side傷原流水
「私の産みの両親の話?」
気月さんと別れて、帰り道。時間も遅くなったし、夕食がてらちょうど良さそうなレストランに入った。
「そういえば聞いたこと無かったなって思って。……嫌……でした?」
個室に通され、私はステーキ。被身子ちゃんはボロネーゼを食べ終わった。
食後のデザートを楽しんでる時に、被身子ちゃんが話しづらそうに切り出してきた。
「全然?そういえば話してなかったね。どうしたの?急に。」
「……流水さんの事全然知れてないなって思って……私が好きな人の事……もっと知りたいなって。」
「いいよ。……まぁ面白くもない話だけどね〜。」
「私の両親も大概ですよ?」
それもそうだ。
「まず、私小さい頃の記憶が無いんだよね〜。」
「え!?」
「無いの。……5……6歳くらい?その辺で産みの母親と一緒に交通事故にあって。記憶と母親を失ったんだ。」
「…………そうだったんですか。……父親の方は?」
「うーん。その前にちょっと昔話しようか。……私の母親と、パパ……飼田一狼さんは、大学時代の先輩後輩で……母親の方が先輩ね?好き合ってたんだって。」
「え!!そうだったんですか!?」
「そうそう。……まぁ……母親は別の人と結婚するんだけど。」
「な……なんでですか?」
「政略結婚。母親は小さいながら会社の社長令嬢で、大きい取引先の社長の息子さんと結婚して欲しかった。……だからパパとの交際を認めなかったの。」
「……そう……だったんですね。」
「あと母親の両親が異形差別主義者で、パパって愛くるしい犬の見た目だけど一応異形じゃない?だから『我々の血筋に異形生物を入れることを断じて許さん!』って言ってパパに母親との接触を禁じたらしいの。」
「……異形差別……根深いですね。」
「大嫌い。本当に。……それでね?母親と産みの父親はお付き合いをすっ飛ばして結婚したんだけど、産みの父親の方がね?本当は母親じゃなくて別の人と結婚したかったんだと。それで私ができたけど浮気&蒸発。今は何してるかわかんない。」
「え!?酷い!」
「母親も抗議に行ったんだけど、『貴様が満足させてやらなかったのが悪い』とか言って手切れ金だけ貰って敷地内を出禁。実の両親も『お前に期待した私たちが馬鹿だった』とか言って縁切り。私と二人で天涯孤独。これまだ私が1歳の時よ?」
「……そんな。」
「これが現実。それでも母親は周りに協力して貰いながら、何とかシングルマザーとして頑張ってたけど……4年後飲酒運転のトラックとの接触事故で帰らぬ人に。私は頭を強く打ったせいで、記憶喪失と……今の血が多くできすぎる体質に。誰も頼れる人が居なくて、施設行きになる予定だった私を引き取ってくれたのがパパってこと。」
「……良かったですね。本当に。」
「本当に良かった。私が母親の姓だったからパパも気がつけたらしいけど……パパに会わなかったら…もしかしたら私敵になってたかもしれない。」
「……敵の流水さん……あまり想像したくないです。」
「でもパパに会えた。助けてくれた。……母親の顔は覚えてないけど感謝してる。パパにお墓の場所教えて貰えないから……お墓参りにはいけないけど。多分パパもあまりいい思い出じゃ無いんじゃないかな?私は責めれないよ。」
「そう……ですね。それで終わりですか?」
「んにゃ?もう少しだけあって、実は母方の両親とは会ったんだよね。」
「え!?なんで?」
そりゃビックリするよね。パパを罵った人達だから。
「私が望んだ訳じゃないよ?あっちが金の無心に来ただけ。私が雄英高校卒業して、公安務めってのをどっかから仕入れて押しかけてきたの。」
「今更……?」
「そう。今更。パパが怒って、産みの……ママっていうね?ママに言ったことを全部私に教えてくれた。……あっちの両親は騙されてるとか人外の血がとか言ってたけど…もしパパが悪さしてたとしても、ずっと小学生から育ててくれた育ての親と、私が金持ってるからって金の無心に来た知らない人と、どっちが信用に足るかって話よね。」
「それは……前者ですよね。普通の人ならそうです。」
「だから私は一生パパ大好きっ子でいいし、ママにずっと感謝してる。お墓に手を合わせに行けないのはちょっと残念だけど、パパの気持ちの整理がつき次第だな。……流石に亡き想い人の娘にママのお墓行きたいって言われたら酷だと思うよ。……私はね?」
「……流水さん。パパに幸せな姿いっぱい見せましょうね。きっと……きっとそれが恩返しになります。」
「もちろん。被身子ちゃんのこといっぱい幸せにするね?」
「ふふっ。負けませんよ?」
一緒に幸せになろうね。パパも一緒に。ママの分も!
