side渡我被身子
流水さんに勝ったのを褒めてもらったあと、切島くんに謝りに行った。
「ごめんなさい。躊躇いなく色々しちゃいました。」
「いいって!俺の硬化が足りなかっただけだ!もっといい勝負できると思ったんだけどな!」
快活でいい人。良心だよね。A組男子の。
ちょっとだけ時間があるから皆のところにも顔を出してみる。
「すごいですわ!渡我さん!個性なしであそこまで戦えるなんて!」
「八百万ちゃん!ありがとう。八百万ちゃんは惜しかったですね!」
「常闇さんは本当に強かったですわ。……私もまだまだ精進しませんと。」
ぷりぷりしてる。かぁいいね。
「ほかのみんなは何処に?」
「麗日さんの試合が始まるまでに売店を見て回るそうです。もうそろそろ帰ってくるはずですよ。」
「そうなんですね。……間に合うんでしょうか?」
「さあ?どうでしょう。」
……そういえば……
「……どうして盾と剣だったんですか?武器。」
「?守るための盾と戦うための武器。当然では?」
あちゃー……思考が凝り固まってるタイプですね。
「このトーナメントステージに出せば勝ちなんですから、常闇くんを弾き飛ばせば良かったですよね?武器なんかにこだわらずにドカーンって。」
「……それは…」
「ヒーローっぽくないって?……まぁそりゃそうだけど自分の個性ですよ?知恵と経験がものを言う世界なのに、あれじゃ自分は戦う時これしか出来ません!って周りに言ってるものですよ?」
「……確かにそうかもしれません。わかりました!もっと知識をつけなくては!!」
「知恵と体づくりだね。頑張って!時間があったら付き合うよ!」
そろそろ控え室に向かっておくかな。休憩もしっかりしたいし。
「ええ!……え……渡我さんの訓練…!?(戦慄)」
大丈夫だよ。2日に1回1時間くらいランニングするだけだよ〜。
「渡我。」
控え室に向かってる最中、轟くんに声をかけられた。
「あれ?轟くん。何かありました?」
「……お前。個性は使わないのか。」
そう来ましたか……
「うーむむむ。皆にはもう言ってますからあまり隠しませんけど、私の個性のトリガーは吸血です。血を吸えないと変身出来ません。切島くんは硬すぎてそもそも血が出ませんでしたし……何より変身したところでって感じでした。」
「……それはそうだな。すまん。」
なんか悩みを感知!流水さんのマジカルアイ(渡我命名)みたいな感じ!
「……何かありました?」
少し俯きながら話し出す。
「………。もしだ。もしお前が親の期待を背に産まれてきたとして。それが片方の親にとって地獄で。自分の存在で家族が崩壊して。それでも。苦しくても前に進まなければならない時。お前はどうする。」
「逃げます。」
即答。私は過去出来なかった。
今ならできる。やってみせる。
「!」
「めんどくさいです。自分の人生なので好きに生きます。親がなんですか?私の親は私をお金で売りました。家庭がなんですか?私は存在しないものとして扱われました。親のことどうにかしたくなったら、自分でどうにかすればいいです。家庭のことも。結局はあなた次第じゃないですか?私に模範解答を押し付けないでください。」
「…………すまん。助かる。」
「……家庭のことは、もしかしたら全く関係のなかった他人が救ってくれるかもしれないですね。頑張ってください。」
「…………。」
……伝わりましたかね?
全員が全員幸せな家庭で過ごしてるわけでは無いんですよ。
私も。あなたも。
次の相手は爆豪くんですか…
嫌いなんですよね。あの人。何でもこなせる天才肌。センスの人。麗日ちゃんをボコボコにしたんですよね……なんかちょっとイライラしてきました。
私がボコボコのボコにします。
……それかイライラさせます。
おや?
「渡我さん!2回戦進出おめでとう!」
「渡我くん!いい動きだった!」
「緑谷くんと飯田くんじゃないですか。どうしたんですか?」
「いや……ちょっとね。」
「麗日くんを慰めに行ってたんだ。」
あー……爆豪くんにボコボコにされましたもんね。……でもそれはそれとして、触れられた瞬間終わりなんで私でもああします。
「まぁ……正攻法でしたよね。爆豪くんがスタンスを崩さなかったのが勝ちを掴んだ要因じゃないですかね。」
「……しかしだな……やり方と言うものが……」
「真面目ですね。飯田くんは。」
「…かっちゃんらしい勝ち方だったよね。麗日さんもあまり気にしないでくれるといいけど。やっぱりかっちゃんは凄いな。見習わないと。」
「…………。」
この人……もしかしたら爆豪くんの弱点かも?
「使ってみようかな。」
「渡我さん。何か言った?」
「いえ?何も。」
緑谷くんvs轟くん。
お互いの超攻撃力をぶつけ合って轟くんの勝利。
炎出してるの初めて見ました。
緑谷くんは……なんというか……流水さんが居なかったので多分リカバリーガールに呼ばれたんでしょうね。大変そう。
飯田くんは速攻で塩崎さんを場外に出して終わり。早かった……。
常闇くんは……芦戸さんに難なく勝利。黒影強いですね。本当に。
……私の番ですか。やっと。まぁ……どちらかに転ぶはずです。
私の辛勝か。
爆豪くんの心にヒビを入れるか。
後者の方が面白そうですね?
