side傷原流水
「どんな子かしらね。」
「そうですね……」
今日は前々から話していた孤児を引き取ろうの会第1回目。知り合いの孤児院をいくつか回って色々みてみたのだけど、誰も幸せそうで……まぁ運営してくれる人がいいのはわかるんだけど……
それでそんな子を選ぶ訳にも行かず……どうしようか悩んでいたところ、ちょうど一報連絡が入った。
内容は『個性が暴走して、暴れ回っていた子を保護した。』とのこと。しかも保護に携わったのが日巡璃ちゃんと来たもんだ。ちょっと運命感じたから被身子ちゃんと一緒に見に行こうと。
それで今はとある病院。隔離施設にいるらしい。……まぁ個性が暴走する子だし……厳重な隔離は必要だよねぇ。
そんで、医院長先生から資料をもらって目を通してる。
「……年齢は7歳。女の子。両親は他界。親戚一同音信不通。鎧武者のような守護霊を操る個性。彼女に危害(触れる、話しかけるも同義)を加えようとするものを無差別に攻撃。範囲は彼女の影が届く距離。自らの個性に怯えている様子有…………ですか。かなり難しそうですね。」
正直同じ感想だ。
己の個性に恐怖している……多分その恐怖も増長されて個性が暴れ回っているんだろう。個性発動が暴走のトリガーなら相当危ない。
「……そうだねぇ。この文書を読む限りは。」
「そうですね。実際目で見てみないと分からないですから。」
「ふふ。さすが被身子ちゃん。よくわかってるね?」
「何年一緒にいると思ってるんですか?」
「えへへ……」
ちょっと照れるね。
「はぁ……かぁいい。」
「傷原様。用意が出来ましたので……」
「「はい。」」
呼ばれたので着いて行ってみる。ここの医院長さんとは知り合いだ。
ガラス張りの部屋に案内される。……多分強化ガラスで……あっちからはこっちは見えないんだろうな。
中にはおもちゃらしき物がいくつかと、ベッドの上に女の子が1人。虚空を見つめている。
髪は短く、本当に短い。ベリーショートってやつ?パッと見男の子に見えるね。体つきは……7歳とは思えないくらいガリガリ。酷いねぇ。親戚からタライ回しにされたんでしょ。多分。
目の下にクマ。顔からは生気を感じない。
なんか……目が合った気がした。
はぁ…………迷ってた私がバカみたい。
「…………行ってくるね。」
部屋のドアに手をかける。
「傷原様!?」
「私も行きますよ♪」
「医院長。私たちに任せて♪」
「え?……はい。」
困惑してるようだったけど、まぁ任せて欲しいな。
そしてふたりで部屋に入り、ドアを閉める。
視線が突き刺さる。もちろん視線は外さない。
恐怖。困惑。苦悩…………そして少しの希望。
「ね。」
1歩進む。
「ひっ!!」
その子の後ろからヌッと大きな鎧武者が。大きさは……ざっと3mくらいかな。大きな刀を持ってる。
「……大きいねぇ。」
「そうですね。」
「……こ……来ないでください……僕の……子が……傷つけちゃう……!!」
「……やだね。」
「!!」
「嘘は聞きたくないよ。」
1歩。
「うふふ。流水さんが進むのであればお供しますよ♪」
被身子ちゃんも1歩。
それに反応して鎧武者が抜刀、そして斬りかかってくる。
「いやっ……やめてっ!!」
大振り。リーチ。それに伴う殺傷能力。
「……日巡璃ちゃん達は苦戦したかもしれないけど……」
腰からナイフを抜く。
ガギィン!!
「!!」
「……私には通用しないよ?」
刀を受け止める。ふむ…………
「力は普通。体のサイズにしては弱いかな?防御力はどうだろ。被身子ちゃん。」
「はいは〜い♪」
被身子ちゃんが袖から分銅を取り出し、鎧武者にぶつける。顔面クリーンヒット。
「え!!」
鎧武者が大きくよろけた。
「……まぁ普通ですね。実際の鎧にぶつけた感触です。」
「そっか。じゃあ……」
ナイフで指を少し切る。血をナイフに乗っけて……
「クロユリ一閃。」
血の斬撃を飛ばして、鎧武者を拘束。
「え!?え!!」
「被身子ちゃん。ちょっと見ててね。」
「いいですよ♪」
驚いてワタワタしている女の子に近付く。
「ね。大丈夫だったでしょ?」
「……えと……おねーさん達は……一体……?」
「ヒーローだよ。」
「ひー……ろー……」
女の子の手を握る。
少し驚いた様子だが、受け入れてくれた。骨が浮き出て……ほんと許せない。
「ね。……うちの子にならない?」
「………………え?」
「私たちと家族になりましょ?」
「…………おねーさん……達と?」
「うん♪」
「…………!!……ダメ!私の個性が……!」
「今止めれてるけど?」
「私は……個性が扱えない欠陥品で……!」
「子供なんて誰でも足りない所あるでしょう。貴方は個性だったってだけ。」
「私はっ……幸せになっちゃ……いけなくて……!!」
女の子の目から大粒の涙がこぼれる。
……そんなこと言われて育ってきたんだ。そう思うのが……普通になっちゃう生活だったんだ。
「……」
「流水さん。こいつ動きそうです。」
「……ね。見てて?」
「…………え?」
クロユリの拘束が解かれ、鎧武者が突撃してくる。
「おねーさん!!」
腕に血を纏う。
「ふんっ!!!」
拳を撃ち抜く。鎧武者にヒビが入り、粉々になって消える。
「私はヒーローよ。泣いてる子を見捨てるほど……人間終わっちゃいないわ。」
「……!」
この子の本心を聞きたい。この子の口から。
「幸せになっちゃいけない人なんていない。……私たちが幸せにしてあげる。」
「うふふ。人生って……結構捨てたものじゃないですよ?」
「…………おねー……さん……」
血を解く。この目は……もうきっと大丈夫。
「私傷原流水。こっちは……」
「傷原被身子です。流水さんと結婚してます♪」
「…………」
「あなたの名前を教えて?」
「…………歪(いびつ)。……そう呼ばれてました。」
…………多分両親がつけた名前じゃないわね。ほんとろくでもない。
「そう。じゃあ貴方は今日から傷原歪ね。よろしくね。歪ちゃん。」
「え……」
「うふふ。賑やかになりますね?」
「え……え……??」
話がポンポン進んでいくもんだから困惑してるのね。
「早く帰るわよ。私たちの家に。」
「こんな辛気臭い場所とっととおさらばです。」
ふたりで手を差し出す。
「!」
「「おいで。歪ちゃん。」」
「…………はい!」
今日から家族が増えました。