prrrr…
誰…………
「はぁ……ちょっと席立っていい?」
「誰ですか?」
「平和の象徴さん。」
「緊急でしょうか……。」
「行ってくるね。」
私は個室から出て廊下の隅に行く。
「はい。もしもし?」
『私が電話をかけた!』
「うるさ。」
本当にうるさい。でかい声出さないで欲しい。歩く騒音被害がよ。
『傷原くん!君に少し伝えておきたいことがあって電話をかけたんだ!』
「……伝えたいこと?口説くなら通報です。」
『そんなことあるわけないだろう!!……君が以前言っていた個性を奪う個性の件だ。』
「あー……あの時の。」
『私は裏で暗躍していた『先生』。奴を事件の同一人物だと認識しています。個性を与えることの出来る人間。個性を与える個性……とでも言いましょうか。……あなたの個性に一部酷似してるんです。オールマイト。』
『私は……頭を破壊したんだ!そいつの!脳をだぞ!?……殺せてないだなんて……有り得るものか!!!』
「……それで。前回は濁されましたけどなにか気持ちの整理でもついたんですか?」
『……あぁ。君にも話しておこうと思ってね。……オールフォーワンの事を。』
「オールフォーワン?……ワンフォーオールの対ですか。安直な……。」
『君が生きていると予想したオールフォーワンだが……もし生きていたのなら。……今後の動きをより慎重にしなくてはならない。……君の言葉を借りるなら……最悪を想定して動く。だ。』
「……そうですね。それで……生きてるとしてどうするんですか?あなたが言っていた通りなら顔面ぶっ壊しても生きてるようなやつですけど。」
『……今度は骨も残らず粉微塵にするだけさ。』
「……出来るんですか?」
『してみせるよ。…わたしはオールマイトだからね。』
「ハァ……あなたのそういうところ……」
本当に虫唾が走る。
『大丈夫かい?何か言ったかな?』
「……ふーっ……いいえ?何も。」
『ならいいんだ。……君にはひとつ仕事を頼まれてもらいたい。』
「……いいですよ。聞きましょうか。」
『USJ事件。保須の事件といい脳無という生物が多数いる事がわかった。』
「……はぁ。」
なんか嫌な予感がする。
『だから君にはゆっくりで構わない。脳無の生産工場、可能であれば脳無の保管場所を探ってもらいたい。』
だっっっっっっる!!
「……私一人ですか?」
『一旦はね。この話は信用できるものにしか話せないんだ。』
うー……そりゃそうだ。私も誰に話せるのか把握してない。
「…………一応。承りました。……期待はしないでくださいね?」
『うむ。わかってるよ。』
「話はそれくらいですか?」
『ああ。以上だ。私がk』
「それじゃさよなら。」
ピッ
「あー……」
…………めんどくせぇ…
ほぼ何も無いところから脳無の生産工場調べろ?アホか……
うーぐぐぐ……これ調べてる途中に生きてるのであればオールフォーワンにぶっ殺されないか?私。
死ぬ訳にはいかんぞ……最悪だ。最悪な仕事押し付けてきやがった……。
……警察に連携取る?……巻き込む訳にはなぁ……。
明日からパトロール強化しますか……。
めんどくさ。