私のヒーロー   作:おいーも

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筒美火伊那が求めたもの⑧

 

 

 

 

 

 

 

side筒美火伊那

 

 

 

「「……」」

 

とりあえず玄関越しもあれなので、部屋に入ってもらった。

 

 

リビングに通して……お茶を入れて……

 

現在。真正面で向かい合う形。お互い無言。

 

もどかしくて。苦しくて。何を言っていいか分からない。

 

 

 

顔を伏せているけど……下心は正直なもので、目がチラチラと気月を捉えてしまう。気月は暑がりだ。それもあってかちょっと大胆な服を好む。

 

今日は肩だけじゃなくて胸も出てる……なんというか……眼福……いやいや。青い肌が綺麗で……何を思ってるんだ私は。

 

 

 

この部屋に気月が居るのは……あの日以来だけど、やっぱり嬉しいものは嬉しいもので……寂しかった穴を埋めてくれるような、少しだけ幸せな気持ちになれた。

 

 

……はぁ……単純。1回抱かれたくらいでこれなんだから……色ボケめ。期待するな。このまま謝ってこの関係は終わり!また友達に戻ろう!

 

 

私を幸せにしてくれる人なんてやっぱりいないんだ!このまま私はずっとひとりで……

 

 

 

 

 

 

 

ポロ……

 

「「……え?」」

 

 

 

何この水。何が垂れて……雨漏りじゃない。視界が滲んで……え?私の目……

 

 

「なっ……なんで泣いてるの!?」

 

「わっわかんない!なんで泣いてんだ私!?」

 

「知らないよ!!」

 

 

ポロポロとこぼれる涙を腕で拭ってみるものの、1度決壊したダムはなかなか元には戻らないもので。

 

「なんでっ……なんで……!?」

 

「っ……」

 

 

ガタン!

 

 

 

 

 

「……は?」

 

目の前が青に染まった。

 

 

甘い香りと少しだけ汗の匂い。そして頬に伝わるやわらかさ。

 

気月に抱きしめられてるのだと感じるのはそう遅くなかった。

 

 

「え……あの……何を……」

 

「……分からない。」

 

「……は?」

 

「何故か……こうしなくちゃいけない気がして。」

 

「!」

 

あの日も……こうだった。

 

 

家に連れて帰って、いざ……って時。

 

 

 

『や……やっぱりやめないかい?私たち友達だろ?誘っておいてなんだけど……なんっつーか……』

 

尻込みする私を抱きしめてくれた気月。

 

 

『大丈夫。私じゃ受け止めれないかもしれないけど……一緒に抱えて歩くことはできるわ?』

 

 

その匂いに。言葉に。感触に……私は期待してしまったんだ。

 

そのまま無言で手を気月の腰に回す。

 

 

 

座ってる私を抱きしめてくれている気月は……どことなく大人で。すごく安心した。

 

 

あの日と同じ。あの日と一緒。同じ気持ちで、一緒のハグ。

 

……好きだな。

 

 

私は……この人に女にされたのだと全身で認識できた。

 

あぁ……こうなったらもう止められない。

 

 

迷いも静止も振り切って、私を止められる枷が消え去った。

 

こんな歳になってまで、犯罪者になってまで恋ができるなんて思わなかったけど……

 

 

 

「……気月……好きだ。」

 

期待してしまった。願ってしまった。

 

1夜限りの逢瀬が……私を変えてしまったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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