『1回戦を肉体だけで勝利!パワー系女子!ヒーロー科!渡我被身子!!』
『全員のヘイトはこの男!圧倒的センス!ヒーロー科!爆豪勝己!!』
「……個性使わねぇのか。」
「轟くんにも言われました。似た者同士ですね。」
「あぁ!?似てねーわクソが!」
また怒ってる。コミュニケーション取る気ないんですかね?
「……私は貴方が嫌いです。」
「……それがなんだよ。」
「なので」
『Lady……fight!!!!』
「どちらに転んでもいいようにしますね?」
最初に突っ込んだのは私。爆豪くんは待ちの構え。
当然。近距離はショットガン持ってる爆豪くん有利ですから。
でもそのショットガン……
BOM!!
自分の視界塞いじゃいますよね?
「チッ!!てめぇ!!」
「捕まえましたよ爆豪くん♪」
後ろから首絞め……スリーパーホールドの形。
腕はすぐに足を絡め、自由を封じる。
ギチ……ギチ……
「がっ……ぐっ……」
「とっとと降参した方が身の為ですよ〜。」
「……バ…カ言ってんじゃねぇよ……このまま後ろ出せば……おめぇの負けだろうが!!!!」BOM!
爆豪くんは自身の爆風を使って後ろに飛ぶ。
確かにこのままだと私の負けだ。
なので拘束を解いてそのまま距離をとる。
「っ!がっ……ハァ……ハァ……」
多少は削れましたかね?
「……どうしましょうね?」
もう一度突っ込む。
BOM!
後ろに回って……
「同じ手は通用しねぇよ!!」
BOM!
「ふふっ。当たってませんよ?」
「はぁ!?」
突っ込まずに後ろに下がる。
そのまま間髪入れずに前に。
人間の弱点は……体の真っ直ぐ。中心にある。
「ふっ!」
ボゴォ!お腹に拳が深く突き刺さる。……が
「痛ってぇ!……だが捕まえたぜ?」
手のひらでガードされてる。上手いですね。
「オラァ!!!」BOMBOMBOM!!!
私の手を離さずにもう片方の手で連続接射。
容赦ないですねほんとに。
痛い……熱い……ですけど……
こんなの想定内ですよ。
バキッ……
「ぐっ……あっ……」
「だから言ってるじゃないですか。前見えませんよねって。」
私のハイキック。反応してたみたいですけど腕ごと吹っ飛ばした。
「くそがぁ!!」
まだ起き上がるんですか……タフネスですねぇ。
私は髪の毛がボロボロになっちゃったから直したいんですけど。
「女子の顔に躊躇なく攻撃できるのさすが爆豪くんですね。」
「ここに立ってんなら男も女も関係ねぇ。渡我。てめぇには何がなんでも勝つ。」
「おっ名前呼んでくれましたね。認めてくれたってことですか?」
「うるせぇ裏口入学。黙って戦え!」
ふーんそんなこと言っちゃうんだ。もう勝ち負けなんてどうでもいいです。どうでも良くなっちゃいました。
「裏口入学ゥ?酷いですねぇ。そんなこと言うんだったら私にも考えがあります。」
私は横に歩き出す。多分1番嫌がってるキラーワード。その酷い自尊心をめちゃくちゃにしてあげます。
「……?」
「怖いですよね。緑谷くん。」
この笑顔。流水さんの血を吸ってる時しか見せないんですよ。どうですか?出血大サービスです。
「!!!!!……オイ……てめぇ……」
「そりゃそうですよ。嫌ってくれればだいぶ楽ですもんね?」
「………オイこれ以上その口開いてみろ。ゼッテェ殺す。」
ジリジリにじり寄ってくる爆豪くん。でも……
「突き放してるのに自分のテリトリーに入ってきて。あなたは折れずにめげずに突き放してるのに全く意に介さないバケモノメンタル。どうですか?推理当たりました?」
ちょっと遅かったかもですね?
「てめぇ!!!!」
爆豪くんが突撃してくる。きゃー怖い。でも試合終了です。
私は白線の外側を踏む。
「!」
「渡我さん場外!!爆豪くんの勝ち!!」
「……てめぇ!てめぇ!!!!」
「爆豪くん試合は終わったの!待ちなさい!!」
先生に拘束されてるの面白いですね。ふふふっ……
「それでは。最悪の1日を。」
あの呆けた顔。傑作ですね。
side傷原流水
……ふーん。あの様子だと爆豪くんの自尊心を削って敗北か。嫌なことするねぇ被身子ちゃん。
「貴様の彼女は降参したみたいだな。」
エンデヴァー……さっきちょっと落ち込んでたのは治ったんですか?
「んー……いい負け方ですね。相手の心を綺麗にボコボコにしました。試合中は動きが良かったですし文句ないです。」
「……性格の問題か。……ふむ。確かに動きは良かった。個性が絡められればもっと優れたヒーローになるな。」
「個性ねぇ〜……まぁどうしようもないですよね。」
「……個性の差はどうしてもある。それを補うのが経験と発想力だ。」
「……それに関しては同意します。」
「……ふん。珍しく意見が合ったな。」
「そうですね。ポップコーン食べます?」
「いらん。」
「さいですか。」
機嫌が良いのか悪いのかわかんないやこのおっさん。