side爆豪勝己
速度
そもそも移動速度、空中潜在能力が比べ物にならない。
×
機動力
速さが違う上、地面においても血の糸を使った直角移動などもはや人間業ではない。戦える土俵にいない。
×
攻撃力
いい勝負は出来そうだが、速度、機動力が違いすぎて勝負すらできない。
×
判断力
こちらの攻撃を見てから後出しで対処される。血の鎧から出てくる拘束にも現状対処不可。差を感じる。
×
技
こちらは準備に発汗が必要で、初動が遅い上相手に好き勝手やられてる都合何も出来ない。
×
どうすりゃ勝てんだこの化け物に……
どれで勝つ?どれ使えば勝てる?
そもそもこれでなにかの間違いで勝てて……
俺が望んだ勝利なのかよ。
俺は通算20回目のダウンをした。
side渡我被身子
「……ダウン20回目ですね。」
「ひぇ〜……ここまで差が……。」
「爆豪!諦めんじゃねぇぞ!!」
いつの間にか来ていた切島くんと瀬呂くん。それとB組の人達。ギャラリーが増えたもんだね。
「根津。そろそろまずいね。」
「そうだね。心の前に身体が折れる。」
「そろそろ止めに入りましょうか?」
先生方が相談してる。
………もうそろそろ決着つけないとまずいですよ。流水さん。
あなたの努力が水の泡になっちゃいます。
side傷原流水
折れないなぁ爆豪くん。
「なんで君はそこまで勝ちに固執するの?」
「……ハァ……ハァ……オールマイト。」
「オールマイト?」
「見ちまったんだよ……ガキの頃……オールマイトが圧倒的な力で勝つことを……。」
あちゃー……脳焼いちゃったのか……あのおっさん。
「憧れちまったんだよ!圧倒的な1位を!夢見ちまったんだよ!!完全勝利をォ!!!!ハァ……ハァ……俺は!こんな所で立ち止まるわけには行かねぇんだ!!!!」
「でも。今あなたは勝ててない。私に。」
夢を否定してでも現実を突きつける。
「……それでも…ハァ…諦めきれねぇんだよ!!俺ァ!!!」
……変わらないんだね。何しても。
「…………あなたは諦めきれない。私は諦めて欲しい。あなたの身体も考えて。」
「ハァ……ハァ……」
「……打ってきなさい。あなたの全力を。最大火力を。」
じゃあ
「…………後悔しても知らねぇぞ…」
「させてみなさい。井の中のカエルくん。」
全力を折ってあげるしかないみたいね?
爆豪くんが今出せる最高速で近付いてくる。
何もしないわけじゃないだろうけど……守りの構えだけは入っておくか。
「閃光弾(スタングレネード)ォ!!!!!」
光!やられた!目潰し。ここに来て搦手。胆力あるわね。
音で判断。目が慣れるまでには打ち込まれてる。
「オラァ!!喰らいやがれ!!!」
ボッ!ボッ!ボボボボボッッ!!!!!!
目は……戻った!
これは…体育祭の!
「榴弾砲(ハウザー)……」
「……ふっ」
あえて近付く。接敵距離を近くする。
「!!」
雄英体育祭トーナメント決勝戦で見せた榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)……私が1度見た技を喰らうとお思い?
そのまま回転してる爆豪くんの手首を固め回転を利用して上に向ける。
「ッ着弾(インパクト)ォ!……なんだと!?」
上に向かって噴射。私が近付いて来たことで回転の力を上手く載せられず、焦ったことで対処が遅れた。詰みね。
「不発ね。お疲れ様。」
空中で仰向けになってる爆豪くんの突撃速度を利用、そのまま空中で2回転。地面に叩きつけた。
「!!」
「…………これで終わり。21回目。」
爆豪くんはまた意識を手放したようだ。
「すげぇ!!!あれあんなこと出来るの!?」
「目潰しされたから決まったと思いましたわ!」
「……これが保健室の先生?」
「ふふーん。うちの流水さんすごいでしょ?」
みんながワイワイ。被身子ちゃん?あなたのだけどなんで嬉しそうなの?
