side爆豪勝己
…黒
…何が
……光
…これは…
「!!!ッ」
起き上がる。
左肩と背中の痛み。
動かないほどではないが相当なダメージ。
「……あら。やっと起きた?」
目の前のブラッドロータスが声を出す。
どうやら一発で壁まで吹き飛ばされてこのザマらしい。
「……どれくらい寝てた。」
「30秒。1回死んでるわよあなた。」
まだだ……
「………もう1回。」
「当然。」
俺はまだ。心は折れていない。
side八木俊典
目の前の爆豪少年が手も足もでていない。
その現実をA組生徒は理解ができない。
少なからず雄英体育祭の優勝者。実力は折り紙つきだ。
「オールマイト先生!傷原先生ってあんなに強かったんですの!?」
「USJでちょっとだけ見たから弱くないって思ったけど……」
八百万少女と芦戸少女。2人の顔には少しだけ焦りが見える。
「強いも何も……彼女はそういう活動をしてきたから当然の強さだよ。個性を扱わない対人戦闘において、彼女はプロフェッショナルと言ってもいい。」
私と仕事してる時も、余波で逃げた小悪党ひとりで5人くらい捕まえてたしね。
「そのスキルを……個性で底上げしてるってことですか?」
「……そういうことだね。敵じゃなくて良かったよ。厄介すぎるからね。HAHAHA!」
本当にね。マッスルフォームを捌かれたら勝ち目がない。
地形と距離使ってひたすら逃げられそう。嫌な気持ちになるね!
爆豪少年の攻撃は微塵も当たらない。
当たりそうな攻撃は血の鎧から伸ばした血で腕、もしくは脚ごと止めて当てさせない。それで空いたボディに一撃、二撃。
爆豪少年が蹲る。
「はい。3死体目。」
「ぐぐぐっ……」
「苦しいなら吐いた方がいいわよ。」
「ぐばっ……だっ……誰が……」
「……強情なこと。」
目の前の戦闘……いや蹂躙とも呼べる戦いに見ている皆の様子は様々だ。
「オールマイト先生!爆豪死んじゃうよ!!」
「……傷原先生本当に凄いね。私も対人訓練してもらおうかな……。」
「拳藤大丈夫?胃の内容物すっからかんになるかもよ?」
「ひぇ〜……普段は優しいのに……これが渡我を落としたギャップってやつ?」
「違うだろ上鳴……。どこを見たらアレがギャップに見えるんだ。」
……でも力はだいぶ抑えてるな。手加減してるんだな。
「大丈夫だ。芦戸少女。あれでも手加減してるみたいで安心した!」
「「「えっ!?!?」」」
それもそうか。知らないんだもんな。
「エスコルチアは、自分の肉体に外付けアタッチメントを沢山用意して身体機能の上昇と、対応力の上昇を兼ねた傷原くん独自の技なんだけど。……それは彼女への身体ダメージを度外視した強化なんだ。」
「……ってことは全力出すと……」
「そうだね。筋肉は切れたり骨が折れたりするね。」
「えぇ!?じゃぁ傷原先生も止めないとまずいじゃん!!」
「諸刃の剣すぎる……」
「大丈夫さ!」
さっきまで無言で見ていた根津校長が口を挟む。
「僕は彼女の学生時代からよく知っているけど、彼女は元々身体スペックだけは高すぎた生徒なのさ!彼女のエスコルチアも学生時代に生み出した技でね。僕は何度も見ているから彼女の身体に今ダメージが入ってないのもわかるよ!成長してるんだね!傷原先生!」
「学生時代から知ってる?根津校長は他校の生徒も気にかけていらっしゃったのですか?」
「いいや。雄英高校だけだね。中学で名前が知られてると知ってる時もあるけど彼女は違うよ。」
「……ってことは……傷原先生雄英高校出身!?」
「そうさ!彼女は元雄英高校生……言ってなかったのかい?オールマイト。」
「いや。てっきり傷原くんが言ってるもんだと……」
「知らないよ!後で傷原先生の学生時代教えてください!めちゃくちゃ気になる!」
「はい。7死体目。どう?そろそろダブルスコアだよ?」
「ハッ……ハッ……ハッ……まだだ……」
「うーん……なかなか折れないねぇ?」
爆豪少年……君ってやつは……
side渡我被身子
雄英高校に一旦帰ってきた。
なんでもリカバリーガールが行かなくちゃ行けない場所があるってことで……私も着いてきたけど何も聞かされてない。
早く流水さんに会いたい。
向かって場所は訓練所。……なんか声が聞こえる?
「ぐはっ!?」
「うわあああ!!!すごーーい!!」
爆豪くんと……芦戸ちゃん?
