side傷原流水
「ごめんなさい。流水ちゃん彼女できたなんて知らなくて。」
私達はカウンターからテーブル席に移動した。
私の前には気月置歳……横には被身子ちゃん。
なんてことしてくれるのさ。被身子ちゃんが貴方のこと完全警戒して私の腕組みながらすごい顔してるんだけど!
知らないはずがない。この人私に対する重度のストーカー気質な所あるから。
……なんでこんな気に入られたの??
「……白々しいですね。嘘ならもっとマシな嘘着きません?」
「もう……つまらないの〜。ちょっとだけからかってあげようと思っただけよ〜。あなたが彼女いるのはマスターさんから聞いたのよ。それで今日もココに来たらあなたと……横のその子?が居たから彼女だって目星付けて……怒ってる?」
「怒ってます。四ツ橋さんに告げ口したいくらいには。」
「やめてー!私あの人から見捨てられたら何も無くなっちゃう!!」
「………この人なんなんですか。流水さん。」
被身子ちゃんが重い口を開く。
「うーん……」
気月置歳……またの名をキュリオス。四ツ橋力也率いる異能解放軍幹部。初めて交渉した時からあまり嫌な顔されなかったけど、何故か気に入られた。なんで?私結構嫌なこと言ったつもりだったけど。
「仕事の関係で……ちょっと仲良くなった人かな?……説明が難しいな。」
「……ふーん。ちょっと、仲良くなったんですね?」
やばいヤキモチモードだ!早くどうにかしないと!!
「……被身子ちゃんの思ってる程じゃないよ。私被身子ちゃん一筋だし。」
「……ふーん。」
顔をちょっと背ける被身子ちゃん。
チョロい。本当にこの子大丈夫かしら?
「ラブラブですね〜。渡我ちゃんだっけ?取材したくなっちゃう。」
「……してもいけど私がいるところでね?」
「嫌な質問しないわよ〜……ちょっとだけ。」
「……本当にあなたインタビューになると配慮が無いわよね。」
「当たり前じゃない!本音聞き出せた方がいい記事になるわ!!その為だったらどれだけ嫌な顔されても何も思わないわ!」
「………この人って人格ってどうなってるんですか?」
「ぷっ……被身子ちゃん…この人は本当に捻くれてるから、こういうコンテンツなんだな位の認識でいいわよ。」
「なによ!コンテンツって!……でも記事書いてるからそれはコンテンツでもあるわね。」
「……なんでこの人納得してるんですか??」
被身子ちゃん。私にもわかんない。
30分後
「それで流水さんがね!〜……その後流水さんが〜……そしたら流水さんがね〜……。」
「ふんふん!いいわいいわ!貴方すごくいい!もっと聞かせて!!」
ガリガリガリ…
「…………。」
ドウシテコウナッタ……
共通の話題探せば多少仲良くなれるのかな?でも革命団体と仲良くさせるのもなって思ってたら、二人で勝手に共通の話題(私の事)見つけて会話が止まらなくなってる。
恥ずかしい。今私顔真っ赤だよ。多分。きっと。Maybe。
「あの時の流水さん本当にかっこよくて!もっと好きになっちゃいました!」
「本当よね!この子可愛い感じしておきながら、いざとなったら本当にかっこいいの!わかるわぁ〜……それでそれで!?」
ガリガリガリ……
……この人がこんなペン走らせてるの久しぶりに見たな。……今でもやってんのかな?どっかの専務とか言ってたしもうやってない可能性あるけど……。
「それであんなことやこんなことが〜」
「いやーんなにそれ知らない!いっぱい聞かせて!!」
……いつまで話してんだ私の話を。私気を紛らわしたくて何度もコーヒー頼んでるから……トイレ行きたくなっちゃった。
「被身子ちゃん。お花摘みに行ってきていい?」
「あっいいですよ。置歳さんともっと話しておきます!」
「行っておいで流水ちゃん。被身子ちゃんには何もやらないから。」
「……信じます。」
私はトイレに立った。
……そんなに被身子ちゃんの脳焼いちゃったか……本格的に責任取らないとね。……結婚。しっかり考えないと。
side渡我被身子
「そういえば被身子ちゃんの両親のことって聞いてもいいかしら?」
「両親ですか……。」
「嫌?」
「……ちょっと抵抗があるくらいです。流水さんに救ってもらった話でもあるので……いい思い出……とは言えません。」
「なるほどねぇ〜……聞いても?」
普通は聞こうと思わないんですけどね?
