side渡我被身子
職場体験3日目
「次はこっち。走らず急ぐ。」
「はい!」
私はリカバリーガールの所に職場体験……というか完全にお手伝いさんと化してる。
基本的に病院勤務。時々雄英に戻るという感じ。行ったり来たり。忙しい故に休憩はあまりない。
でもリカバリーガールのお手伝いが出来ることは嫌な訳では無いし、充実感もあるのでちょっと楽しい。
「はい。ちょっとだけ休憩をし。飴ちゃんあげるわ。」
「ありがとうございます!失礼します。」
私は病院の一角……自動販売機のあるエリアで休憩。
流水さんも本来ならいるはずだったんだけど、職場体験をやってるらしく不在。……やるなら私を指名してくれればいいのに。
よりによって……
「爆豪くんか……」
ため息がこぼれる。
爆豪くんの心をバキバキに折って来るとか……ボコボコにしてくるとか言ってたけど……ちょっとだけ嫉妬。
「……流水さんといる時間が少しだけ短いです。……ふぅ……寂しい。」
「……ハァ。あいつも馬鹿だねぇ。」
「はえ!?リカバリーガール!!聞いてたんですか!?」
気付かなかった……恥ずかしい。
「声かけたけど反応しなかったのはそっちだろう?……それよりも傷原だよ。……本当に申し訳ないね。アレにもアレなりに考えがあるんだよきっと。」
「……いえ。流水さんの活動の枷にはなりたくないです。」
「……大丈夫さ。あいつなら何言っても受け止めてくれるよ。」
リカバリーガール……
「…………そうでしょうか。」
「そうだよ。私の弟子だよ?そんなヤワに育てた覚えはないね。」
「……ありがとうございます。」
少しの不安。
今日は空が嫌な色。何も無ければいいけど。
side傷原流水
「だぁっ!!!当たらねぇ!!!!」
「少しだけ動きは良くなったけど……それじゃまだまだだね〜。」
爆豪くんを転がして今日は10回目。
「ハァ……ハァ……くそっ……なんで当たらねぇ……」
「すごく私の事見て動いてるのわかるんだけど、それ以上にあなたの動きは分かりやすいわ。精進なさい。」
「……くそっ…」
「じゃあ今日最後のパトロール行くわよ。とっとと準備なさい。」
「わーったよ!」
外に出て爆豪くんを待つ。
……なんか今日は嫌な気がする。少しだけ……少しだけ歩み寄られてる感じ。
「……早めに行った方が良さそうね。」
「……なんなのこれ。」
炎。保須が炎に包まれてる。
「オイ!これやべぇんじゃねぇのか!?」
「…爆豪くん。騒ぎの渦中に今すぐに急行します。……もしかしたら、ヒーロー活動が続けれない可能性のある大怪我をするかもしれません。それでも来ますか?」
「あ?誰にモノ言ってんだ!行くぜ。絶対に。」
そう言うと思った。だったら私の行動はひとつ。
「じゃあ遅れないように。行きます。」
この子を守る。怪我なんて絶対にさせない。
二人で空に飛び上がる。
「……何処……何処に…」
「オイ!あれじゃねぇのか!!……なんだあれ。」
私もそちらを見やる。
「……あれって!羽があるけど…」
「脳無ってやつじゃねぇか!」
羽の生えてる脳無……空を飛びながら街を襲っている。
「爆豪くん。避難誘導を。」
「……わーったよ!やりゃいいんだろ!!!」
流石にわかってくれたみたいだ。怪我しないでね。
爆豪くんが地面に着地して避難誘導を始める。
「……いい子ね。じゃあ……」
私はアレを処理しないとね。
パッと見渡した感じ……脳無が3体。
なんで敵連合がここで暴れているのか分からないが……やるべきことをやる。
「とっとと仕留めるが吉ね。」
ビルの上。翼の脳無と退治している。ただ……
「あの時の脳無程じゃないわね。あなた。」
武器を十字に構える。
脳無が真っ直ぐ突っ込んでくる。
「クロユリ十断!!」
血の斬撃が十字に放たれる。相手の羽ごと拘束し、飛ぶ力を失った脳無は地面に落ちる。
「……久しぶりね。この高さからするのは。」
私は命綱なしで飛び降り、左足をふり上げて縦回転。
脳無の脳天を目指して。一閃。
「白雪落とし。」
ドゴォッ!!!
左足全体に血を纏い脳天を貫く。
地面が割れ、脳無の顔が破裂。もはや動けないのは確かだった。
「……こんなもんかしら。さすがにこれで死ななかったら困るわ。」
「貴様……何故ここに……」
後ろから声がしたから振り向くと、
「エンデヴァー。体育祭ぶりですね。」
「ものすごい音がしたから来てみたら……これは……貴様が?」
「はい。そうですよ。……エンデヴァー。それよりも。」
「むっ!」
ボゴォ!!
