私のヒーロー   作:おいーも

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気月千歳のげんざい⑧

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side気月千歳

 

 

 

「……気月……好きだ。」

 

 

 

…………わかってた。わかってたつもりだった。

 

あの後止九ノ院さんに言われたこと。何度も思い返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ってことがあったんです。どうすればいいのかわかんなくなっちゃって……』

 

『なるほど……ふふっ。』

 

何故か笑われた。

 

 

『いえ、馬鹿にしたわけでは無いのです。可愛らしいなと。』

 

『可愛っ……おちょくってますよね!?』

 

『いえいえ……ですが……ふふっ……何を悩んでいるのですか?それは恋でしょう?』

 

 

 

『…………はぇ!?』

 

自分でも思ってない声が出た。びっくりよりも……何故か恥ずかしかった。

 

 

『今まで何ともなかった相手を意識して、距離を取って、近寄れなくて。……それが何がきっかけだったとしても、あなたは恋をされているのですよ?』

 

 

『……これ……恋……!?……いや……だって……もうこんなおばさんで……』

 

『恋に年齢などありません。』

 

 

『いやっ……でも私……なんかが……』

 

『…………恋に立場などありません。』

 

『…………』

 

全部論破された。……私……恋……元敵なのに……

 

 

『気月様。……今言わないと……きっとあなたは後悔する事になる。』

 

『…………』

 

……私は……私は……

 

 

『……ここのお代は持ちますよ。どうぞ。今すぐ行ってあげてくださいませ。その方……今日は事務所はおやすみらしいですよ?』

 

『なんで……いやっ……ごめんなさい!この借りは!』

 

『はい。美味しいお菓子。お待ちしておりますね?』

 

『ありがとうございます!!』

 

 

そこからはもう無我夢中。

 

何度も何度も反芻しながら走ってた。

 

 

恋……恋……恋……

 

 

久しぶりにいっぱい運動して、身体に何度もガタが来たけど止まらなかった。

 

 

 

私はもう逃げない。

 

思えばあの日からずっと逃げてきた。

 

 

異能解放軍から抜けた日。全部流水ちゃんに任せてきた。責任なんてなかった。仕事に復帰しても、流水ちゃんの結婚式に呼ばれても、許されても、私のどこかできっと後ろめたい気持ちがあった。

 

仕事だから行く。呼ばれたから行く。許されたから行く。主観が全部他人になってた。

 

 

 

でもそんな身ぐるみ全部とっぱらって。

 

「私はッ……もうッ……逃げないッ!!」

 

 

 

気がつけば、インターホンを押していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ありがとう。筒美さん。」

 

筒美さんが少し反応した。

 

ちょっと可愛い。

 

 

「私……筒美さんから逃げてた。……だってさ?あの日のことなーんにも覚えてないんだもん。失礼じゃんって……自分に言い訳して。」

 

「…………うん。」

 

「……でもね?寂しかったんだ。みんなに会えないの。……筒美さんに会えないの。」

 

「………………」

 

 

筒美さんの抱きしめる力が少しだけ強くなる。

 

 

 

待っててね?頑張って言葉にするから。

 

「私……さ?……初めて……なんだよね。こんな気持ち。」

 

「…………」

 

「リ・デストロにあった時も。流水ちゃんに会った時も。こんな気持ちじゃなかった。」

 

「………………うん。」

 

 

「……ね。筒美さん。……こっち向いて?」

 

筒美さんがおずおずと、ゆっくりこちらに顔を向ける。

 

目が真っ赤。泣いてるじゃん。

 

 

「……私……気月千歳は……筒美火伊那さんの事が大好きです。誰にも渡したくないです。傷の舐め合いでも構いません。……元敵の私と……一緒になってくれますか?」

 

 

目を見て。全部出す。胸の中全部。後ろめたいことも全部。

 

 

 

彼女ならきっと……

 

 

「……はいっ……はいっ!!」

 

受け止めてくれるはずだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

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