side傷原流水
カツン……カツン……カツン……
「止まれ。」
「……何用ですか。」
「言わなくてもわかるだろう。」
夜。公安からの帰り道。後ろに着かれてたのであえて路地裏へ。誘ってみたらまんまと引っかかったので、あまりこういうのに慣れていない人なんだろうなと。
こういうのは喋る前に問答無用で切りかかるもんですよ。殺す目的があるのであれば……ですが。
「……」
ズ……ズ……
足音。近寄ってきてますね。……甘い。それに……
「4人ですか。」
「!」
「あなたと。建物の上にひとり。そっちの脇道にふたり。」
「……」
「沈黙は肯定と見なしますよ。」
腰の剣を半分まで抜く。
「……何もしなければ私からも何もしません。それ以上歩を進めるのであれば……全員命の1個くらい覚悟してきてくださいね。」
こちらの世界で……私ということを知らないのは多分無いでしょうから、明確な殺意があっての事。……誰かからの依頼ですかね?
「っ……」
焦っている様子。背を向けたままでも分かります。
「ハァ……拍子抜けですね。」
剣を鞘に収める。
「っ!!」
飛びかかってきた。4人全員。……馬鹿じゃないですか?
1歩前に進んで、くるりと宙返り。相手全員を飛び越す。
「「「「!!」」」」
目からビームが出てる者。腕が伸びてる者。刀を振り下ろした者。突撃してきた異形型。
……ふむ。
「……」
着地と同時に剣を抜きエスコルチア発動。そのまま低空で突撃。1番近くにいた異形型を逆袈裟で斬り伏せる。
「むぉっ!?」
「……まず1個。」
……?手応えが……軽いですね?人を斬ったものとは思えないような……
……おや?血が出ないですね。代わりにピンクの煙がモクモクと……なにかの分身でしょうか。誰かの個性であることは確実ですね。……刀を持ってるやつですかね?
「一撃……!?」
「ちぃっ!!」
ビーム飛んでくる。連続で放ってくるが、目から出るのであれば視線から逃げればいいだけ。ぴょんぴょん壁を使いながら跳ねて躱す。
「当たらねぇ!!」
「焦んじゃねぇ!相手の思うつぼ……」
相手の隙。一気に飛びかかる。
「判断が遅い。」
斬っても死なないのであれば……どこ斬ってもいいですよね。
ビームを撃ってきてる者の顔。目の位置から後頭部にかけて一閃。
着地と同時に下から切り上げ真っ二つ。
……ふむ。やっぱり軽いですね?こんなこともう少し力入れないとできないんですが……あと。
「……弱すぎますね。」
「っ!!」
「くっ……くそ……」
まぁ……あまり雇い主の事、仕事の事を喋らないのはいいですね。そこだけ評価してあげます。
「このまま殺してもいいんですが……ていうか死んでるんでしょうか。まぁそれはおいおい考えていくとして、捕まえれるなら捕まえたいんですが……なんか意味が無さそうですね?」
異形型が動いている。逆袈裟で真っ二つになってるのに。……多分……何かしらの個性で活動してる時は死なないのかな?
そうなると……
「ふむ……だるまにしてからでも話が聞けそうですね。」
「「!!!」」
相手の顔が恐怖に歪む。
「首だけにしましょうか。あとは細切れです。」
「「…………」」
腰からナイフを抜く。二刀流。
「……さて。時間をかけるのも惜しいですし……パパっと片付けますね。」
〜♪
「「「!」」」
この曲……!!
『憎しみに明け暮れた 鳥かごの外で』
なんでアイツが……ここに……
『羽ばたくことも忘れて 正しさを捨てて』
急に聞こえだした音。カセットテープから聞こえるような音質の悪い曲。二度と聞きたくない。憎しみに溢れた曲。
『慈悲なんて とうの昔に飲み込んだ』
「郷愁の……サリナ」
『あぁ 故郷の鳥籠が恋しい 私は 郷愁のサリナ』
「や〜ぁ。ブラッドロータス。今日も美しいね。」
路地裏の奥から出てきた。絶対見間違えない。あの真っ赤なスーツ!この曲!!
「ガス……マスク!!」
「覚えてくれて何よりだよ〜ぉ。」
「G様!!」
……G……?
「やぁやぁ……君ィたちの処分は後でするよぉ〜……アイツが悪ぅい可能性もあるしね〜……」
ガスマスクがこちらに視線をやる。
「忘れるはずが無いでしょう。……ここに来たってことは……」
「ん〜♪そうだよぉ。そいつら回収しに来たの。さすがだねぇブラッドロータス……個性下とはいえ……そいつらが手も足も出ないなんてぇ……」
4回指をさした。多分こいつらのこと。
気になることが多い。……一旦無視。
「……させないと言ったら。」
「……殺し合いになるねぇ……」
ガスマスクが腰の鞭を手に取る。……来る。
と思ったら、横の振り回しなにかに鞭を巻き付けた。
「……それ……は……!」
「取引しよう。ブラッドロータス。」
「取引……!!?」
プロパンガスのボンベ。…………なるほど。応じないと……って言うわけね。
「僕ぅは……君とこの状態で戦いたくない。君とやる時は生身だ。」
「生身…………?」
「だかぁら……お互いに手を引こうじゃないか。僕ぅは……彼らを回収して去る。……君も僕が去るまで余計な詮索はしなぁい……それでどうだい?」
「……」
従う他……無さそうですね。横は飲食店。やつの個性で引火しようものなら……
「……わかりました。」
「ンフフフフッ……bravobravo!……ヒーローってのは厄介な頚枷だねぇ?……じゃっ……」
ガスマスクが靴の踵をカツンと鳴らす。
急に奴らの足元にピンクの魔法陣が。
「adieu♪ブラッドロータス……次は殺ぉし合いだ♪」
ポンッ!という軽快な音とともに奴らがが消えた。
「…………」
はぁ……今日は一旦帰りますか。