建物を破壊しながら頭のない生物……見た目の特徴からしてUSJの脳無に似た個体が出てくる。
「……頭が無い?……これも脳無ですか。」
「脳無?そうか……こいつがUSJの……」
「……ちょっと外見は違いますけどね。」
「…………援護しろ。ブラッドロータス。」
「言われなくても。」
指を切り、血を伸ばす。拘束したが……パワーがすごい。
「エンデヴァー!もって数秒です!」
「まかせろ。ふっ!!赫灼熱拳!!!」
エンデヴァーの炎が脳無を包む……が
その炎の中から脳無が飛び出す。
「何!?」
「クロユリ十断!!」
もう一度拘束。今度はそう易々と解かれない。
「超回復……エンデヴァー。あいつは多分再生能力があります。」
「なんだと!?……赫灼熱拳では熱が足りんか。」
ブチブチと音を立てて拘束がちぎれる。
「……もう一度……今度は殺すつもりで相手を縛るので。」
「…………ふん。いいだろう。」
今度は私が脳無に突っ込む。手のひらに血を纏い……近距離戦だね。
脳無の攻撃。1発でも当たったら終わり。でも……全然躱せる。
後ろに回り込み……腕を突き刺す。狙いは首筋。
ドスッ…
「そろそろ止まりなさい。シスル・シース。」
首から脳無の血に触れた瞬間脳無の全身の血をその場に止める。
普通はそのまま死ぬが、生き残る可能性もある。なにゆえ個性が不明だ。
案の定……まだ生きている。だが……
「エンデヴァー。どうぞ。」
首から手を引き抜き、距離をとる。
「……赫灼熱拳では熱が足りんのであれば……焼き切れるまで熱を上げるまで。」
エンデヴァーが脳無に触れると、炎を噴出し続ける。その炎が青く変わった瞬間、脳無の体が崩れ始めそのまま息絶えた。
「さすがNo.2と言った所でしょうか。個性の腕もそれ相応ですね。」
「……貴様がヤツを固めたから出来たこと。褒められるようなものではない。」
なんでエンデヴァーが……それよりも轟くんの職場体験先って……
「…………そういえば轟くんは何処ですか。」
「……!あいつ……焦凍ォ!!!!!」
うるさ……
「オイ!避難終わった……ぞ」
「おや。爆豪くん。お疲れ様です。」
「……お前は……体育祭1位の……」
「これは……それにエンデヴァー……なんで……ここに……。」
びっくりしてる。それはそうよね。管轄外だもん。
「ヒーローだからだ。ヒーロー殺しを追っていたタイミングでこの化け物。脳無だったか…と鉢合わせただけの事。」
「…………」
「脳無は2体片付けました。あと1体は……」
「もう1体は既に片付けた。脳無はもう居ない……が。ヒーロー殺しが居ないとは限らない。消火活動と共にヒーロー殺しの散策を続ける。」
「その前に轟くんでしょ?」
「わかっている!」
prrrr……
「……俺だ。なんだ。……何?ヒーロー殺し!?」
「「!!」」
ピッ
「……焦凍が今交戦してるらしい。少し急ぐが……お前たちは来るか?」
「……あなたが行くのであれば私は過剰でしょう。ここら一帯の鎮火及び安全確保に努めます。」
「ほう。」
「はぁ!?俺は!」
爆豪くんの反発。轟くんが戦ってるのに自分は……って話かな?
「爆豪くん。鎮火、安全確保も立派なヒーロー活動です。ヒーローが分散しているという事は、敵も動きにくいということ。これは犯罪現場でも同じ事が言えます。」
これは建前。ステインのこと私は捕まえないからね。
「……でも!」
「私だけならともかく。初心者を連れて行って何かあったら対処が遅れます。できることをしましょう。」
これは本音。君じゃ正直足手まといだよ。
……そもそも轟くんで勝てる相手かな?
「ふん。ヒーローをしているだけはあるな。」
「エンデヴァー。次会ったら覚えておいてください。」
「ふん。俺は行くぞ。」
エンデヴァーが飛び立つ。
「…………やればいいのかよ。」
「はい。ほかのヒーローと連携しましょう。」
「……わーったよ。」
少しだけ成長したのかな?……まぁまだまだ折りますよ。プライドなんて捨てましょう。
side轟焦凍
「……ちっ緑谷!飯田!動けるか!!」
「ま……まだ……多分やつの個性だ……」
「ぐっ……うぅ……」
氷と炎に反応で追いついてくる。
まるで……
「動きが……まるで渡我だな。」
「!」
少し反応した……?
「ハァ……そこの緑の男も。お前も。……白いお前は論外だが……こんなものだろう。」
ステインが飛び上がる。
「なっ!?逃がすか!!」
一気にあんな高くまで!……炎が届かない!
「俺の活動はまだ終わらない。全てにヒーローがヒーローたらしめるまで。誰かが血を流さなければ分からないのだ。この世は。」
「……何を…」
「………貴様たちがそうならないことを祈っている。見返り。名声。求めるものを履き違えるな。」
ステインは立ち去る。……捕まえることは出来なかったが……助けることは出来た。
見返り。名声。認めるもの……か。
「ありがとう緑谷。お前が位置情報を教えてくれたおかげだ。」
「ううん。僕だって何も出来てないし……。」
緑谷は少しの切り傷のみ。
「……すまない。僕の独断で……仕返しなど……考えてはいけないのに。」
飯田は腕と足を負傷。1人では立てない。
「……俺もそうだった。見返したかった。」
「……。」
「……君も?」
「……だが、あいつの動きも。判断も。全部一級品だった。もう一度向き合わねぇとな。」
「轟くん……」
『めんどくさいです。自分の人生なので好きに生きます。親がなんですか?私の親は私をお金で売りました。家庭がなんですか?私は存在しないものとして扱われました。親のことどうにかしたくなったら、自分でどうにかすればいいです。家庭のことも。結局はあなた次第じゃないですか?私に模範解答を押し付けないでください。』
「俺次第……か。」
「焦凍!!無事か!!!!」
向き合う。話し合う。やってこなかったことだが……やらなきゃならないことでもある。
「エンデヴァー。俺たちは無事です。しかし怪我人が……」
前に進まなきゃな。