side渡我被身子
「爆豪くんの技は……ここが肝だからもう少しフィジカル面と、掌の汗腺の強化をした方がいいと思う。」
「……わかった。どうすりゃいい。」
「まずは食生活と筋肉量の増加。基礎体温と基礎代謝をあげよう。汗が武器なんだから汗出せるようにしないと。まず基礎。身体の中から変えていこう。そこからでも遅くないと思う。」
「……食事と運動か。基礎中の基礎だな。」
「嫌い?」
「やらなきゃあんたを越せねぇならやるだけだ。」
「じゃあ頑張るしかないね。」
「む〜……」
「渡我……お前嫌なら嫌って言えばいいじゃん。」
「心操くんにはフクザツな乙女心はわかんないです。」
「……あのなぁ」
「心操。渡我はこれでも充分動けているが……お前は人の事心配できる立場か?」
「……げっ。」
はぁ。
今放課後の相澤先生との特訓。目の前には流水さんと爆豪くんがノートに向かい合って話してる。
……私の流水さんが……うう……
でも……きっと流水さんならこうするから……きっと。
『オイ渡我。』
お昼時。爆豪くんに呼び止められた。
『……なんですか爆豪くん。』
『傷原先生ちょっと貸せや。』
『は?』
『上鳴!峰田!!確保ッ!!!』
『『おう!!』』
どこからともなく現れた上鳴くんと峰田くんに爆豪くんが取り押さえられる。
『オイ!?!?なんだお前ら!?』
『大人しくしろ爆豪!!お前とうとうやりやがったな!?』
『よく分かんねぇけど百合の間に挟まるのはダメなんだぞ!!』
『そうだ爆豪。我々見守り隊を無視してどちらかを狙うなど許さん!!!』
『芦戸ちゃん!見守り隊ってなんですか!?』
『狙う!?馬鹿じゃねぇのか!そんなんじゃねぇよ!!』
『ほう。理由を聞こうか!』
『私の話も聞いてくれませんか?』
『俺は…強くなりてぇ。だけどオールマイトにはまだなれねぇ。完全勝利も…圧倒的な強さもまだねぇ。だからまずは超えなきゃならねぇ段階を作るべきだと考えた。1段目が傷原先生だ。だから貸してほしい。』
『流水さんが……1段目?低く見積もられたものですね?』
一旦見守り隊の話はいいでしょう。それよりもこちらです。
『ちげぇよ。俺の技を現状いちばんよく知ってるのは傷原先生だ。だから1段目だ……教えを乞いたい。』
『…………私と流水さんの時間を邪魔しなかったらいいです。』
『……良いってことかよ?』
『……月曜日と木曜日。相澤先生に訓練をつけてもらってます。そのタイミングで、流水さんが暇なら私の近くで教えを乞うことを許します。』
『……すまねぇ。恩に着る。』
嫌ですけどね!?!?ほんっっっっとうは!!!すごく嫌!!!
「基礎代謝の増強のために毎日のランニングで体力作りは欠かさないように。食べ物も血行が良くなるもの、筋肉をつきやすくするものを多めに摂る。資本は身体。メンテナンスもしっかりね?」
「わかった。筋肉はでかいほうがいいのか?」
「大きければ大きいほど基礎代謝と筋肉量は上がるからいいんだけど……爆豪くんの身のこなしも考えると、増やしてあと5kgぐらいね。そこからは掌の出力をあげると同時に少しづつ調整しながら増やしていきましょう。」
「筋肉量だけで+5kg……わかった。ありがとうございます。」
「明確な目標は大事だからね。個性強化の話は多分林間合宿でするからそれまでゆっくり準備期間って感じでいいかも。」
「おう。それまで我慢だな。」
「むむむむむむ……」
「次。渡我。」
「え?心操くんもう終わったんですか?」
「……それ。俺に対して煽ってるか?」
ミノム心操くんも見慣れたもんですね。
「ええ。もっと頑張ってください。……相澤先生!よろしくお願いします!」
こういう時は体を動かすに限る。
「被身子ちゃーん頑張って〜!」
……もう。私って単純だなぁ……。
side傷原流水
被身子ちゃん……すごくモヤモヤしてるだろうなぁ……。
我慢したんだね。偉い偉い。
爆豪くんに「あんたを超えたいから力を貸して欲しい」なんて言われた時は何事かと思ったけど……
