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「よ。元気?」
「き……傷原さん……!」
とある公園。ブランコに腰をかけて辺りを見渡していた私は……とある人に会った。
「ご無沙汰しております!」
「ん。元気そうで良かったよ。」
私を救ってくれた人。私の肩を掴んでくれた人。
彼女は……大きなカバンを下げて私の前に現れた。
「……綺麗だね。ここ。」
「はい。お仕事の後によく来るんです。」
「お仕事?……そっかそっか。決まったんだね?」
「はい。今は清掃員のお仕事をやらせてもらってます。傷原さんはどうして……?」
「ロクピン……あー……仮釈放になったって聞いたからさ。遅くなったけど会いに来たよ。身元引受け人さん……出来たんだね?」
「はい。私の元上司が引き受けてくれました。……本当にありがたいです。」
私……男の人に騙されて人を殺めてしまいました。本来であれば20年以上の懲役だったところ、お医者さんの診断で7年まで少なくなったらしいです。
まだあの頃を思い出してちょっと苦しくなりますが、あの頃よりは改善されたと思います。
私は、ここまで懲役が少なくなって良いのか不安です。私は人殺しなので。流水さんに助けて貰えなかったら……今頃どうなっていたか……
服役中、私が務めていた会社の上司が私の身元引受け人として立候補してくださりました。私はあの人に迷惑しかかけていないのに。
本当に頭が上がりません。
「……そっかそっか。良かったね。じゃあ今普通に生活してるんだ?」
「はい。傷原さんのおかげです。」
「ふふ。今生活できてるのはあなた自身の努力でしょ?」
「でもそのきっかけをいただいたのは傷原さんです。」
傷原さんが隣にブランコに腰をかける。
「……じゃあ受け取っておくよ。」
「ありがとうございます。」
「これは借りかな?」
「もう……やめてくださいよ。」
「ふふ。」
……あの男。私を騙していた男は金融屋さんだったみたいです。私の周りで不幸を起こし、私に無理な利子でお金を貸し付けてあとは傀儡に。今思えばわかりやすい手口でしたが、当時の私は若く……あの男を信じ切っていました。
あの男の望むことならなんでもやりました。やらないとあとが怖かったのです。暴力と言葉による恐怖の刷り込み。彼の手口であり……彼の全てでした。
「新しいきっかけを掴むのも、それを握り続けるのも……昔のあなたは多分できなかったよ。……胸を張って欲しいな。」
「…………はい。」
それを救ってくれたのが傷原さん。私の恩人で……私の目標で……あ!
傷原さんの左手……!
「傷原さん。結婚されたんですか?」
「そうだよ。女の子と……だけどね?」
女の子……今の社会は進んでいるのですね……!
「…………幸せですか?」
「とっても!養子も居るんだよ♪」
「……」
傷原さん……すごく嬉しそう。
「……あなたは?子供……どうだったの?」
「…………1度だけ。1度だけ見に行きました。……でも…………私なんて必要なさそうで。」
「…………そっか。」
あの男との子。出産しました。獄中で。……ちょっと涙が出そうです。
「…………頑張ったね。」
「………………いえ。私なんて……」
傷原さんがティッシュを渡してくれた。
「困ったらいつでも連絡しておいで?ブラッドロータス事務所で待ってるから。」
「……はい!ありがとうございます。」
「……今絶賛事務員さん募集中だからさ♪あなたなら大歓迎だよ。」
「……良いのですか?」
「うん。そっちの仕事の都合もあるだろうけどね?」
…………本音を言うと傷原さんのところで働きたい。
「……わかりました。前向きに検討させていただきます。」
「へへ。うん。……あ。」
「?」
「これあげる。」
傷原さんがカバンからよもぎ餅が2個入ってるパックを取り出した。
「これは……よもぎ餅……」
「好きだったでしょ?食べたいかなって思って。」
「…………実は昨日……食べちゃいました。」
「あれぇ!?……我慢できなかったんだ?」
「…………はい。」
ちょっとだけ恥ずかしい。実は週1で食べてるなんて言えない。
「……じゃ、私の出所祝いだと思って受け取ってよ。まだ仮だけどね。」
「…………はい!いただきます。」
「……よし。用事も済んだし……帰ろ。」
傷原さんがブランコから立ち上がり、軽快な足取りで公園の入口へ。
「あなたはどうする?」
「私はもう少しここで……風が気持ちいいので。」
「……そっか。体冷やさないようにね。」
「はい。」
「またね!」
傷原さんが手を振って公演を出ていった。
「……」
受け取ったティッシュ。ブラッドロータス事務所の電話番号と地図が載っている。
「…………」
『新しいきっかけを掴むのも、それを握り続けるのも……昔のあなたは多分できなかったよ。……胸を張って欲しいな。』
今の……私なら……