「根津!来たよ。どうだい様子は。」
そこには……真っ赤な鎧。エスコルチアを使ってる流水さんと、現在進行形で吐瀉物を撒き散らしてる爆豪くんが居た。
「あっ!渡我!こっちこっち!!」
「えっ?何何?」
「あれ?渡我さんは聞いてらっしゃらないのですか?」
八百万ちゃん。芦戸ちゃん。耳郎ちゃん。上鳴くん。障子くん。よく知ってるA組の面々と……B組の人。あまりよく知らない。
「ううん。何も聞いてない……けど。」
「今爆豪が傷原先生にガチタイマン挑んで、ボコボコにされてる。今9回目のダウン。」
耳郎ちゃん……アイツそんなに挑んでるんだ……
だとしてもエスコルチアに?無理無理。
「…………勝てるわけなくないですか?私でもあの状態の流水さんに触れられませんでしたけど。」
「え!?渡我知ってるの!?」
「はい……っていうか私訓練が始まった半年後あたりから私との組み手はあれでしたよ?」
「「「え!?!?!?」」」
A組だけじゃなくてB組からも声が聞こえた。
……言ってなかったっけ。
「……何驚いてるんですか。一回も触れませんでしたけど。」
「えっ……ゲロ吐いたってこと!?」
「芦戸!汚い!」
芦戸ちゃん………
「はい。何度も。」
「!!」
「でも私は嫌じゃなかったです。強くなってる実感はありましたし……流水さんは私を痛めつけるためにやってる訳じゃないのは知ってました。」
「……愛だねぇ。」
「愛ですね。」
「愛だコレ。」
「なんですか3人で。でもまぁ……」
爆豪くんを改心させるならアレが1番ですからね。
爆豪くんの攻撃を、壁に伸ばした血の糸を手繰り寄せて躱し、そのまま身体を大きく振って遠心力をつけて顔に回し蹴り。
視界を奪った上で着地、空いた腹を蹴り上げ、天井にぶつける。
落ちてくる爆豪くんはちゃんとキャッチする。そのままリリース。
「……あれほんとに手加減してる?」
「だいぶされてますね。本来ならさっきの回し蹴りで顔面陥没してます。」
1回躱した時にビルの柱抉ってましたからね。
「……うわぁ。」
「防げない方が悪いので。……おかげで私は守りがめちゃくちゃ鍛えられました。」
「……だからあんなに体育祭でサクサク近距離で躱せたんだねぇ。私には無理かも。」
ちょっとだけ諦めムードの芦戸ちゃん。
ダメだよそれじゃ。
「……今の個性社会で……敵の個性が分からない以上何をされるか分かりません。」
「渡我さん?」
「でも何をされるか分からないからってそれで負けた時、やられた時……最悪死んだ時。言い訳には出来ないんです。世間でヒーローは勝って当然なので。」
「…………」
「この社会そのものがおかしい気がしますけどね。ヒーローは負けることはありえない。そんなこと無くないですか?誰だって仕事上のミスをします。それがそのタイミングだったって話っていうだけなんですけど。…ですが……ヒーローの失敗は誰かが死にま
す。」
「………渡我少女。」
「オールマイト先生もよく理解されてると思います。……できなかったら誰かが死ぬだけなので。私は死んで欲しくない人が居るから、どれだけボロボロになっても強くなれるなら地獄を望みます。」
「………」
「……ごめん渡我!私間違ってた!」
「大丈夫ですよ。これは私のヒーロー観なので。皆それぞれのヒーロー観があると思いますから。」
他人に意見は否定しちゃダメだからね。
「立派なヒーロー観をお持ちですのね!」
「師匠に鍛え上げられたのもあるけどね。」
ステインさん……どこ居るんでしょう?早く倒してあげたいです。
「すごい師匠だね。今はやってないの?」
「どこ居るかわかんなくて。なんかフラフラしてるんですよね。」
「あー……いるよねそういう人。」
耳郎ちゃんも経験がおありで?
急に私の前に人が来る。
オレンジ髪の……B組の人。
「あら?拳藤さん?どうかされました?」
拳藤さんって言うんだ。
「私B組委員長の拳藤一佳。あんたは?」
「…私?私は渡我被身子。」
「へぇ!八百万がよく話してる可愛い人達ってこの子?」
なんの事!?!?
「へぁ!?やっやめてください拳藤さん!」
「ぶーぶー!A組のアイドルグループなんだぞ!!」
「間に割り込むのは許さないよ。」
みんなして何!?知らないんですけど!?
「え!?はっ…初めて聞きましたけど!?!?」
「そんなつもりないって!……仲良くなりたいなって。立派だよあんた。感心した。」
手を差し出してくる。
「あ……いえいえ。こちらもまだまだ未熟なので。私も仲良くなりたいです。拳藤ちゃんでいいですか?」
迷わず握手。……手のひらマメだらけだ。努力してるんだなこの人も。
「ありがとう。いい手だね。私は渡我って呼ぶね。」
「はい。よろしくお願いします。」
なんとなく仲良くなれる気がする。
「一佳。ちょっと邪魔になってる。」
別のB組の女の子。……綺麗な人。
「あっごめんね。すぐ退く。じゃあね。」
「いいですよ。それでは。」
目の前の流水さんの手合わせは爆豪くんがダブルスコアになって今14回目。
現状爆豪くんは一度も流水さんに触れられてない。
小大さんは拳藤さんのこと一佳呼びならいいなって思ってるので一佳呼びです。