「……よし。これを続ければいいわけだな?」
「一旦ね。あとは貴方の身体と個性と相談ね。」
「おう。」
単純に明確な目標が欲しかっただけなのね。
……本当に賢いわね。オールマイトに憧れてるならオールマイトに教えを乞えばいいんだけど……
多分この子は自分には合わないと思ったのかしら。
正解。あの人教えるの下手くそすぎる。
緑谷くん見たら普通はそう思うけどね……。自己犠牲に戸惑いが無さすぎるわあの子。
……自己犠牲は尊いもの。
自己犠牲は自分勝手なもの。
これは両立する。私は自己犠牲はヒーローにとって必要なもの。根本だと思ってる。
それと同時に自己犠牲は周りの配慮を考えない自分勝手なものだとも思ってる。
だから私は自己犠牲は必要な精神性であり、自分勝手な自己犠牲は大嫌い。
オールマイトはこれ。だから嫌い。
緑谷くんも多分これ。だから少し苦手。
こんな子だとわかってるのに教育方針を変えないオールマイトはもっと嫌い。
だから私はステイン……血染くんの意見は賛同しかねる。
ヒーローに必要なものは自己犠牲の精神。
だけどそれだけじゃない。血染くんは極端なのよね。思考が。
結果として犯罪件数は落ちてるから活動はしっかり効果を得てるのかしら。
どこぞの政治家がニュースで犯罪件数は減っているので〜みたいな話したせいで大炎上してたわね。……事実なのにね?
死んだ人は可哀想だとは思うけど、大きな結果を早く出すにはそれ相応の犠牲が必要だから……血染くんも割り切ってると思うけどね〜……。
「……オイ。大丈夫か?」
「おっ…と…ごめんね。考え事してた。なんの話だっけ。」
「……走る距離の話だ。あんたらはどれくらい走ってんだ?」
「1時間くらい。」
「1……1時間?どれくらいのペースで……」
「結構早めだと思う。被身子ちゃんと話しながら走ってるわよ。」
「……まずは30分だな。」
「そうね。多分私達と同じことしたら体壊れちゃう。」
今日はパトロールの日。
雄英には行かず……オールマイトに頼まれた無理難題をどうにかする為だ。
……無理じゃない?
パトロール初めて4日目。何の成果も得られてない現状を私はあまり楽観視出来ずにいた。
色んな場所を広く浅くやっているが、異常は見当たらない。……うーん……これ本当になんとかなるの?
「はぁ……」
人は少し多め。そろそろお昼時かな……コンビニ行こ。
スッ……
今……なんか……すれ違った人……フード……痣……顔……
ふと立ち止まる。その人は人混みに消えていった。
「……。」
今の人……どこかで見たような……
もぐもぐ……
何処だったかなぁ?公安で見せてもらったなにかの資料だった気が……
もぐもぐもぐ…
……うーん……もう少しで出てきそうな……
……新聞だ。……なになに?敵犯罪件数例年と変わらず……ふーん。大変だねぇ。
保須事件の大火災。未だ傷跡消えず……ほーん。復興の手が回しにくのかなぁ?
敵……犯罪……?
…………大…火災……火……
「あっ!!思い出した!!!!」
荼毘!
顔写真見せてもらったことがある!
炎を使う凶悪殺人犯!!!!
なんで忘れてた!まずい!!
私は躊躇いなくパパに連絡を取る。
ワンコール。助かる。
「パパ!!今いい?緊急事態。」
『今すぐ聞こう。何があった。』
「今パトロールで神野に居るんだけど、荼毘を見かけた!どこに行ったか分からない。見失った!」
『何!?……わかった。こちらでも警察に働きかける。そっちも……』
「わかってる。絶対探す。なにかあってからじゃ……遅すぎる。」
『頼んだ。無理はしないように。』
「パパもね?」
ピッ
……こんなことならもっと犯罪者の顔写真見とくべきだった。後悔。
殺人犯。よりによって……。殺す相手がバラバラなのが本当にまずい。誰が死んでもおかしくない。
その日私は神野を飛び回ったが、見つけることは不可能で……。
何も事件も起きず、無力感を抱いてその日は帰った。