side筒美火伊那
「「……」」
とりあえず玄関越しもあれなので、部屋に入ってもらった。
リビングに通して……お茶を入れて……
現在。真正面で向かい合う形。お互い無言。
もどかしくて。苦しくて。何を言っていいか分からない。
顔を伏せているけど……下心は正直なもので、目がチラチラと気月を捉えてしまう。気月は暑がりだ。それもあってかちょっと大胆な服を好む。
今日は肩だけじゃなくて胸も出てる……なんというか……眼福……いやいや。青い肌が綺麗で……何を思ってるんだ私は。
この部屋に気月が居るのは……あの日以来だけど、やっぱり嬉しいものは嬉しいもので……寂しかった穴を埋めてくれるような、少しだけ幸せな気持ちになれた。
……はぁ……単純。1回抱かれたくらいでこれなんだから……色ボケめ。期待するな。このまま謝ってこの関係は終わり!また友達に戻ろう!
私を幸せにしてくれる人なんてやっぱりいないんだ!このまま私はずっとひとりで……
ポロ……
「「……え?」」
何この水。何が垂れて……雨漏りじゃない。視界が滲んで……え?私の目……
「なっ……なんで泣いてるの!?」
「わっわかんない!なんで泣いてんだ私!?」
「知らないよ!!」
ポロポロとこぼれる涙を腕で拭ってみるものの、1度決壊したダムはなかなか元には戻らないもので。
「なんでっ……なんで……!?」
「っ……」
ガタン!
「……は?」
目の前が青に染まった。
甘い香りと少しだけ汗の匂い。そして頬に伝わるやわらかさ。
気月に抱きしめられてるのだと感じるのはそう遅くなかった。
「え……あの……何を……」
「……分からない。」
「……は?」
「何故か……こうしなくちゃいけない気がして。」
「!」
あの日も……こうだった。
家に連れて帰って、いざ……って時。
『や……やっぱりやめないかい?私たち友達だろ?誘っておいてなんだけど……なんっつーか……』
尻込みする私を抱きしめてくれた気月。
『大丈夫。私じゃ受け止めれないかもしれないけど……一緒に抱えて歩くことはできるわ?』
その匂いに。言葉に。感触に……私は期待してしまったんだ。
そのまま無言で手を気月の腰に回す。
座ってる私を抱きしめてくれている気月は……どことなく大人で。すごく安心した。
あの日と同じ。あの日と一緒。同じ気持ちで、一緒のハグ。
……好きだな。
私は……この人に女にされたのだと全身で認識できた。
あぁ……こうなったらもう止められない。
迷いも静止も振り切って、私を止められる枷が消え去った。
こんな歳になってまで、犯罪者になってまで恋ができるなんて思わなかったけど……
「……気月……好きだ。」
期待してしまった。願ってしまった。
1夜限りの逢瀬が……私を変えてしまったんだ。