「……遠慮が本当にないですね。いいですよ。……これ記事にしたらどうなります?」
「流石に実名は伏せるし、内容が分からないからなんともだけど……もしかしたら……って話はあるかもね?」
足……引っ張れるのか。……いいかも。
「……じゃあ話します。多分記事の出来るくらいの話だと思うので。」
「ふふふっそう来なくっちゃ!」
置歳さんがすごくワクワクしてる。人の裏話聞くの大好きなんですね。性格が非常に悪い。
「私……個性の影響で……血に興味があって。小さい頃雀が傷だらけで庭に倒れてたんです。……かぁいくて。でも苦しそうだったから血を分けてあげたんです。そしたら元気に空を飛んで行って。良かったなぁって思ったんです。」
「いい話じゃない。……でも?」
「はい。それを両親に見られて……私が血を吸ってるって思われました。そこから両親は私を糾弾し始めました。異常だ。普通にしろ。悪魔だ……ざっくりですけどこんな感じのことを毎日ですかね?言われました。」
「流水ちゃんが聞いたら大激怒しそうね。」
「はい。されましたよ?……でも私には親しか取り付ける場所が無かったので自分を抑制するしかなかったんです。……友達でも居たら良かったんですけど、笑顔が怖いって言われてから……本当に仲のいい友達って難しくて。」
「救いがなかったのね〜……ふんふん。両親に言われて1番辛かったことは?」
「色々あるんですけど……ひとつに絞れませんね。」
「いいわよ。全部言っちゃって。」
「『どうして普通に出来ないの!?』と『人間じゃない子産んじゃった』ですかね。あまり覚えてないですけど。……子供ながらにショックだった記憶があります。」
「ふんふん。それでそれで?」
「話の続きですか?……そこから中学3年までずっと仮面被って好奇心は抑えて……で生活してたんですけど、ある日……いい匂いがして。」
「血の?」
「はい。……我慢ができなくて。血まみれになってる人の首に……カッターを突き刺して……血を吸っちゃいました。」
「え!?それって人殺…」
「普通ならそうだったはずなんですけど……普通じゃない人だったんで。」
「……あぁ話が見えてきたわ!流水ちゃんね!?」
「はい。刺した人が流水さんで……そのまま受け入れられて、あれよあれよと言う内に流水さんの家にお邪魔させてもらう事になって。」
「ふむふむ。それでさっきのかっこいい可愛いエピソードに繋がるわけね?……両親の話はこれで終わり?」
「いえ?まだ大きい爆弾が残ってますよ。」
「え!聞かせてちょうだい!絶対にスゴイ話よ!」
「本当にあなたって……まぁいいですけど。それよりももう1回注文しません?居座り続けるのも良くないので。」
「えー……まぁいいわよ。お姉さんが奢ってあげる。」
「結構です。私の分は流水さんが全部払ってくれるので。」
「ふーん。誰にも渡したくないんだ?」
「はい。絶対に。」
私の意思は固い。誰にも渡さない。
「可愛い〜!いいわねいいわね!とっとと注文していっぱい話聞くわよ!」
「…………。」
流水さんがちょっと嫌な顔してたのがよくわかった気がする。
マスターに飲み物を頼んだら、私の前にショートケーキが出てきた。
「あれ?私頼んで……」
「サービスよサービス。……流水ちゃんが彼女連れてくるなんてよっぽどの事なんだから。」
「……そうなんですか?」
「そうよぉ。流水ちゃんそういう事に全く興味がない……は違うわね。縁が無かったから。」
「そうですね。流水ちゃんなんというか仕事一本!夢一本!みたいな人ですからあまりそういう事にうつつを抜かすイメージなかったです。」
「……じゃあ私って…」
「「特別よ」なんじゃないです?」
「…………ふーん。」
ちょっと顔が熱くなる。早く流水さん帰ってこないかな。
「あっ照れてるわね!可愛いわ!」
「置歳ちゃん!本当にこの子可愛いのよ!」
「2人してやめてください。もう話しませんよ?」
「それ困る!!お願い!もっと話して!!!」
「……程々にね?じゃあ私はカウンター戻ってるから。」
マスターはそそくさとカウンターに戻って行った。
「……話しますよ?……私が両親と決別した話です。」
「いい感じじゃない!聞かせて!!」
「……。助けて貰った日からずっと流水さんの家でお世話になってたんですけど、私が高校に行きたいってなった時…親権問題が発生して……。」
「たしかに。親の承認がいるわよね。」
「それで親権を譲渡してもらいに行ったんです。」
「……素直に聞くかしら?」
「ご明察の通りです。『私たちが苦労して産んだのにこの仕打ちはなんだ!慰謝料を出せ!』って。いくら要求されたと思います?」
私は一息つく。あまり気分のいいものではないですから。
「2億です。」
「2億!?途方もない……屑じゃない!!」
……今のあなたが言えますか?
「…………でも流水さんは了承……どころか両親に10億払いました。」
「じゅっ……!?あの子なら払えるかもだけど…………それだけ大切ってことね〜…」
「はい。流水さんはあまりしたくなかったらしいですけど、私の価値はお金で払えるものではなかった…2億円ポッキリとか馬鹿げてる…とか言ってくれたので。私としては両親に失望はしましたけど……ちょっと嬉しかったです。」
「へ〜……太っ腹ねぇ〜……。いい記事になるわ。きっと。……見出しは……『個性問題再発。大金で子供を売った両親!』とかいいかしら?」
「……なんか嫌じゃないですか?」
「別に?こういうのはインパクトがあった方が売れるのよ。」
そんなもんでしょうか。
そういえば流水さんの産みの両親の話を聞いたこと無かった気がします。
あの人……あまり自分のことを話さないから。
「そろそろどきなさい!もう!沢山撫でてあげたでしょ!!」
「そんなぁ〜流水さぁ〜ん!」
「足りないわよ〜傷原さ〜ん!」
「私今彼女いるの!わかる!?あんまりこういうことしたくないの!わかる!?」
「でも〜」
「……人気ねぇ流水ちゃん。」
「なんか複雑な気持ちです。」
これは今夜分からせないとですね?