side気月千歳
「…………はぁ〜〜……」
ため息。すっごく嫌な気持ち。自己嫌悪。
あの日からというもの……流水ちゃんの事務所にもなんとなく行きづらい。
今日も仕事終わり、なんとなくウロウロしてたけど……いつの間にか流水ちゃんの事務所の近くに来てしまった。
多分無意識。本当は流水ちゃんの事務所に行きたい。
でも……
「……どうすればいいの?」
だってあの日のことなーんにも覚えてないのよ!?しかも筒美さんは覚えてるみたいだし!なんかそれってすっごく失礼じゃない!?
それもあって余計顔を合わせにくいって言うか……
なんだかんだ喫茶店に1時間くらい居座ってる。一応配慮してテラス席なんだけど……迷惑よねぇ……そろそろ退散しましょうかしら。
…………はぁ。私ってほんと意気地無し。
「……!」
と立ち上がろうとした時……
「気月様ですか?」
「……え?」
後ろから声をかけられ、振り向くとそこには…………
「こんな所で出会うなんて。傷原様の結婚式以来ですね。」
「そうですね。お久しぶりです。」
出会ったのは止九ノ院 糸重(どくのいん いとえ)さん。宗教団体白体教の教団員で、教祖白灘珠世の妻兼幹部。
世間一般的な宗教団体とは違い、社会貢献が非常に大きく報道される宗教団体でもある。裏では何をしてるか分からないけれど。
……そそるわよねぇ〜♪まぁそういう場所って怖いからあんまり無闇に手を出さないけどね。流水ちゃんのお友達ってのもあるし!
彼女らとは流水ちゃんの結婚式で出会った。お互い挨拶も済ませてるので顔見知りといった仲。
「今日はどうされたんですか?」
「傷原様の事務所に少々用事がありまして、顔を出してきた次第です。」
「……っ。」
流水ちゃんの事務所……
「どうかなさいましたか?」
「い!いや!何もないですよ?」
「……?」
すぐに気付かれた。あまり表情に出すようなことしないのに……やはり宗教団体幹部。侮れないわね。
「それで気月様はどうしてここへ?」
「うっ……」
そりゃそうよね!聞かれるわよね!!
「……話しにくいことですか?」
「えっと……そ……そういう訳じゃないんだけれど……」
なんというか……なんて言いますか……うーーーーん……
止九ノ院さんが自分の仮面の顎から指を入れ、隙間を作って器用にストローから飲み物を飲む。
この人たち……白体教の人達って所作がみんな綺麗なのよね。そういう訓練もされてるのかしら?
「私だから話せることもありますよ。」
「……!」
「私と気月様は客観的に見ても関係値が薄いです。だからこそ言いにくい悩みを打ち明けることもできると思います。」
「…………そう……ね。」
……はぁ……こんな若い子に心配されてるなら……訳ないわね。
「……あのね?」