてヒーローの心に刺さる。

 

……捕まえれる人いるのかなぁ?結構強いし……自分が見込んだヒーローには手出しないからなぁ……

 

 

 

ミルクとケーキを食べ終える。そろそろ出ようかな……

 

 

「お嬢さん。前。いいかな?」

 

邪魔しちゃったかな?

 

「あっいいです…よ……」

 

 

な……なんで……こいつが……ここに…?

 

 

「君に会いたかった。傷原流水。友よ。」

 

 

「リ……デストロ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁまぁそう警戒しないでくれ。君を見かけただけだ。」

 

 

「それで着いてきたんでしょ?私とステインの会話も筒抜けって事?」

 

 

私たちの目の前にはふたつのコーヒー。リ・デストロ……四ツ橋力也が私の分まで頼んだ。砂糖多め。私の好み。

 

 

「いいじゃないか。久しぶりの再会だ。君はヒーロー殺しとも友好があるんだね。…そのコーヒーも奢りだ。……どうだね?やはり我々の仲間に……」

 

「なりません。何度も言ってますよ。」

 

キッパリ断る。こういうのはしっかり言わないとダメ。

 

「相変わらずつれないね。君とは理想の世界を築けると思うのだが……」

 

 

「あなたの理想は素晴らしいです。」

 

 

全ての人類が個性を100%使える世界。言葉だけ聞くと素晴らしく……それでいて耳障りのいい話。だけど……

 

「ですがそれが伴うデメリットに民は目をつむれない。」

 

 

 

「残念だ。……まぁ知っていたことだがね。だが君は既に活動を起こしている。我々はまだ準備期間だ。」

 

 

「……みなさんは元気ですか?」

 

「ふははっ…一応我々が起こそうとしている活動は敵サイドだぞ?ヒーローが心配など………もちろん元気だ。いつでも事を起こせる。」

 

コーヒーを1口。元気なら良かった。

 

「そりゃよかった。あなたの活動が成功するにしろ失敗するにしろ、私にとっては好転しますからね。」

 

 

 

「……誰も個性や特性で迫害されない社会……だったかな?まだまだ小規模だが……このようなカフェがあるのだ。異形型のみが店員をしているカフェなど珍しい。それを客はさも当たり前のように過ごしている。素晴らしいではないか。世界が認めるのは早いかもしれんぞ?」

 

 

「ズズズ……。そりゃ私が出資しましたからね。」

 

「なんと!ここも君の息のかかった場所だったか。君は本当にすごいな!尚更勧誘がしたくなった。」

 

 

「ダメです。私の理想とあなたの理想は少しだけ遠いです。……ですが、私が否定するものでもない。」

 

 

「ふふっ……であれば尚更手を……」

 

「組みません。……ですが……あなた達に手は出さないことは約束します。」

 

「くくくっ……それだけでもいい。君が乗り込んでくるだけで弱い我々は壊滅的だからね。」

 

 

「……どの口が。……そういえばリ・デストロ。あなた達には話してもいいでしょう。」

 

「……?何かね?商談かい?」

 

「儲かりはしませんね。……むしろ害になる可能性すらある。」

 

「……聞こうか。」

 

「敵連合。知ってますよね?」

 

 

「雄英高校に襲撃した敵組織……だったかな?無謀なことをするものだね。」

 

「……それが案外無謀な訳でもなさそうで。」

 

「何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど……脳無……。」

 

「戦闘力は確かです。そのような特記戦力が無数にいると考えると……」

 

「理想が違えば道を違う可能性がある……と。」

 

 

「注意喚起の意味合いも兼ねての報告です。これで何か貸しがあるとかの話ではないですので悪しからず。」

 

「……君は本当に無欲だな?相変わらずで私は安心したが。」

 

 

「あなたたちが万が一倒されようものなら理想の世界から少しだけ遠ざかりそうですので。無様に負けることだけは避けていただきたい。」

 

 

「はははっ酷い言いようだな。我々が負けるとでも!?」

 

「……可能性は0では無い気がします。まだ確定事項ではないので何も言えませんが。」

 

少しだけ考え込むリ・デストロ。こういう時の彼は非常に聡明だ。

 

「……ふむ。君がそこまで言うのであれば警戒しておこう。感謝する。」

 

「助かります。少なからず情はあるので。」

 

「はははははっキュリオスが聞いたら飛んで喜びそうだな。」

 

「それでは私はこれで。失礼します。代表。」

 

「はははっ。それは私たちの仲間になってから言ってくれ!」

 

「ふふっ。それでは。」

 

 

 

その足で血染くんのコーヒー代を払い店を後にする。

 

 

 

いい日だ。

 

気分がいいな。ちょっとだけ歩こうか。

 

赤く染った空が、少し陽気な風が、私の背中を押してくれる気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side四ツ橋力也

 

「そうそう。ついさっき傷原流水に会ったよ。」

 

『は!?何処でですか!?私も会いたいです!』

 

「はははっ!もう帰ってしまったよ。」

 

『そんなぁ……』

 

「でも……いい場所を見つけた。気分がいい。いつか君たちにも紹介しよう。」

 

『……わかりました。それで手を打ちます。』

 

ピッ

 

 

 

 

……本当に気分がいい。

 

傷原流水。

 

たとえ道を違えても…君とは戦いたくないな。

 

私の個性が上手く機能しなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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