「傷原。それくらいにおし。」
リカバリーガールからの念押し。
「……理解してます。壊れないギリギリを攻めました。」
エスコルチアを解く。そのまま血を使って椅子を作り爆豪くんの前に座る。
ふぃー疲れた。
「はぁ……あんたが言うなら間違いないんだろうけど。」
3分くらい経った。
「ッ!!……勝負は…」
鼻血と頭部出血。これ以上はダメだね。
「爆豪少年!これ以上はダメだ!君の体が壊れてしまう!」
「そういうことさね。早く負け認めな!治療するよ!」
「爆豪!かっこよかったぜ!次頑張ろうな!」
「根性あるねほんとに!凄い!」
「うるせぇ!!!!!!俺はまだ!!負けてねぇ!!!!」
注意も。賞賛も。今のあなたには届かないのね。
爆豪くんの慟哭。オールマイトに憧れたからこその負けを認めれない。プライド。自尊心。
「んな事行ったってよ!あの技受けきられてどうすんだよ!」
「そうだぜ?このままやるのは現実的じゃねぇよ!」
「爆豪〜帰ろうぜ〜?一緒にハンバーガー食いに行こうぜ!」
ありがとう切島くん。瀬呂くん。上鳴くん。爆豪くんの味方で居てくれて。
「……何度でもやる。何発でもやる。通るまでやる!俺はまだ負けてねぇ!!とっとと構えろ!」
それでも止まらない。
「……爆豪くん。これ以上するとあなた死ぬよ?」
「……負けを認めるくらいなら!死んだ方がマシだ!!!!」
これでも止まらない。
「爆豪……」
「爆豪少年……君は……」
あなたのせいですよオールマイト。責任取ってあげてください。
「じゃあ。」
私は両手をあげる。
「参りました。私の負けです。」
「「「「はぁ!?」」」」
「……何言ってやがる!何言ってやがる!!!!」
「良かったですね。あなたの勝ちですよ爆豪くん。」
「……そんなの…認められるわけねぇだろうが!!!」
「認める認めないの問題では無いんですよ。私は参りましたと言いました。そこになんの違いも無いでしょう?あなたはいつから自分の我儘を通せる立場になったんでしょう。」
「でも!!!」
「生憎私は生徒殺して犯罪者にはなりたくないんですよ。被身子ちゃんの事もあるし。あなたの執念に完敗です。これで満足ですか?」
「……俺は……まだ……」
「あなたは何がしたいんですか?今現状20回以上私に負けて、圧倒的な勝ちは既にないんですが……私に認められたいんですか?」
「……負けるわけには…」
「だから勝ってるじゃないですか。喜んでください?全て出し切って何度も気絶したし、必殺技を出さしてもらって通用しなかったけど相手が降参したから勝ちました。いいじゃないですか。負けを認めなかったら勝てるんです。学びましたね?」
「そんな勝ちは!!」
「…………」
私は爆豪くんを見つめる。
「そんな……勝ちは……」
「……あなたの前に絶対に負けない人がいたみたいですね。正確に言うと負けても負けても何度でも立ち上がる……何も出来ないのに助けてくれる。それこそヒーローみたいな人が。」
「!」
「彼はどうですか?今のあなたなら理解できるんじゃないですか?プライドも。自尊心も。今のあなたの中には……何が残ってますか。」
「俺は……」
これで響かなかったら……もう
side爆豪勝己
『遅れてはダメなんですよ。ヒーローは特に。ヒーローが遅れると……』
『死人が出ます。あなたが未熟だからと事件は待ってくれません。』
『私だけならともかく。初心者を連れて行って何かあったら対処が遅れます。できることをしましょう。』
『させてみなさい。井の中のカエルくん。』
何度も頭を反芻した言葉。初心者。未熟者。
初めて面と向かって言われた。
何度も負けた。何度も転がされた。何回吐いたか覚えてねぇ。
不思議と腹は立たなかった。
『……あなたの前に絶対に負けない人がいるみたいですね。正確に言うと負けても負けても何度でも立ち上がる……何も出来ないのに助けてくれる。それこそヒーローみたいな人が。』
頭の中が少しクリアになった気がした。
俺は。デクが怖かった。
無個性の。何も持たなかったやつが……守られねぇといけねぇやつが。
俺を助けるのが。
意味がわからなかったんだ。
アイツにとって、俺はリスペクトの対象だったんだ。……同級生として対等だったんだ。
勝ち負けじゃない。俺には勝ちしか無いと思い込んでた。
勝ちだけが……完全勝利だけが全てだと信じてた。
『感謝も謝罪もできない大人になるならガキで結構です。』
感謝。一昨日周りのヒーローから沢山された。
謝罪。一昨日避難してた人から沢山された。
俺は……
したか?1度でも。
今。
俺の目の前で
俺のせいで
……負けを認めざるを得なかった人に。
周りの人間に。
ダメだ。
俺は1人いいと思い込んでた。
違った。俺は……
「傷原先生。」
俺は色んな人から助けられてた。
入学初日、俺に叱ってくれた飯田。
対人戦闘訓練で俺を叱ってくれた八百万。
USJ、体育祭騎馬戦で一緒に戦ってくれた切島。
こんな俺でも仲良くしてくれる上鳴。瀬呂。
何も知らねぇガキだった俺に全部気付かせてくれた傷原先生。
そのきっかけをくれたのは渡我だったな。
『大丈夫?立てる?』
そしてデク。……出久。ずっとありがとう。
…………今…
「ごめんなさい。俺の負けです。」
なんか……すげぇ気分がいいわ。