side筒美火伊那
カタカタ……
「〜♪」
はぁ〜……なんて言うか……良いね。毎日が色付いて見える。
私がこんな色ボケになるなんて……
世の中分からないものだね。
「…………」
ガラッ……
「流水ちゃ〜ん♪来たわよ〜♪」
「!」
「あ!気月さん!」
あ……♪
気月は私に一目も向けず、冬美ちゃんに近付く。
「今日も冬美ちゃんは綺麗ねぇ〜♡」
む…………
「ありがとうございます。気月さん。」
「お世辞じゃないのよ?」
「ふふふ……」
「信じてないな〜?このこの〜!」
「きゃ〜♪」
…………むむ……
「気月様。お荷物お預かりします。」
「あら♪ありがとうね?才子ちゃん♪」
「いえいえ。紅茶お入れしますね?」
「ありがとう♪才子ちゃんの紅茶大好きなのよ!」
「ふふ。立ち話もあれですし、ぜひお掛けになってください。」
「わかったわ♪」
「…………………………」
気月と目が合う。
するとニィ〜と口角をあげて私の所へ。
「なんだよ気月。とっとと席について……っ!?」
気月がズイっと顔を耳元に寄せてきた。
心臓が跳ねる。顔……近……
「嫉妬しちゃった?」
「!!」
バレて……
「可愛い♪」
ボソボソと耳元で話されると、それだけでドキドキしてしまう。私こんなに情けなかったか!?
「それに……私のことは千歳と呼んでって言ったでしょ?」
「う…………そう……だね……千歳……」
これが恋の弊害か……はぁ〜……こりゃ無理なわけだ。若い頃は無意識の内にこういうのを避けていたのかもね。
指を鈍らせる。
すると千歳が私に立たせるように促し、私の腕を持ってソファへ引っ張る。
「早く来て?」
「ちょっ!?行くっ!行くって!!」
「「「……」」」
私……今絶対見せられない顔してる。恥ずかしい……
そして私をソファに座らせ、何食わぬ顔でピッタリくっついて座る千歳。
わ……私はこんなにもドキドキしてるのに……千歳はドキドキしないの!?心臓の音がうるさくてよくわかってないんだけど!?
才子ちゃんが入れてくれた紅茶も、千歳が持ってきた名店の栗羊羹も……味が全然分からない。
「〜!」
「〜!!」
みんなの話し声もよく耳に入ってこない。千歳と居るだけでこんなにも心が乱される。
はぁ〜……恋って大変だね。
ふと視線をあげると……流水ちゃんと目が合う。
「……」
「…………ふーん?」
「!?」
私の顔を少し見たあとにぃと口角をあげ、こちらにほほ笑みかける。
まずい!!察せられた!?
いや何がまずいかわかんないけどすっごく恥ずかしい!!
「え……えと……」
「ふふ。お幸せに?」
「!!」
ボンッ!
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!まだお付き合いして数日の段階だから……みんなに言う訳にもいかず……でもバレちゃってるってなんかすっごく恥ずかしい!!
すると急にグイッと肩を抱き寄せられた。
「流水ちゃん?これ……私のだから♡」
千歳に。私の肩を抱く千歳に年甲斐もなくキュンキュンしてると……
「「キャーッ!!」」
「はっ……ばっバカ!!まだ私みんなに言ってないのに!!」
「え!?そうなの!?」
「はっ……恥ずかしくて……言える……訳ないだろ!!」
顔だけじゃない。首元まで暑くなる。顔から火が出そうとはこの事。
肩の手を振りほどこうと手をかけると……
「……♡」
急にグイッと引っ張られ……
「ちゅ♡」
「っ!?!?」
「「!!!!!!」」
唇に暖かい感触。一瞬だったけど……それだけで意識がふわふわしてる。
「みんな。……もう私のだから……ね?」
「「キャーッ!!!!」」
「……」
その日は……私と千歳の関係で話が持ち切りに……
ニコニコしてるだけだった流水ちゃんがすっごく怖い。
なんとなく満足気な千歳の横顔を尻目に……何とか何とか恥ずかしさに負けないように喋り通せた私を褒めて欲しいね。
……これが……幸せ。厄介だね。